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6. エコ・トランスポート協力支援事業
 開発途上国の大都市では、自動車に起因する交通渋滞や大気汚染等の環境問題が社会問題になっていた。この原因としては、急激な自動車交通量の増大にその対策が追いつかないことが大きな理由であった。その解決策として、公共輸送機関等の利用促進を図るなど、それぞれの都市の特性や規模に則したバランスのとれた交通体系を構築していくことが必要であった。
 
【平成11年度】
 バングラデシュ国ダッカ市及びタイ国コンケン市を対象として、各都市の固有交通手段(パラトランジット等)やバス等の公共輸送機関による都市内輸送の状況、社会環境、制度或いは都市における対策の状況等を調査し、パラトランジットとバスの役割分担、利用者のバス等の公共交通への転換促進策等の公共交通システムの体系化の検討など、これからの途上国の都市の特質及び規模に合った自動車交通輸送体系の確立を支援するための方策を検討した。
 
【平成12年度】
 昨年度にバングラデシュ国ダッカ市を対象に実施した都市交通と大気汚染の実態及び対応策に関する調査に基づいてセミナーを実施し、これにより、バングラデシュの関係機関、国際援助機関に調査結果を広く知らせ、その後のダッカ市の都市交通と環境の改善の推進を図った。
 また、過去に実施された社会開発調査報告書及び関係機関へのヒアリング等を通じて、開発途上国を中心とした各都市における都市交通と都市交通環境基礎資料の収集を行った。
 
【平成13年度】
 環境の維持改善政策を重視しているコスタリカ国サンホセ市を対象として、交通渋滞の実態調査や大気汚染観測を実施し、エコ・トランスポートの交通量対策・交通流対策・発生源対策という考え方に基づいて調査結果を整理し、交通・環境改善策の提言を行った。
 
【平成14年度】
 国土交通省は開発途上国におけるクリーン開発メカニズム(CDM)活用推進のための支援事業を今後進めていく方針であり、そのなかで、運輸分野のCDMプログラムについての知見をより一層高めていくことが重要になってきていた。
 14年度は主に日本国内でCDMに関する情報収集を行い、それらを分析検討して事業の目的に向けた取りまとめを行った。事業内容の主たる項目は次のとおりである。
・関連機関等国際機関や関係省庁等のCDM及びCDMプロジェクトヘの取り組み状況や関連資料の収集。
・収集した資料や調査をふまえ、運輸分野のCDMプロジェクトの現状や問題点の整理。
・国内運輸関係製造事業者、運輸事業者等のCDMプロジェクト事業が想定される事業者等を対象としての、運輸部門のCDMプロジェクトの具体的可能性や、課題についてのヒヤリング調査。
・運輸分野のCDMプロジェクトのあり方について、類型化しての検討。
 これらを分析・集約して、運輸分野のCDMプロジェクトの推進に必要な条件、方策について検討し取りまとめた。
 
 開発途上国においては、モータリゼーションの目覚ましい進展と都市への人口集中が相俟って、交通公害が深刻な問題となっていた。交通公害はわが国の経験を上げるまでもなく、多くの開発途上国において健全な経済社会の発展を阻害する重大な社会問題であり、早急に改善することが求められていた。
 この事業は、都市交通公害に苦しむ都市を抱え、その改善に取り組む意欲を有していた開発途上国を対象として、わが国の経験、技術等をセミナー、視察等を通じて支援を行おうとするものであった。
 
【平成6年度】
 インドネシアの都市交通公害対策に取り組んでいる関係者をわが国に招へいし、わが国の都市交通公害対策の実情をセミナー及び視察により紹介し、インドネシアにおける都市交通公害対策に資することを目的とした。
 そのため、インドネシアから都市交通公害担当者6名をわが国に招へいした。被招へい者は、東京において、「都市交通公害の現状分析と評価」及び「都市交通公害の対応策と効果」と題するセミナーに出席し、わが国の関係者と活発な意見・情報交換を行った。
 また、被招へい者は、わが国の都市交通公害対策の実例、都市交通網整備の実例等を視察するため、北九州市を訪問し、関係者から都市交通公害対策について説明を受けた後、都市モノレール小倉線への試乗や工場見学、交通公害監視装置などの視察を行った。
 運輸省は、「開発途上国交通公害対策協力計画」(エコ・トランスポート協力計画)を策定し、交通公害に苦しむ開発途上国の都市の総合的・計画的な交通公害対策の実施を支援するため、相手方からの要請に応じ、わが国の政府開発援助の枠組みを活用しつつ、地方自治体、民間事業者等の協力も得て、開発途上国の交通公害の改善のために総合的な支援を行おうとしていた。
 
【平成7年度】
 インドネシアから都市交通公害対策担当者6名をわが国に招へいし、前年度同様、セミナーの開催、わが国の交通公害対策の現状視察、関係者との意見・情報交換を行った。
 
