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7. 開発途上国の運輸分野国際協力に関するセミナーの開催事業
 この事業は、開発途上国の運輸分野国際協力の円滑な推進のため、帰国直後の運輸アタッシェ、JICA専門家並びに外務省、JICA、OECFの担当官から、それぞれ最新情報の提供を受け、参加コンサルタントと意見交換を行う場としてのセミナーを開催したものである。
 この事業は、平成10年度に5回開催した。
 その詳細は次のとおりであった。
 第1回目は「ペルーの運輸事情」のテーマでペルーからの帰国直後のアタッシェを招へいして開催し、第2回目は、「ミャンマーの運輸事情」及び「カンボジア王国における運輸・交通の状況」のテーマでミャンマーからの帰国直後のアタッシェ及びカンボジアからの帰国直後のアタッシェを招へいして開催した。第3回目は、「バンコクにおける交通インフラの整備」及び「JICA開発調査の動向と問題点」をテーマとしてタイからの帰国直後のアタッシェ及びJICAの専門家を招へいし、それぞれ実施した。第4回目は、「円借款の最近の動向」及び「ベトナムの運輸事情と国際協力の問題点」をテーマとしてOECFの専門家及びベトナムからの帰国直後のアタッシェを招へいしてそれぞれ実施した。
 第5回目は、「経済構造改革支援のための特別円借款」及び「平成11年度の開発調査予算の内容と動向」をテーマとして外務省の担当官を招へいしてそれぞれ実施した。
 
 この事業は、開発途上国に運輸専門家を派遣し、該国の運輸プロジェクト整備の促進のため現地においてセミナーを開催したものである。
 平成9年度と10年度の2回実施した。
 平成9年度は、ベトナム運輸省の要請に基づいて、同国の物流システム(運輸インフラ)の整備を内容とするセミナーを同国運輸開発戦略研究所と共同でハノイ及びホーチミンシティで開催した。日本及びベトナム両国の関係者多数が参加した。
 終了後、その概要に関する報告書を作成し、関係者に配布した。
 平成10年度は、タイからラオス又はカンボジアを経由してベトナムに至る物流ルートはインドシナ東西回廊としてこの地域の物流効率化のために極めて重要なことからこの東西回廊の現状と問題点についてセミナーを行った。
 この事業により、東西回廊の現状と問題点を2回に亘たる現地調査を通じて、ハード、ソフト両面の物流システムの整備方策の検討と、経済的評価を行い、タイ及びインドシナ3国(ベトナム、ラオス、カンボジア)に対して提言を行った。
 セミナーには、ラオス、タイ、カンボジアから政府の担当官を招へいし、ベトナムの担当官とともにそれぞれの国の東西回廊にかかわるインフラの整備状況、計画について紹介を行った。調査団は調査の結果を報告し、回廊の現状と問題点を指摘するとともに東西回廊整備の促進のため、幾つかの提言を行った。このセミナーにはベトナム側から交通運輸省次官をはじめとする政府関係者多数が、日本側からは運輸省の専門家、在ベトナム日本大使館代理大使、書記官、物流関係日本企業の代表、世界銀行代表等が参加し活発な意見交換を行った。
 
 この事業は、先進国であるわが国として、アジア・太平洋地域の経済活動の基礎となる海運秩序の新しい枠組の構築を図るため、域内各国の実態や基礎的情報、海運政策を調査して、わが国の国際海運振興のための方策の一助とすることを期待するものであった。
 この事業は、平成10年度と11年度に実施された。
 平成10年度は、インドネシア、マレーシア、タイ及び台湾について調査を行い、その概要は、次のとおりであった。
 
 インドネシアの海運勢力は、近場の近海海運輸送において、10%程度の輸送実績を有するに過ぎない。また、マレーシアは、IMFの指導はあるが、マレーシアドルの切り下げがあり、その防衛のための外貨融資を受け入れている。タイは、短期の外貨の流出によって国際通貨危機を引き起こし、バーツの急激な下落を招いたことなど、各国ともそれぞれ海運問題を抱えている状況であった。
 先進海運国であるわが国としては、この調査の機会を利用して、国家財政負担の軽減に関連し、公正、かつ、自由な海運競争の必要性について民間活力の利用と競争原理に基づく合理的料金・運賃さらには海上安全・環境保全施策への投資が国家財政の負担を軽減する方策であること等を紹介し、国際海運振興のための方策策定の一助となることに努めた。
 
 平成11年度は、中国及び韓国を調査対象国とした。
 中国は、アジア通貨危機のなかで自国通貨切り下げに断固抵抗して経済危機の防波堤となった。また、WTOに加盟し、自由貿易体制に組み込まれることとなり、加盟に向けて対外貿易や対中投資の増大が期待されている。今回はタリフ届け出制、外国船社の支店・代理店の設置、海運振興のための国際協力の可能性などの海運政策並びにコンテナ船および原油輸入のための港湾整備、内陸部へのアクセスなど港湾の将来計画を調査項目とした。
 韓国は、経済危機の影響を大きく受けたが、IMFの勧告に従って経済再建に取り組み、政府の強い意志のもとに行政改革と経済構造改革が行われ、国内法の整備を行った。
 今回は、自国船籍の減少、自国船員の減少の傾向をふまえて自国海運をどうするのか、港湾物流、港湾整備計画および港湾料金について調査を実施した。
 以上のとおり、中国及び韓国の両国共それぞれ固有の海運問題を抱えているのでわが国としてその現状を的確に調査した。
 
