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国庫受託事業
1. 運輸関係プロジェクトに係る国際協力の推進方策に関する調査
 この調査は、平成元年度及び4年度に実施された。
 
【平成元年度】
 フィリピン及びタイの2ヶ国を対象に、航空分野における国際協力のあり方について検討した。
 当時、航空の発展にはめざましいものがあり、特に、国際社会の発展、国際的な人的交流の増大等により、国際旅客数・貨物量ともに増大してきていた。このような状況に鑑み、空港・航空保安施設の整備、航空保安要員の養成等は安全確保の観点から極めて重要であった。このような状況をふまえて、わが国が過去に実施した航空関連案件について、その状況及び問題点を把握し、当該案件の当該国の社会・経済に及ぼした効果、技術移転の効果等を調査・分析し、もって以後の望ましい国際協力のあり方を検討することを目的とした。
 
【平成4年度】
 スリランカ及びネパールの2ヶ国を対象に、都市交通分野における国際協力案件について調査した。多くの開発途上国においては、経済・社会の発展に伴い増大する交通需要に対応するため、安全性、環境問題、定時性の確保を目指した公共交通機関の輸送力増強・運営、整備技術の向上が重要な課題となっていた。このような状況をふまえ、わが国が実施した都市交通分野に係る既往の案件の状況及び問題点を把握・分析し、もって、以後の都市交通分野における望ましい国際協力のあり方を検討することを目的とした。
 まず調査に当たっては、調査対象国における調査対象分野の状況、これまでに実施した対象分野における協力の実績、他の援助機関による当該国に対する各分野の国際協力実績等についての情報を収集した。
 このようにして収集した情報をもとに、調査対象国のそれぞれの対象分野をめぐる問題点、調査対象案件の効果及び問題点並びに調査対象国における各分野に係る開発調査、専門家派遣、研修員受入れ等技術協力の効果と問題点について現状分析し、調査対象国の調査対象分野における以後の国際協力のあり方について検討を行った。
 
 世界経済のボーダレス化が進み、人の流れ、物の流れが活発化する中で、経済、社会の発展の基盤をなす運輸分野の国際協力に対するニーズはますます増大してきており、わが国としてもこのニーズに的確に対応していく必要があったが、そのためには効率的な援助の実施が不可欠であった。このために開発途上国のニーズや政治・経済・社会制度、技術水準等に対する理解を深めることが重要であり、開発途上国に対する運輸専門家等からなる調査団の派遣等によりこれらの情報を収集する一方、運輸分野のわが国援助のあり方について調査研究を行うことが緊要であった。これらの調査研究の基礎データとして開発途上国における運輸分野に関わる最新の情報を整理し、過去に収集したデータの蓄積をしておくことは運輸分野の効率的な国際協力の促進のためにも非常に重要なことであった。
 
 この調査は、かかる海外運輸情報の整備のために運輸分野国際協力情報システムの確立にあたっての必要事項を検討し、データベースの機能の確定、データベースプログラムの作成を行い、もって効率的な援助の実施による途上国からの増大する援助ニーズヘの実現に資することを目的としたものである。
 この調査は、平成3年度から6年度まで継続して行われた。
 
2-1 運輸分野専門家人材データベース構築に必要となる次の事項を検討した。
・専門家派遣状況及びその問題点の把握
・人材登録基準
・人材情報システム(ソフトウェア)作成
・検索システム
・システムの維持・管理方法
・入力情報、その他の事項
 
2-2 運輸分野国際協力情報センターの確立に当たって次の事項を検討した。
・運輸経済協力状況及び効率化に当たっての問題点の把握
・収集・蓄積する情報の種類及び内容
・情報収集及び蓄積方法
・情報の利用方法及び利用・アクセスの制限
・情報の蓄積・維持・管理方法並びにシステムの仕様、その他の事項
 以上のほか、各関係機関が体系的に所有していたデータから、運輸関係情報として保存すべきデータかどうかについても検討した。もって、データベースプログラムを作成し、プログラムのフォーマットに従って入力し、データベースシステムを構築した。
 
 環境問題が先進国、開発途上国を問わず国際的な重要課題となっていた中で、開発途上国に対する援助プログラムの企画、実施に当たって十分な環境配慮を行うことが不可欠となってきており、各国際援助機関等において環境配慮方策についての検討が開始されていた。わが国においても、平成3年の運輸政策審議会答申の中で、主要な運輸基盤整備に係る援助プロジェクトについて、具体的な調査手法、予測手法、評価手法等を含む環境配慮マニュアルを作成し、援助プロジェクトの計画、実施に当たって活用すべきである旨指摘がなされていた。
 このため、運輸省においては、平成4年度は鉄道、5年度は空港について、プロジェクトの環境影響評価手法等のマニュアルを作成してきたが、平成6年度は、港湾及び都市交通の各分野に係る環境マニュアルを作成した。
 港湾分野については、過去に実施された開発調査等における港湾マニュアルの活用度を調査したうえで、従来のマニュアルに追加、修正すべき環境配慮項目、内容等を検討した。その結果をふまえて、港湾分野における環境配慮の充実を図るとともに、マニュアルの具体的運用がより容易に行えるよう新しい港湾環境配慮マニュアルを作成した。調査は国内作業と海外作業とし、スリランカとインドネシアでの現地調査を行い、港湾プロジェクトにおける環境配慮の事例及び課題をとりまとめた。
 都市交通分野については、国際協力事業団(JICA)の環境予備調査のガイドラインに基づいて行われたスクリーニング、スコーピングされた、初期環境調査及び環境影響評価に実施マニュアルを作成することを目的とした。そのため、国内作業として国内外の環境配慮基準の収集整理、国外作業としてフィリピン、タイの現地調査を行い、都市交通プロジェクトに対する環境配慮の動向(環境配慮マニュアル等の保有状況)と環境アセスメントの実施状況及び環境問題の状況を把握した。その結果をふまえて、開発途上国特有の環境問題分析、具体的対策等の検討及び都市交通プロジェクト国際協力における環境マニュアルを作成した。
 
