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11. 南太平洋諸国海上遭難安全システムの整備支援事業
 当協会は、1997年度、南太平洋上の島嶼国フィジー諸島共和国におけるGMDSS(全世界的海上遭難安全システム)の整備状況を調査した。その結果、当協会の事業の一つとして南太平洋諸国の関係者を招へいしてGMDSSセミナーを開催することとなった。このセミナーは各国の海事担当者がこのセミナーに参加することで、自国及び近隣諸国のGMDSS整備状況を知るとともに、地域内への導入を図るための協力体制のあり方を検討するために開催したものである。
 GMDSSの整備及び実施に関するこのセミナーは、1999年(平成11年)10月、フィジー諸島共和国スバ市、セントラ・スバで開催された。セミナーには、南太平洋諸島12ヶ国からの代表及びオブザーバー約40名が参加した。
 
 このセミナーにおいては、日本側から、「GMDSS発展の歴史とその背景」、「GMDSS整備基準及び実施に当たっての問題点」、「GMDSS機器の技術的内容、それら機器の設置と運用」、「SOLAS条約による船員教育の必要性とGMDSS機器操作における問題点」等についての講演が行われた。またJICAフィジー事務所の主任研究員から、「太平洋地域における日本のODA」と題したJICAのアジア地域とオセアニア地域での活動状況報告と将来予測されるJICAへの援助要請の手続き等についての講演があった。セミナーの参加者はこれらの講演によってGMDSSについての認識を深めるとともに、南太平洋地域における船舶と人命の安全の向上のためにはGMDSSの導入が必要であることを理解した。また参加国代表からは、自国のGMDSS整備状況を説明し、財政難と人材不足からGMDSS導入が未整備であることが報告された。
 セミナー最終日には、セミナーでの講演及び報告をもとに、自由討議が開かれ、活発な意見交換を通じて参加者全員が太平洋諸島国地域にGMDSSを導入するためのより具体的な方策を確認し、各国が今後取るべき内容を同意文書として採択した。
 
【平成12年度】
 ESCAP(アジア太平洋経済社会委員会)は、1999年4月、アジア太平洋地域における内陸水運の発展に関し、国際会議及び展示会の開催を決議した。ESCAP事務局は、2000年6月、当協会に対して、会議と展示会に参加困難な開発途上国の政府関係者等に対する旅費の助成を要請越した。当協会は、すでに98年及び99年にそれぞれ「沿岸及び内陸航行の安全セミナー」「沿岸海運及び内陸水運における航行安全に関する国別ワークショップ」の開催を支援し専門家を派遣した。
 アジア太平洋地域の内陸水運の多くは大雨による大量の沈積と土壌の浸食を被っており運輸の潜在的能力を制約しているので、浚渫は重要である。従って、次の目的をもって国際会議及び展示会が開催された。
・内陸水運の開発と浚渫に対する政策形成経験に関する情報交換
・内陸水運と浚渫に関する投資と民活の経験に関する情報交換
・政府・公共部門・民間部門に協力拡大のための協議
・内陸水運と俊深に関する発展状況についての最新情報の交換と技術の展示
 
 この会議及び展示会は、当協会をはじめ、加盟国代表、業界代表、国際機関等から多くの参加者を得て盛大に行われた。
 
【平成13年度】
 ESCAPインフラ担当大臣会議準備専門家会合及び高級事務官会議等への出席、並びにアジア開発銀行訪問団の派遣(アジア開発銀行案件参加促進)をテーマに実施した。
 ESCAPが行う加盟国に対する技術協力の支援及び加盟国に対する二国間国際協力案件の発掘を行うため、ESCAPの会議及びセミナー等に出席した。出席した会議等は次のとおりである。
・インフラ大臣会議準備専門家会合
・インフラ大臣会議高級事務官(次官級)会議
・仏教観光サーキット復興セミナー
・WTO・GATS海運サービス自由化セミナー
 
 わが国のアジア開発銀行(ADB)に対する出資比率は、全体の15.9%を占め、米国と並んで最大の出資国となっていた。更に、日本特別基金の拠出等、追加的財政支援を行っていた。これに対し、ADBの技術援助案件のコンサルティング業務に占める日本企業の受注実績は、2000年で全体の2.6%を占めるに過ぎなかった。このような状況に鑑み会員企業の受注促進を図るため、ヒアリング及び個別の案件情報の収集を目的として、訪問・調査団を編成し、平成13年7月6日から3日間に渡りADBの関係者への訪問・調査を行った。
 ADBの運輸交通セクターにおける借款の実績は、2000年における借款の内、運輸交通セクター(通信を含む)への貸し付けは、総額の23.0%(13プロジェクト)で、社会インフラセクター23.9%(20プロジェクト)とほぼ同じ割合を占めていた。
 技術援助プロジェクトでは、2000年に最も多かったのは、マルチセクター(23.9%、5件)、次いで地域技術援助(20.4%、73件)で、運輸交通セクターは、総額の8.8%(31件)を占めるに過ぎず、全体における割合も低くなる傾向にあった。
 
