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5. 運輸関係国際協力の情報センターの整備
 世界経済のボーダレス化が進み、人、物の流れが活発化する中で、経済、社会の発展の基盤をなす運輸分野への開発途上国からのわが国に対する国際協力の要請は益々増大してきていた。これらの要請に的確に応えるためには、まず関連する資料、情報等を整備しておくことが重要になってきた。
 まず、運輸関係情報センターを確立するうえで、その基礎となる必要な関係機材等をレンタルし、運輸分野の国際協力の効率化に資するため、開発途上国における運輸分野を中心とした協力実績等の情報の整理を行い、分野別、地域別、年度別等に整理し、簡易なパソコンシステムにより検索できるようにした。また、報告書、刊行物等国際協力関係文献の収集・整理を行い、これらについての利用希望者が必要に応じ容易にアクセスできる体制等、運輸分野に関する情報の整備を行った。更に、東アジアの物流情報を画像処理し、利用しやすいようにした。
 
 また、わが国がこれまでに実施した運輸分野の経済協力実績等を体系的に整理するとともに、システム上で各種の検索及び一覧表示ができるようにした。更に、簡便なファックス送、受信システムをも構築した。
 具体的に構築したデータベースは、(1)無償資金協力(2)有償資金協力(3)開発調査(4)プロジェクト方式技術協力(5)専門家派遣(6)研修員受入れ(7)運輸省関係調査(8)その他の調査及び(9)図書情報である。データベースシステムは、データ量、入力時の使い勝手を考慮し、カード形式のデータベースプログラムを市販の汎用ソフトウェアをベースに作成し、LAN(Local Area Network)環境にてデータ入力、参照、更新を行った。例えば、開発調査においては、年度、国名、地域、区域、件名、分野、金額、事前年度、内容、登録番号、メモ、調査開始年度及び終了年度が入力されている。
 この事業は、これまでわが国が実施してきた開発途上国に対する運輸関係国際協力実績を総括的に取りまとめるとともに、書籍、報告書等を蓄積し、運輸関係の国際協力情報を整備したものである。
 なお、この事業は、平成6年度(笹川平和財団助成事業)に引き続いて平成7年度及び8年度に運輸協力研究センター事業として実施されたものである。
 
 アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は、国際海事機関(IMO)の協力を得て、地域内における沿岸海運及び内陸水運の航行安全を確保するため、1998年11月にバンコクで政策担当者レベルのセミナーを開催した。当協会はその費用の一部を支援した。1999年11月にはマニラで、2000年3月にはジャカルタで、また2000年4月にはダッカでそれぞれ国別ワークショップを開催した。当協会は、ESCAPの要請を受け当協会会員専門家を派遣するとともに開催費用の一部を支援した。
 
【1998年(平成10年)】
 ESCAPは、バンコクにおいて、「沿岸及び内陸の航行安全に関する政策レベル地域セミナー」を開催した。このセミナーには当協会理事長をはじめ関係会員も参加した。理事長は、挨拶に続いてJTCAの組織及び事業を紹介したうえで、このセミナー支援は日本財団の支援によるものである旨説明した。
 セミナーにおいては、ESCAPの組織と活動についての紹介及びESCAPが行った調査報告、参加13ヶ国による沿岸海運、問題点、将来計画等についてそれぞれ報告が行われた。
 
【1999年(平成11年)】
 マニラにおいてワークショップが開催された。このワークショップにも当協会理事長が出席し、また費用の一部を支援した。理事長は、参加者に歓迎の言葉を述べたうえ、このワークショップもJTCA活動の一環で、あと2回予定されているワークショップの開催にも日本財団の資金援助を受け、支援する旨表明した。
 プレゼンテーションにおいては、フィリピンにおける航行安全と題して、フィリピンにおける貨物・乗客及び船舶・海運の現状について、また沿岸警備の機能、安全対策、将来計画等についての紹介があった。わが国から出席した会員専門家からは、わが国における主要な客船事故と事故減少のためにわが国がとった事故防止措置等について説明があり、その結果、客船事故が過去50年間で大幅に減少した旨の報告があった。その他、出席各国代表からそれぞれの国における航行安全対策等について報告が行われた。2000年3月にはジャカルタで、また4月にはダッカでそれぞれワークショップが開催されたが、いづれも理事長が出席した。
 
【平成9年度】
 JTCAホームページを開設した。
 
【平成10年度】
 昭和48年度から平成9年度までの間に実施した「海外調査の実績一覧」及び平成6年度から9年度までの「海外調査の概要」を作成した。
 
【平成11年度】
・平成10年度海外調査一覧及び概要の追補を行った。
・平成10年及び11年度都市公共交通コロキウム国別報告書を翻訳した。
・LAN整備一協会事務局及び運輸協力研究センター間で情報、データを共有、活用できる体制を整備した。
・アジア太平洋地域における民間空港訓練センター整備状況調査
 各国の民間航空における航空機の安全運航とそれを確保する航空従事者の養成は国際的責務であった。しかし、その訓練施設・機器・訓練内容は、その国の経済力、航空輸送の活動レベルによって様々であった。そこで当協会は平成11年度、「アジア大平洋地域の民間航空訓練センター整備状況調査」を行うこととし、バングラデシュ、タイ及びマレーシアの3ヶ国の航空管制業務をはじめとする人材育成のための民間航空訓練センターの状況を調査し、以後の国際援助活動のためのデータ集積の一助とした。
 調査においては、アジア大平洋地域の民間航空訓練センターの状況を把握し、航空分野におけるわが国の援助のあり方を検討するため、訓練制度・内容、訓練施設・機材、運営体制、人材育成計画等についての状況調査を行った。
 
