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2 バラスト水中の有害水生生物
 
序論
 
2.1 当委員会は、バラスト水中の有害水生生物問題については、1988年にIMOで最初に取り上げられ、1994年のMEPC 35以来MEPC議題における重要事項となっていることを想起した。 1990年代には、バラスト水及び沈殿物の排出による有害水生生物の侵入防止のための複数のガイドラインが策定され、1997年に採択された決議A.868(20)に含まれているガイドラインが最近のものである。 持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)は、2002年に、バラスト水中の侵略進入種を取り扱うための方策を促進すべきことで合意し、IMOに対し、バラスト水条約案の最終化を強く促している(WSSD履行計画第34(b)項)。 MEPCの勧告で、2001年11月、理事会は、条約案の作成に満足できる進捗があったという2002年内のMEPC確認を条件として、2003年の外交会議開催について、原則的に承認した。 2002年10月のMEPC 48は、進捗状況が再見直し、多くの本質的問題がまだ解決されていないという結論に達した。 それゆえ、理事会に対し、バラスト水管理に関する外交会議を2004年初期に延期し、また、IMOにとって費用の発生しない第2回中間期バラスト水作業部会を、2003年の春に開催するよう勧告した。 2002年11月の理事会は、これらの措置を承認した(C 89/D、第6.2項)。
 
2.2 当委員会は、基本となる会議文書の6ヶ月間回章を伴った2004年会議の組織化を銘記した。 このことは、MEPCにとって、今会期でバラスト水管理基準について合意し、かつ、条約案文を最終化しなければならないことを意味している。 それゆえ、今週中に逐条見直しを実施しなければならない。その後に、当委員会は、2003年11月の第22回臨時理事会に対し、予定されている2004年2月の外交会議開催を助言できることになる。
 
2.3 MEPC 47は、バラスト水交換については、一定の条件を満たす場合に適用可能かつ適用されるべきものとして、バラスト水中の有害水生生物制御手段の1つとみなすべきことで合意している(MEPC 47/20、第2.12.3項)。それゆえ、効果的バラスト水処理方法の開発、それに伴う基準の制定が重要事項として残っている。
 
バラスト水作業部会の中間期会合報告書
 
2.4 当委員会は、2003年3月3〜7日の間開催された、次の指示を受けたバラスト水作業部会の中間期会合報告書を銘記した。
 
.1 条約案文における、MEPC 48で確認された具体的事項についてのさらなる洗練
 
.2 条約案を支える複数のガイドラインについてのさらなる作成
 
.3 今会期への書面報告書の提出(MEPC 49/2/3、第1.6項)
 
2.5 当該作業部会報告書は、条約案に関する進捗の成果を示していた。(MEPC 49/2/3)。 合意できなかったものについては、今会期での審議のための選択肢が明確に述べられている。 このことは、この議題に対する45通以上の提出文書となって表れている。
 
2.6 議長は、加盟国により受諾され、発効し、また、バラスト水中の有害水生生物の制御に貢献するように、条約案がすべての関連事項を扱うべきことが必須というMEPC 47での合意(MEPC 47/20、第2.12項)を想起する一方で、当委員会に対し、当該作業部会報告書に関する一般コメントを要請した。
 
2.7 ベネズエラ代表が、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、エクアドル、ホンジュラス、ペルー、ウルグアイ及びベネズエラによる、条約案の具体的論理構成を提案している文書MEPC 49/2/1を紹介した。 この文書については、バラスト水作業部会の中間期会合の間も利用可能であったが、この報告書は、論理的構成については、コンセンサスがまだないことを示していた。 文書MEPC 49/2/1への付属には、すべての技術上及び管理上の規定は附属書に含まれるべきであるが、条約の目的、すべての定義及び基本的原則については、条約本文の各条文に含まれるべきと記載されている。 この構成で合意されたならば、目下有効なほとんどの文章について、新たな設定に応じて改作することになる。
 
2.8 多くの代表団が、作業部会に対し、中間期会合でなされた実質的進捗について敬意を表明し、当該会合がいくつかの未解決問題について解決したことを銘記した。 これら多くの代表団は、目下定型化されている条約案を押し進めることを支持していた。 それでもなお、今会期で解決する必要のあるいくつかの重要事項が残っている。
 
2.9 また、当委員会は、一般的審議の間、中間期作業部会報告書に関し、次の見解が表明されたことを銘記した。
 
.1 条約には、実用的結論を含むべきである。条約の早期の履行には、単純、効果的、実行可能かつ達成可能な基準が要求される。
 
.2 目下利用可能な技術はバラスト水交換のみであるので、条約には、当該交換を残すべきである。
 
.3 科学的精度及び土台の欠如が、現時点における具体的基準の設定を困難にしている。
 
.4 短期間航海については、現行条約文でまだ適切に取り扱われていない。
 
.5 ペルシャ湾周辺諸国は、当該海域における魚類の大量死に容易ならぬ懸念を持っており、早急な条約の完成を必要としている。
 
.6 持続可能な開発に関する世界サミットは、IMOがバラスト水条約を最終化するよう強調しており、IMOが条約を策定できない場合、他の機関が侵略種問題を取り扱うことになる。
 