 この事業は、ミャンマー国ヤンゴン市における都市公共交通システムの整備を支援するため平成12年度にヤンゴン市に調査団を派遣し、都市計画、都市公共交通の現況について調査を行うとともに関係者から情報収集及び意見交換を行ったものである。
 近年、アジア地域は、経済成長の結果、大都市への人口集中の傾向が生じており、その結果、都市交通問題が生じていた。即ち、都市人口の増大に大量公共交通機関の整備が追いつかず、道路混雑が激化し、急増した自動車からの排気ガスにより大気汚染が深刻化していた。かかる状況下にあったヤンゴン市政府は、都市公共交通整備のための課題と解決方法について早急に検討を行うことが肝要と判断し、わが国に協力支援を要請したものである。
 
 この調査は、ヤンゴン市を対象とし、都市開発、都市交通問題等の現地調査を行い現状の都市計画、都市交通の問題を把握し、また、都市計画、都市交通に係る都市将来ビジョンについて現地関係者と意見交換を行った。
 その結果を踏まえ、関係者の都市ビジョンに対する認識を深めるため、日本から都市交通・交通政策の専門家を派遣して、セミナーを開催し、より快適な都市公共交通の整備に対する意識の向上を図った。
 なお、調査は、ヤンゴン市の都市計画については、都市計画に関する行政組織、法整備等の問題、鉄道交通については、運行頻度増加、速度向上等のサービス向上に関する改善の必要性、郊外の鉄道駅を拠点とした都市開発の実施等の問題、バス交通については、税金軽減、補助金等公的な助成措置の導入・強化、バス事業体の事業の多角化と基礎体力の向上等をテーマとして行われた。
 
 海外における空港建設プロジェクトのフィージビリティ調査等の本格的な調査について、政府関係機関職員が全般に亘って参加し、作業を行うことは事実上不可能となってきたため、民間コンサルタントを活用して、原則的に事前調査を政府関係職員で行い、本格調査はコンサルタントに委託し、事前調査に参加した政府関係職員が本格調査の作業を監視するという方法に変わった。
 この事業はこのような体制をとっても空港建設等の協力案件を円滑かつ適切に実行することが出来るよう事前調査から本格的調査までに実施の手順、方法等について標準的なマニュアルを作成することにより航空分野における国際協力の適切な推進を図れることを目的として、過去の経験に基づいて開発途上国から数多く要請されると思われる標準的な航空プロジェクトに関する標準マニュアルを作成することであった。
 
 この空港プロジェクト調査マニュアルは、昭和53年に作成し、準備編、調査編及び資料の3編から構成されている。準備編では、海外協力の一般的な概念について記述されており、調査編では、JICAの行うフィージビリティ調査の手続き、目的、内容のほか、航空関係プロジェクトの調査の進め方についても記述されている。また、資料編では、調査に当たって必要と思われる資料、データ、専門的な用語集等が収録されている。
 
 この事業は、当協会会員のコンサルタントが有する高度な専門知識と技術を開発途上国において十分に活用、発揮し、コンサルティング業務を通じて技術協力と国際交流を促進することにより、当該諸国の経済・社会の発展に寄与しうるようわが国コンサルタントの資質を向上させ、欧米諸国に劣らぬ活動が出来るよう強化を図ることを目的としたものである。
 平成元年度においては、運輸関係コンサルタントが海外において活動するに当たって当然必要とされるわが国の国際協力の在り方、動向、協力相手国の国情等についての最新の情報等を提供すると共に、実地調査・コンサルティングを行う際に必要な英文による表現方法等について技術研修を実施した。その具体的な内容は次のとおりであった。
・運輸分野における国際協力の在り方、動向について運輸省、外務省、OECFの担当者その他著名な学識経験者12名の講演会形式による研修を実施した。
・開発途上国の国情、プロジェクトを中心とした運輸関係情報について帰国運輸アタッシェ、その他当該国の事情に詳しい官民関係者5名の講演会形式による研修を実施した。
・技術研修として外国人講師2名を招へいし、コンサルタントが使用する技術文の適切な英語表現に重点を置き、ENGLISH REPORT WRITING研修を2回、合計114時間実施した。また、特に研修生が独自で英語で技術文を作成し、これを研修生全体で検討、修正し、最後に外国人講師が添削、講評するという方法を繰り返し実施して正確かつ適切な英文作成能力の向上を図った。
 
 この事業は、資金調達力の弱いコンサルタントの当協会の正会員が海外活動を行うに必要な資金を予め協会が預金している金融機関から融資を受ける場合に、協会が債務保証をし、また、借入金の利子については協会が利子補給をすることによって、会員に、低利な資金の確保を容易にするという利点を与え、会員の海外活動の振興を図るというものであった。
 即ち、一般にコンサルタントは、担保力の乏しい人間の知的財産が主体となっているため短期間に高額な資金を準備することは非常に難しい状況にあったためこの事業は会員にとっては大きな支援となった。
 
 債務保証の対象となる債務は次のものであった。
・相手国政府等に提出するプロポーザルの作成、これに関連する現地調査及び情報収集等に必要な資金
・プロポーザル提出時に必要な資金
・プロポーザル提出後、相手国政府等との折衝に必要な資金
・入札参加に要する入札保証金又はその一部に充当するために必要な資金
・入札参加に必要とする入札保証金を得るための保証を依頼する金融機関等への手数料に充当するために必要な資金
・落札後における相手国政府等との契約締結に必要な業務に要する資金
・契約締結後コンサルティング業務を遂行するに必要な資金
・以上に掲げる資金のほか、正会員の海外コンサルティング活動に特に協会が必要と認めた資金
 
 この事業は、昭和53年度から開始され、平成5年9月で終了した。
 







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