【平成12年度】
・JTCAホームページを更新した。
・平成12年度JICA都市公共交通コロキウム国別報告書の翻訳及び編集を行った。
・情報収集事業等海外調査、要人招へい等の実績等の運輸分野国際協力に関する基礎情報をデータベース化した。
・アジア大平洋地域における民間航空訓練センター整備状況調査
 平成11年度に継続して実施したもので、管制処理能力及び管制システムの整備に問題があるとみられるベトナム、ラオス、カンボジア及びミャンマーの4ヶ国について調査を行った。
 この調査は、運輸アタッシェ及びJICA専門家の協力を得て、事前に質問書を提出し、それに沿って実施したので効率良く調査を行うことができた。
 民間航空訓練センターを各国に設立することはコストがかかり過ぎるし、各国の民間航空の状況からみて訓練終了者全員を雇用するほどの需要は期待できない問題があった。しかし、地域の航空保安業務の維持と航行安全のためには、必要最小限の人材育成を急ぐべきであった。そこで、当時の施設、規模を活用する形で地域の中の一国に重点的に援助し、他の国からも研修できるようにするのも一策と考えられた。
・開発途上国における都市内バス輸送調査
 平成10年度及び11年度に実施した開発途上国における都市内バス輸送調査で得られた知見をもとに、東南アジアにおける都市を例に取り、都市内バス事業の現状を調査し、途上国の都市公共交通に関連するJICA開発調査、国際協力銀行の借款事業等の案件発掘・形成に利用できる基礎資料の作成を目的とした。
 この調査では、ビエンチャン(ラオス)、ジョホールバル(マレーシア)及びメトロマニラ(フィリピン)の各都市を調査対象都市に設定した。この調査では特に、(1)対象都市のバス交通事業に関する問題点の抽出−何が、どのように、なぜ問題になっているか−を調査する。(2)世界銀行などが実施した管理組織強化・事業規制導入などの施策のニーズの検討−インフラ整備・車輌支援等のハード的な支援分野だけではなく、制度、組織面などのソフト的な支援分野でのニーズの検討−を行うことを主な目的とした。
 バス事業支援のために必要な調査項目を明示するため、支援分野別に、(1)車輌援助、(2)バス専用インフラの整備、(3)バス運航管理に関する技術支援、(4)都市内環境対策に関する技術支援、(5)バス事業規制に関するコンサルティング、(6)行政の組織強化に関するコンサルティング、(7)交通取締に関するコンサルティング等の項目に整理し、調査を行った。
 
【平成13年度】
・開発途上国における都市内バス輸送調査
 平成13年度に実施したこの調査は、平成10年度、11年度及び12年度に実施した途上国における都市内バス輸送事業支援調査に基づく東南アジアにおける都市内バス事業の知見を背景として、都市バスを中心とした都市公共交通に関連する広範な情報を収集し、JICA社会開発調査・国際協力銀行借款事業等の案件発掘・形成に利用できる基礎資料を作成するものであった。
 これまで、バス輸送分野におけるわが国の援助形態は、インフラ整備のための資金援助及び技術支援が一般的であった。即ち、バス運営に対するバス車輌の提供及びそれに附随する整備工場/車輌等の建設・整備が中心であった。しかし、途上国におけるバス運営主体は一般にその経営形態が効率的でなく、事業が採算にあっていない状況にあり、これまでのようなハード中心の支援事業では十分な効果が期待できなかった。今後は、バス路線の再編やバス経営改善等のソフト面における支援が重要になってくる。この調査は、チッタゴン(バングラデシュ)及びデリー(インド)を対象とした。
 
・日本の都市公共交通整備の紹介(ホームページ作成)
 当協会では、開発途上国に対する技術協力の一環として、JICAからの受託により「都市公共交通コロキウム」を開催しており、当該研修にも利用することを目的として、平成11年度にわが国における都市公共交通システムの特徴や技術的ポイントの紹介を中心としたプレゼンテーション用ソフトの開発を行った。このソフトは、平成12年度及び13年度の「都市公共交通コロキウム」の教材として利用され、研修員の評判も良く、毎年、プレゼンテーション資料をプリントアウトし、配布している。
 従って、このソフトを当協会のホームページを利用して公表することができれば、研修生が自国で資料を入手することが可能になり、かつ研修生のみならず、わが国の都市交通に関心のある人に対しても随時提供することが可能になった。
 また、途上国を含む海外のインターネット普及率の著しい向上に伴い、途上国の知識層に属する運輸関係機関の担当者は、当協会のミッション或いは研修に参加するに当たり、このホームページを通じて、事前に当協会についての情報やわが国及び海外の交通事情等を収集していることも多くなってきた。
 
【平成14年度】
 当協会がJICAから委託を受けて実施している「都市公共交通コロキウム」の参加研修員の報告をもとに、途上国の都市交通の現状と発展計画に関する基礎情報をとりまとめて関係者に提供し、国際協力の推進に活用した。14年度はマニラ、ジャカルタ、コロンボ、アンカラ、カサブランカ、サンパウロ及びレシフェの8都市について資料を作成した。







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