.7 条約内に“特別海域”のコンセプトを編入すべきである。
 
.8 多くの解決されるべき問題が少なからずあり、これらは政策的なものであり技術的性格のものではない。 それゆえ、これらについては作業部会よりもむしろプレナリーで解決されるべきものである。 作業部会は、英語のみで実施されており、また、規模の小さい代表団もあるので、一定の事項については、プレナリーで審議するようにすべきである。
 
.9 若干数の国については、可及的速やかに条約を履行するため、既にバラスト水管理に関する国内法を準備しつつある。
 
.10 完全なる解決策は、良き解決策の敵となり得る。
 
.11 今会期における多数の選択肢の最少化は重要なものとなる。
 
.12 文書MEPC 48/21の付属2(選択肢1)に記載の規則C-1及びC-2については、審議のため再提示されるべきである。
 
2.10 当委員会は、中間期作業部会報告書(MEPC 49/2/3)については、当該報告書の中に当委員会で解決すべき事項がまだ数多く特定されていることを銘記しつつ、さらなる議論及び逐条見直しの議論のための基本文書として採用することで合意した。
 
条約案の逐条審議
 
2.11 当委員会は、条約案に関するコメントを記載したすべての今会期提出文書を銘記し、逐条見直しを実施した。
 
序論
 
2.12 アルゼンチン及びベネズエラの代表団が、序論の最初の文節にある“海洋環境”の表現について、より広範囲の意味に広げるため、“水生環境”に変更するよう提案した。
 
2.13 当委員会は、作業部会に対し、この提案をより詳細に再吟味するよう指示することで合意した。
 
2.14 当委員会は、イタリアからの提案に関し、序論の2番目文節に次の句を加えることで合意した。 “海洋及び沿岸生態系の保存及び持続可能な利用に関する1998年CBD締約国会議(COP 4)の決定IV/5、また、侵入種に関する指針を含む、生態系、生息地及び種に脅威となる異国種に関する2002年CBD締約国会議(COP 6)の決定VI/23をも”
 
第1条 定義
 
2.15 日本代表団が、“船舶”の定義(第1.9条)の中の“固定プラットホーム”の語句については、これらの構造物は一度それらの定位置に固定されたならばバラスト水管理を実施することがないので、当該語句を削除するよう提案した。
 
2.16 当委員会は、作業部会に対し、この提案及び規則F-1等他の規定への影響について再吟味するよう指示した。
 
第2.3条 より厳しい方策を要求する寄港国の権利
 
2.17 当委員会は、国際法と矛盾せずより厳しいバラスト水管理方策を要求するという寄港国の第2.3条における権利、特にこの権利がIMOの承認を必要性とするかどうかについて審議した。 本条文は目下括弧付となっている。
 
2.18 ブラジル代表団はこの条文の両文節を受けいれている(MEPC 49/2/17)。米国代表団が前段文節のみを受け入れている(MEPC 49/2/18)一方で、日本代表団は、前段文節は国連海洋法条約の第211.6条に矛盾しているとして、後段文節のみを受け入れている。 日本見解はICSに支持されている(MEPC 49/2/22)。
 
2.19 若干数の代表団が米国の立場を支持する一方で、いくつかの代表団は日本の立場を支持していた。 ICS代表団が、後段文節の“機関の承諾を求める”を“機関への通告”に置き換えるよう提起した。
 
2.20 当委員会は、第2.3条の前段文節については、さらなる見直しのため残すことで合意し、また、作業部会に対し、ICS提起に沿って後段文節の代替文章を作成するよう指示することで合意した。
 
新たな第2.7条
 
2.21 当委員会は、米国提案(MEPC 49/2/18)に関し、次の第2.7条を追加することで合意した。 第2.7条が、現在の規則案E-3.2の文章に取って代わることになる。
 “締約国は、この条約への応諾のために用いられるバラスト水管理の手法については、バラスト水管理による防止よりも大きな危害を生じないことを確保しなければならない。”
 
第3条 適用
 
2.22 第3.2(b)、(c)及び(d)条の規定については、国連からの代表が寛大すぎるとみなしている一方で、ドイツ代表団は、あまりにも一般的かつ漠然としているという見解を表明した。 日本代表団が、これらの規定がどのような船舶に適用されることになるのかが不明瞭であること、また、この文章を第2.6条と関連して審議することを提起した。
 
2.23 当委員会は、作業部会に対し、第3.2(b)、(c)及び(d)条をより詳細に見直すよう指示した。
 
第4条 船舶バラスト水及び沈殿物を通じた
有害水生生物及び病原体移動の制御
 
2.24 南アフリカ代表団が、第4条において、船上における制御については適切に取り扱われているが、沿岸諸国のための措置については、C節の規則のためのベースとして、できる限り別項として含むべきであるという見解を表明した。
 
2.25 当委員会は、作業部会に対し、この件に関する言い回しを作成するよう指示した。







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