日本財団 図書館


JTCA 30年のあゆみ
 
社団法人 海外運輸協力協会
Japan Transport Cooperation Association
 
発刊のことば
 
社団法人 海外運輸協力協会会長
竹内良夫
 
 
 社団法人海外運輸協力協会は、運輸分野の海外コンサルティング活動の振興を目的として、昭和48年4月1日に社団法人海外運輸コンサルタンツ協会として設立され、平成15年4月1日、創立30周年の記念日を迎えました。
 昭和48年頃は、わが国の経済社会は上り坂にあり、昭和50年・60年代は元気がよい時代で、経済も目覚ましい発展期でした。国内の経済が進展するとともに国際的活動へ目が向けられ、コンサルタント各位も技術協力や援助という面での関心が募ってきました。しかしながら、この好況は突然のバブル崩壊で終止符が打たれ、現在に至るも経済の低調が続いています。経済の低調だけでなく各界に不祥事が頻発し、社会的にも国民の精神・気力がゆるんできたのではないかと心配です。
 国際的に見ると、米ソの冷戦対立が解消し平和への道に進歩があったと思われましたが、かえって地球上の各地に民族的・宗教的対立が起こり、小競り合いが多発して、どうにもしようのない人間の弱さを見せつけられましたが、2001年9月11日のニューヨークでの同時多発テロ後の米国の怒りは大きく、アフガン戦争となり、国連の同意を得ないままにフセイン政府との戦争となりました。イラクでの戦争は終わったというものの、テロ行為は未だ収まりません。むしろイラク国民の反感が募っているとも見られ、ゲリラ的事件が頻発しています。イタリア、トルコにも波及し、わが国の外交官にまで被害が及ぶといった不安定な状況にあります。そのような中で、日本としてもイラクヘの自衛隊の派遣を閣議決定することとなったところであります。なお、2003年12月14日、フセイン元大統領が拘束され、状況は新しい段階に入ったと言えましょう。
 21世紀に入って、改めて目覚ましい軍事科学技術の進歩がありましたが、人の精神にはあまり進歩が見られないという感想を覚えます。世界のあり方、人間同士、国同士のあり方は、武力よりも協力、和、愛による共存の姿勢が肝心だと思います。その意味ではわが国は近隣諸国と友人として助け合う姿勢が必要だと思いますが、またそうでなければわが国は生きていかれないと思います。
 さて、本協会は、当初は運輸分野の海外コンサルタントの養成と海外運輸プロジェクトの発掘のための情報収集調査、プロジェクト予備調査などを主体にした活動をして参りましたが、設立当時は、事業も予算も小規模でありましたが、所管官庁のご指導と日本財団のご支援を頂き、会員数も増加し、事業予算も増大しました。組織も拡大して平成6年度には運輸協力研究センターを創設し、当初の「海外運輸コンサルタンツ協会」を「海外運輸協力協会」と名称を改め、事業資金の大幅な拡大を図りました。更に平成14年度には、観光開発研究所を設置しました。
 技術協力のプロジェクトの発掘も、個々のプロジェクトのフィージビリティを求めるよりは、その国が何を求めているか、の総合的な開発目標の中からプライオリティの高い個々のプロジェクトの発掘が必要と思います。当協会では当初からの事業に加えて、センター事業として、開発途上国の交通環境整備計画を実施し、各国運輸事情に関するデータベースを整備することに力を入れるとともに、平成7年度より開発途上国各国それぞれの総合物流体系整備協力調査を、所管官庁からの委託調査として実施して参りました。
 創立30周年は、当協会にとりまして大きな節目であります。「運輸関係国際協力の総合的な推進」をキーワードとして、21世紀に向けて公益法人としての使命と役割の重要性を深く認識するとともに、海外運輸コンサルタント業界団体として公益的責務を果たし、従来の事業を一層強化するとともに、今後も国際協力に更なる貢献をして参りたいと思います。
 このたび創立30周年を記念として「JTCA30年の歩み」を発刊いたしました。先達の貴重な努力の跡を記録し、未来に向けて躍進的な歴史の構築を目指し、活動を展開していく上で、この30年史が少しでもお役に立てば幸甚に存じます。
 
 
国土交通省政策統括官
矢部哲
 
 
 社団法人海外運輸協力協会が創立30周年を迎えられたことを心よりお慶び申しあげます。
 貴協会は、昭和48年に、運輸分野のわが国海外コンサルタントの活動の振興を通じ、開発途上国の発展に寄与することを目的に設立され、以来、今日まで、主にODAに関する情報収集、案件形成、人材育成等に取り組まれ、運輸分野の国際協力を推進して来られました。これまでの活動に対し心から敬意を表します。
 この間、わが国のODAを巡る状況は、大きく変化しました。本年8月に改定された新ODA大綱では、厳しい経済情勢・財政状況等を背景として、わが国の限られた予算を有効に活用した国際協力の推進を求めています。また、わが国ODAは、国際社会の平和と発展への貢献を通じて、わが国の安全と繁栄を確保するために行うという理念を明確に打ち出しました。一方、これまでODAの重点地域とされてきた東アジアでは、めざましい経済発展を遂げる国が現れ、これらの国々とは、ODAに限定されない関係を強化することが必要となっています。
 このように、国際協力をとりまく状況は大きく変化しております。しかしながら、経済のグローバル化と地域的経済統合とが並行して進む今日の世界において、国際協力の重要性はいささかも減ずるものではなく、むしろいよいよ増大してくるものと考えます。
 貴協会がこれまでに蓄積された知見・ノウハウは、運輸分野において、我が国が今後、東アジア諸国等と新たな関係を築いていくうえで欠くことのできない大切な財産であります。引き続き貴協会が経験の蓄積と活動の高度化に尽力されることを期待いたします。
 国土交通省といたしましても、官民連携して充実した国際協力が行われるよう、貴協会の活動をご支援申し上げるとともに、運輸分野の国際協力の推進のため、一層の努力を傾けて参る所存であります。
 最後に、貴協会のますますのご発展を心より祈念いたしまして、私のお祝いの言葉とさせていただきます。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION