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笹川平和財団助成事業
1. 運輸関係研修履修者に対するフォローアップ体制の整備事業
 この事業は、運輸省の協力を得て国際協力事業団が実施した運輸関係研修コースの履修者及び当協会会員が独自に実施した開発途上国の運輸分野の技術者を対象とした研修の履修者の帰国後の動向を正確に把握し、その後、
 
・刊行物の定期的送付、開発途上国に講師を派遣して行うセミナー、講演会等により所要の情報を与えること
・履修者のうちから必要と思われる者をわが国に招へいして最近の運輸関連の状況を認識させ、当該者によるセミナー、講演会等を通じて関係者との意見交換を行うこと
・わが国の交通体系整備の実状等を英文出版物等で海外に紹介すること
・必要があれば、履修者の要望に応じて再研修を個別に実施すること
 
 等によりわが国からの技術移転についてより一層の推進を図るとともにこれら履修者からわが国の経済協力に関する要望を探ることにより、開発途上国にとって真に必要とされる開発案件の発掘を図ることを可能にし、加えて当協会が毎年実施している海外情報収集、要人招へい、プロジェクトの予備調査等の事業をより効果的なものにすることを目的とした。
 この事業は、昭和61年度から3ヶ年間実施されたが、この間、80ヶ国、2,211人の履修者にアンケート調査票を送付し、「履修した研修についての評価」、「日本の経済・技術協力の現状に対する意見」、「将来における日本の経済・技術協力活動に対する希望」等について調査を行った。また、ビルマ国及びエジプト・アラブ共和国へ調査団を派遣し、現地において日本の経済・技術協力についてのセミナーを開催したほか、アンケート回答者及び彼等の所属機関を訪問し、わが国が行った研修についての意見聴取、意見交換、研修効果に関する調査を実施した。更に、帰国研修履修者のうちから16名をわが国に招へいし各自の希望する施設の視察・意見交換等を行うほか、アンケート回答者等に対して、日本の経済・技術協力に関する情報、資料の提供を行った。
 この結果は、その後、わが国が開発途上国に対して経済・技術協力を行うに際して大いに参考となった。
 
フィージー、トンガ、西サモアからの専門家
於 笹川記念会館前
 
 南太平洋諸国からの経済協力の要請は、その地理的特性から島嶼間交通に必要な空港、港湾、海運等が中心となっており、また殆どのプロジェクトは地域内の個々の国ベースで実施しうるものではなく、地域内各国の役割分担なり地域全体の展望を踏まえて初めてなしうるものである。しかし、実際には各国別の整合性のない経済協力の要請がなされがちであった。また、空港建設、港湾建設、船舶の新規導入等のプロジェクトが優先され、南太平洋諸国のすべてのプロジェクトを推進するうえで基礎となる気象、海図作成、海難防止対策及び航空交通管制はともすれば等閑視されがちであった。更に、南太平洋諸国における島喚間交通に係る諸問題を抽出し、将来の交通体系の整備の方向性についても検討を加える必要があった。
 
【昭和62年度】
 南太平洋のフィジー、トンガ、西サモア、ソロモンの各国及びSPEC本部に調査団を派遣し、日本の経済技術協力の体制を詳細に説明するとともに、各国の気象等の各分野の現状を調査し、相手国の専門家との意見交換を行った。また、これら南太平洋諸国から各分野の専門家4名をわが国に招へいし、関係施設等を視察するほか関係者との意見交換を行った。
 
【昭和63年度】
 島嶼間交通の実状を把握し、将来の運輸関係プロジェクトを抽出し、運輸関係インフラストラクチャーの整備の方向性について検討を加えるため、海運、海難防止、船舶、港湾、航空、総合交通の各分野に係る関係正会員の中から専門家を選出し、当協会事務局を加えて調査団を編成し、フィジー、西サモア、トンガ、パプア・ニューギニア、ソロモン、バヌアツの6ヶ国に派遣した。
 調査団は、現地において関係施設を視察するとともに、関係者と意見交換等を行った。
 
 開発途上国の社会・経済の発展にとって、運輸関係基盤施設の整備は重要性が高く、わが国への協力要請も量的に拡大するとともに質的にも多様化してきた。
 特に運輸分野においては施設整備のみならず、これらの施設の維持、管理、運営等が適切になされていることがその機能を発揮し、開発途上国にとって真に役立つために極めて重要であった。
 しかし、開発途上国の現状では、これが必ずしも充分に行われていない場合が多く、施設の効率的運用に支障が生じていることが少なくなかった。これには、開発途上国側の技術水準、また、協力の方法や体制等各種の要因が考えられ、これらの問題に適切に対処し、経済協力をより効果的なものとすることが必要不可欠であった。
 
 かかる現状に鑑み、この事業は、開発途上国における運輸関係基盤施設に係る現状と問題点を把握し、途上国にとって望ましい整備の方向、効率的な運用方策等を探るための体制を推進すること、及び開発途上国の運輸関係プロジェクトの担当者をわが国に招へいし、わが国の運輸関連施設の見学、関係者との意見交換等を通じて当該国における運輸関係プロジェクトに係る施設の効率的な運用方策等を探るための体制を推進することを目的とした。
 このため、昭和63年度に、マレーシアにおける鉄道事情について調査するため鉄道の専門家等4名で構成される調査団が派遣された。調査団は、現地において関係者との意見交換・情報交換等を行い多くの情報、関係資料を入手するとともに、マレーシア国鉄の列車(運転席)に添乗し、運転・車両・土木・構造物及び信号・通信の各分野において実情調査を行った。
 また、マレーシア、フィリピン及びタイの各国から運輸関係プロジェクトの担当者をそれぞれ1名ずつわが国に招へいした。被招へい者は、運輸省の関係者、当協会及び当協会関係会員との意見・情報交換等を行うとともに、鉄道、港湾、空港等の運輸関連施設の視察を行った。
 
 この事業が実施された昭和63年頃の国際石油需給は緩和基調で推移していたが、わが国の原油の輸入先は、中長期的にみると開発途上国を中心とした石油需要の着実な増大と非OPEC産油国の生産能力の頭打ちにより、OPEC特に中東地域への依存度が上昇するものと考えられた。
 このように中東地域は、その後の石油需給の鍵を握ると考えられたが、この地域は域内諸国の人種・宗教上の問題等から紛争が起こりやすい地域であり、その後の情勢も不透明であった。
 また、中東地域、特にホルムズ海峡経由の原油供給が大幅に削減されて国際的な石油の供給不安が起こる可能性も少なくなかった。
 
 一方、わが国の一次エネルギー供給構成をみると、石油の割合は当時低下してきていたとはいえ、昭和61年で55%を占め、しかもそのほとんどを輸入に依存していた。また原油の輸入先をみると、昭和62年度で中東に68%、ホルムズ海峡に56%依存しており、石油依存度を含め欧米主要国に比べるといずれの数字もかなり高い水準にあった。このようにわが国のエネルギー供給は、中東地域に大きく依存していた。しかしながらわが国においては中東地域の油田、パイプライン、港湾施設等についての情報は殆どない状況であった。
 そこで、ペルシャ湾岸諸国からわが国への原油の輸送に係るパイプライン、石油積出港湾施設、原油輸送船舶等の諸施設の現状及び将来計画をできる限り正確に把握するとともに将来隘路となると予想される施設並びにその対策について調査を行うこととし、調査団を派遣した。
 当協会事業部長を団長とする原油輸送に関する専門家6名で構成された調査団は、中東地域のアラブ首長国連邦、サウジアラビア王国及びクウェート国を訪問し、ペルシャ湾岸諸国からわが国への原油等の輸出概況、輸出原油別輸送ルートの現状などを調査した。
 また、上記3ヶ国を含む産油国の情報を入手するため英国を訪問し、関係者との意見・情報交換、情報収集等を行った。
 
サウジアラビア(ダーラン)よりバーレーン方面を望む
 
 
油田用掘削機の先端







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