 開発途上国の運輸基盤整備に係る国際協力は、わが国の国際協力において重要な位置を占めていた。なかでも広大な国土を有する国、山岳地帯を多く抱える国、島嶼国等においては、航空輸送が国内の重要な輸送手段の一つとなっており、また、以後の経済発展に伴う輸送需要の確保に向けた新たな空港施設の整備、航空保安施設の整備・近代化等が緊急の課題となっていた。
 このような観点から、この調査は、開発途上国の航空分野に係るプロジェクトの発掘・形成、技術協力・資金協力並びに施設の維持・管理・運営等、国際協力を推進する各段階で、わが国が、同分野の国際協力を推進するうえで必須とされる効率的かつ効果的な援助のあり方等について、有識者による国内検討、現地調査等を通じ、広く航空部門の国際協力関係者の指針となるべき「航空分野国際協力マニュアル」を作成することを目的とした。
 
【平成5年度】
 プロジェクトの発掘・形成をテーマに国際協力推進上の課題を抽出し、国際協力業務を円滑に実施するためのガイドラインを作成した。このため、過去10年間に運輸省から開発途上国に派遣された大使館アタッシェ及びJICA派遣専門家を対象にアンケートとヒヤリング調査を行うとともに、当協会から職員をフィリピンに派遣し、ケーススタディを実施した。
 
【平成6年度】
 施設の維持・管理・運営及び人材育成(専門家派遣・研修員受入れ)をテーマに実施することとし、プロジェクトの実施段階における開発調査、有償・無償資金協力及びプロジェクト技術協力の実施、並びに専門家派遣及びセミナー、研修の実施に関わる既存の資料/文献を収集し、基本的課題への対応策の整理に資することとした。6年度も前年度の調査方法に準じて、資料収集、アンケート調査を行うほか、中国を対象にケーススタディを行い、中国に職員を派遣して関係機関を訪問し、関連資料、情報等の収集を行った。
 
【平成7年度】
 最終年度の平成7年度は、プロジェクトのフォローアップ(施設の維持・管理・運営)及び人材養成を対象としたマニュアルを作成した。更に平成5年度及び6年度の調査結果を総合して「航空分野国際協力マニュアル」を作成した。また同年度は、ネパール及びタイを対象とするケーススタディの実施、関係資料の収集等も行った。
 
 物流システムの整備は、開発途上国の経済発展、生活水準の向上に不可欠な分野であるとともに、貿易立国のわが国にとっても重要なテーマであるものの、途上国は一般に物流概念が稀薄であった。適切な物流システムを構築していくためには、鉄道、港湾等の輸送インフラ整備、ストックヤードや流通ターミナルの整備、更には貨物追跡システム等の情報ネットワークの構築、人材育成、関連法制度の整備等のハード・ソフト両面の総合的な整備が必要であった。
 この調査は、アジアの開発途上国において、物流の実態、問題点の把握、対策の検討、わが国の国際協力の可能性の検討、総合的で効率的な物流体系の整備を行うことを目的とした。
 
【平成7年度】
 アジアの開発途上国における物流の実態、問題点等を把握するため、国内外の物流及び関連する情報を収集し、開発途上国の総合的な物流の概念を整理し、物流の問題点を検討した。平成7年度は中国及びベトナムについて調査を実施した。
 
【平成8年度】
 中国の長江流域の物流の実態を把握し、長江内航水運整備を含めた貨物輸送効率化について検討した。またベトナム国ハノイ市において、物流近代化に関するセミナーを開催した。
 
【平成9年度】
 8年度までに実施した長江流域全体の物流需要予測等の調査をふまえて、長江中・上流域水運コンテナー輸送について将来の需要予測を行い、同域の水運コンテナー輸送整備に関わる協力方針を提案した。(平成10年度及び11年度実施分については、「10.開発途上国総合物流整備調査」参照。)
 
【平成12年度】
 前年度の調査結果に基づいて講演会を開催することによって、物流に関するベトナム政府をはじめとする関連機関の物流に関する理解を深めさせ、もってわが国の国際協力支援を深めて行くことを目的に「総合物流体系整備協力セミナー」を開催した。
 
【平成13年度】
 カザフスタン及びウズベキスタンを対象に、両国における物流の状況と問題点の把握を目的に現地調査を行い、近代的な物流システムを構築していくための改善策・整備施策を探った。
 
【平成14年度】
 ASEAN加盟国(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、シンガポール)のうちフィリピンを除く4ヶ国を主な対象に調査を行った。調査は、現地調査において現地進出日本企業を主な対象として詳細な聞き取り調査を行った。これらの調査結果を、各国の国内物流、3国間や他の地域との国際物流や通関システム等を対象として、物流の問題点として整理し、改善のための調査方針を検討した。







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