 開発途上国の大都市においては、モータリゼーションの目覚ましい進展と都市への人口集中が相俟って、自動車排気ガス、騒音振動等の交通公害が深刻な問題となっていた。交通公害はわが国の経験をあげるまでもなく、多くの開発途上国の健全な経済発展を阻害し、市民の健康に悪い影響を与える等重大な社会問題となっており、早急に改善することが求められていた。
 また、地球温暖化問題が、世界的に緊急に取り組まなければならい課題となっていた。この温暖化に最も関与しているといわれるCO2の排出には、運輸部門も大いに関与しており、交通公害の改善は、運輸部門から排出されるCO2を低減・抑制することにより、地球温暖化対策にも貢献することになる。
 交通公害を効果的・効率的に改善するためには、まず交通公害改善のための基本方針を策定したうえで、これを総合的、計画的に講じていく必要があった。
 この調査は、交通公害に苦しむ都市を抱え、その改善に取り組む意欲を有している開発途上国を対象に、わが国の国際協力のスキームを活用しつつ、民間事業者の協力も得て、わが国の経験、技術等に基づいて、開発途上国の交通公害の改善のため、交通公害改善総合計画の策定の検討を通じて、その策定手法の確立を行うことを目的とした。
 
【平成5年度】
 交通公害対策の基本計画スケルトンの作成、交通環境シュミレーションモデルの開発、都市交通公害状況の評価手法の検討を行った。
 
【平成6年度】
 インドネシア国ジャカルタをケーススタディとして取り上げ、交通公害の現地調査、交通環境シミュレーションモデルの開発等を行った。
 
【平成7年度】
 前年度までのジャカルタをケーススタディとして検討した結果をとりまとめ、ジャカルタの交通公害対策のための提言を行った。また、新たに中国の都市を対象に、現地調査を通じて当該都市の交通公害の実態把握、分析及び評価を行うとともに、当該都市を対象とした交通公害改善方策の策定に必要な交通環境評価モデルの確定を行った。
 
 開発途上国においては、人口の大都市への集中、モータリゼーションの急激な進展が進む一方、公共交通機関の整備の遅れから大気汚染、交通渋滞などの深刻な交通公害が発生していた。交通公害の改善を進めるためには、道路、鉄道等のハードな施設整備、交通管制、交通法規、車検制度等のソフト面の整備、さらに質の悪い燃料の追放など総合的かつ計画的な対策が必要とされていた。そのため平成5年度より、交通公害改善に実績のあるわが国の経験を生かして、途上国が都市交通公害改善のための方策を立案する際に役立つ診断治療システムの開発を行ってきた。
 また、開発途上国において、都市交通に起因する環境悪化の問題を抱える都市を対象として、交通公害の状況を把握し、その問題点、原因を分析し、交通公害対策及び環境改善に有効な方策策定の手法を検討した。
 
【平成8年度】
 インドネシア国ジャカルタ及び中国大連をケーススタディとして環境評価モデルを利用した交通公害の改善方策の検討を行い、人間の健康診断に類似させた交通公害対策の策定システムの骨組みを作成した。
 
【平成9年度】
 ジャカルタ、大連及びカイロを対象とし、前年度同様の検討を行った。特にジャカルタについては、交通公害対策の策定システムを活用した改善提言をとりまとめた。
 
【平成10年度】
 平成8年度から取組を始めた第3のケーススタディであるエジプト国カイロを対象に、状況分析、対策立案の検討を行い、交通公害診断手法の一般化を図った。また、カイロの交通公害担当者と協議し、提言を行った。
 大連については、ケーススタディとして検討しとりまとめた対策立案を前年度に一般化された診断手法に基づきとりまとめた。更に現地においてセミナーを開催し、都市の自動車交通公害改善の施策に関する提言を行った。
 一方、東京においては、同システムの利用促進を図るため、ODA経験のある都市交通公害関係者を対象にセミナーを開催し、同システムの概要を紹介するとともに交通公害診断手法及びインドネシアのジャカルタを含めた3都市に対する交通公害対策に関する意見交換を行った。







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