【平成14年度】
 ESCPAがタイ国バンコクにおいて開催した「物流センターとしての港湾商業的開発セミナー」及びASEANがインドネシア国ジャカルタにおいて開催した「アセアン統合イニシアティブ(IAI)開発協力フォーラム」に出席するとともに、アジア開発銀行を訪問した。
・ESCAP「物流センターとしての港湾の商業的開発セミナー」においては、ESCAP運輸物流分野における活動状況、ESCAP域内における港湾事情、韓国における港湾の現状と開発計画等についての講演、バングラデッシュ、カンボジア、中国等8ヶ国による国別報告等に続いて、参加者によるグループ討議及び意見交換会が行われた。
・「アセアン統合イニシアティブ開発協力フォーラム」には、ASEAN加盟国、わが国をはじめとする先進諸国、世界銀行、アジア開発銀行等の国際機関等から約300名が出席した。分野別((1)インフラ・エネルギー(2)人材開発(3)IT(4)地域経済統合)会議では、例えば、シンガポールはIT分野で、タイは人材開発の分野でいくつかのプロジェクトについて関心表明を行った。更に、個別会議では、アセアン事務局からいくつかの情報提供が行われ、また、わが国からはわが国のODAスキームと方針についての説明が行われた。
・アジア開発銀行を訪問し、インド及びスリランカに対するアジア開発銀行の援助方針等の情報収集を行うほか、メコン部において、SKRL計画のカンボジア内の鉄道復旧計画に関する情報収集を行った。
 
 アジアにおける船員教育、訓練機関の状況、特に、改正STCW(船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)条約に関連した改善策や将来計画について把握し、船員教育分野におけるわが国からの適切な形の援助のあり方を検討するための基礎資料を作成することをこの調査の目的とした。船会社は、海難事故を回避するために、IMO(世界海事機構)で定められたSTCW条約に従った資格を保有する船員の雇用が必要であり、条約締結国の訓練機関は、これに対応するため早急な施設等の整備が求められていた。
 
 平成12年度に実施したこの調査では、スリランカ及びミャンマーを対象国とし、両国における訓練制度、訓練施設、訓練機材、教育・訓練体制、教育・訓練内容、教育・訓練の現状における問題点及び将来計画の調査を行った。
 
・スリラン力
 外国船で働いている船員数は、1999年現在約3,700人、国内船及び乗船待機の船員が約3,800人、その他乗組員約4,500人であった。
 訓練施設としては、国立の工科系総合大学の中の海洋学部、国立の職業訓練学校等5か所の訓練施設があった。
 使用されている教材は古く、最新型船への船員訓練には不満足である。また世界に通用する船員を育成するには教育機材の整備と教官の質の向上を図ることが必要であった。
 
・ミャンマー
 ミャンマーの船員数は、1998年現在国営海運公社に雇用されている船員約1,100人、外国船に雇用されている船員約5,000人及び乗船待機の船員約9,000人と推定されていた。
 ミャンマーには、船員の教育機関として国営のInstitute of Marine Technologyがあった。また運輸通信省の一組織として外航商船、内陸水路航行船等の船舶職員及び部員の教育を実施している唯一の船員教育機関があった。
 ミャンマーも手持ちの機材は古く、IMOの規定に合っていないものもあり、教官もパートタイマーが多く、また、機材の故障の手当もできないほど予算不足であった。
 
 ベトナム国ハノイ市は、260万人の人口を有し、さらに郊外に展開される工業団地と住宅地域の拡大により、通勤、通学の移動距離の増大と所得向上に伴う自家用車の増大が見込まれていたところ、バイクによる交通事故の多発及び大気汚染、騒音等が社会的問題となっていた。従って、都市計画とともに、公共交通の整備が急務となっていた。
 ベトナム政府は、わが国に対し、ハノイ及びホーチミン両都市に係る開発調査の要請を行い、JICAはすでに「ホーチミン都市交通計画調査」の実施を決め、本格調査を実施していた。当協会はハノイ市についての開発調査の早期実施を促進するため日越の関係者のコンセンサスを醸成する目的でセミナーを開催した。
 平成14年度ハノイ市において開催されたこのセミナーでは、わが国の学識経験者による「都市公共交通システムの整備方法」と題する基調講演に続いて、「都市交通の現状と問題」に関し、以下の報告発表が行われた。
・ハノイ都市交通の現状及び2002年ハノイ市のバス輸送
・ホーチミン市の都市交通問題
・交通問題と優先的解決策
・2020年に向けたハノイ市における都市と交通開発計画
・公共交通開発へのアプローチ
 また、「将来の都市公共交通開発の方向」についてのパネルディスカッションも行われた。
 最後に、発表者及び参加者との間で活発な討論が行われた。







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