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1. 地域振興と運輸のあり方に関する調査
 開発途上国においては、農業が中心である国が多く、経済発展がある程度進んで、産業における農業の比率が低下していても、農村に住む人口が依然として多いという国が数多く残っていた。そして社会インフラの面では都市部より農村部の方が遅れていることが多く、所得の面でも農村の方が低い例が多いので、途上国の開発問題を考える際に農村開発は重要な課題であった。
 総合農村開発において、道路、電気、給水などの農村インフラの整備、健康医療、教育、公共輸送などの社会サービスの充実は生活レベルの向上に欠かせない分野である。特に、運輸交通施設は社会資本の中でも最も基本的なものの一つであり、これ無くしては健全な社会的、経済的発展は望めない。一般的に交通施設を利用して地方の最も主要な生産物である農産物や水産物をいち早く市場に提供することができなければ、自立できる持続的な生産活動は不可能である。
 
 経済発展にしたがって、このまま輸送需要が増大するとすれば、世界的にエネルギーの供給が追いつかない事態が生ずる。これに対応する具体的な手段として、貨客輸送をできる限り長距離自動車輸送を中心としないシステムにしていくことであり、鉄道の再評価、沿岸海運や河川を利用した内陸水運の活用などがある。
 持続可能な発展をめざす運輸適性技術、特に農村部でしかも経済発展があるレベルに達しない地域における望ましい技術としては、原則として自動車を使用しない技術を考えるべきである。このような目標に立てば、運輸部門における適性技術の位置づけは極めて重要である。
 開発途上国の地方振興のための運輸セクター整備に係る適性技術の開発・移転に求められる基本的性格・要件は、(1)地方産業の振興に役立つプロジェクトの実施に適合していること(2)地方住民の所得の向上に必要な雇用機会の創造に役立つこと(3)地方住民の生活、知的レベル、労働環境などに適合していること(4)規模の大きい基盤施設に必要な土木工事などと組み合わせて応用できること(5)地方住民の参加によって自主的に継続できる可能性があること(6)技術の開発・移転が、協力する側の体制との関連で無理のないものであること、等である。この調査は、平成7年度に実施されたものである。
 
 経済成長に伴う急速なモータリゼーションや人口集中によって、多くの開発途上国では、都市部において、交通渋滞、交通事故や自動車交通に起因する大気汚染等の問題が深刻化していた。そこで、運輸省及び建設省では、このような問題への対策として、世界銀行が策定中の開発途上国の都市交通開発戦略に関して、平成12年1月から共同研究等を通じて協力してきており、共同研究の報告書が完成し、都市交通開発戦略の草案ができた。
 
 世界銀行は、同草案に関し、先進各国を始め開発途上国やNGO等の意見も聞きながら、最終報告書をとりまとめ、平成12年1月には南米において国際ワークショップを開催した。この会議は、アジア各国と都市交通開発戦略に関して意見交換を行うことを目的として実施されたもので、運輸省及び建設省は、これに続いて世界銀行と共同して横浜において会議を開催することとした。
 当協会は、運輸省から依頼をうけ、関係団体への協力依頼、同ワークショップの実施前の諸準備、開催中の諸作業等事務局としての協力を行った。
 
 会議は、平成12年12月11日から13日までの間、横浜において開催された。この会議には、世界銀行、アジア開発銀行、国連アジア大平洋社会経済委員会などの国際機関の他、韓国、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、シンガポール、タイ、カンボジア、インド、スリランカ、パキスタンのアジア諸国から合計約40名が出席し、開発途上国における都市交通開発のあり方に関し活発な議論が展開された。
 会議においては、シンガポールや韓国から両国のロードプライシングについて紹介があった他、世界銀行からは、当時、都市交通に関してわが国を含め、英、独、仏等の各国との共同研究を通じて策定中の開発途上国の都市交通開発戦略の草案が示された。
 わが国からは、学識経験者、運輸省及び建設省の担当者等が参加し、わが国の都市開発及び都市交通に関する経験等を紹介しつつ、その経験をふまえて開発途上国の都市及び都市交通開発に関する提言を行った。
 
 当協会は、開発途上国からの要請に応えJICAが実施している専門家派遣事業に協力している。
 平成14年度は、観光分野の専門家を次の各国に延べ11名派遣した。(前年度からの継続を含む。)
 ジョルダン、ラオス、インドネシア、フィジー・ヴァヌアツ・トンガ、ウズベキスタン、ブルガリア、イラン、ペルー、クロアチア、シリア及びシンガポール。
 
 インドネシア国ジョグジャカルタ特別区と友好提携を締結している京都府が相手側の要請を受け実施するプロジェクトに対し京都府の要請を受け、当協会はメンバーの一員として職員を派遣した。
 京都府では、1985年にインドネシア国ジョグジャカルタ特別区と友好提携を締結しており、産業や文化、教育等の分野で交流を深めてきた。平成13年度に特別区知事より同特別区の観光振興セミナー開催の要請があり、京都府は観光専門家の派遣に同意した。
 平成14年8月3日、5日及び6日の3日間開催されたセミナーにおいては、次のテーマで講演が行われた。
・ジョグジャカルタ特別区の観光イメージの確立及び新しい資源の開発
・日本人の特性に即したジョグジャカルタ特別区への観光客の誘致
・観光振興施策の展開
 このセミナーには、同特別区の公的及び民間観光関係者等多くの参加者があり、成功裏に終了した。







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