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第4節 第4回委員会議事概要
1 開催日時及び場所
日時 平成16年3月18日(木)1400〜1630
場所 日本財団第1〜4会議室
 
2 議題
(1)第3回委員会議事概要(案)の承認
(2)COMSAR8の審議概要
イ SAR関連
ロ 通信技術関連
ハ セキュリティ関連
(3)AIS今後の課題
(4)EUの海上安全・海洋環境保護政策について
(5)平成15年度事業報告書(案)の検討
(6)その他
 
3 出席者(敬称略、括弧書きは代理)
(1)委員
今津 隼馬(委員長)、佐藤 修臣、柳川 三郎、松本 宏之、岡野 良成、
岡田 卓三、吉田 良治、小坂 智規、宮坂真人
(2)関係官庁等
石田 育男(岡 正義)、渡部 明宏(小池 貞利)、添田 慎二(伊藤 裕康)、
東原 健(辰巳 伸五)、中平 和俊(古谷 健太郎)、佐々木 稔(平出 昭夫)、
川上 良(鈴木 浩久、三宅 真二、松永 秀雄)、溝部 隆一、小原 正則、
篠崎 正夫、武田 健司、三宅 弘幸、山田 吉彦
(3)事務局
松浦 道夫、津田 眞吾、田淵 郁男、松永 敬典、安藤 真悟、山地 哲也、
若林 邦芳、堀田 陽介
 
4 配布資料
IR(03) 4-1 平成15年度第3回委員会議事概要(案)
IR(03) 4-2-1 COMSAR8の審議概要(SAR関連)
IR(03) 4-2-2 COMSAR8の審議概要(情報通信関連)
IR(03) 4-2-3 COMSAR8の審議概要(セキュリティ関連)
IR(03) 4-3 AIS:今後の課題
IR(03) 4-4 EUの海上安全・海洋環境保護政策について
IR(03) 4-5 平成15年度事業報告書(案)(※表紙・目次のみ)
 
5 議事概要(◎ 委員長、○ 委員、△ 関係官庁等、□ 事務局)
(1)第3回委員会議事概要(案)の承認
 事務局から、本(案)は第3回委員会終了後に各委員等に照会し、指摘があった箇所は修正を施したものである旨の説明があった後、特段の意見なく承認された。
 
(2)COMSAR8の審議概要
 関係官庁及び事務局から、COMSAR8におけるSAR関連、通信関連、セキュリティ関連に関する審議概要について説明があった後、次のとおりの質疑応答があった。
(SAR関連)
○議題8の(1)のホ)の中のPlace of safetyとPlace of refugeの違いは何か?
△これら2つは全く異なる概念で、Place of safetyはSAR条約に規定されたもので、Place of safetyという場所に要救助者が移ったらそこで救助作業が終了するという考え方から、食料や水等を与えられる他、迫害を受けない場所として規定される。
□補足するとplace of safetyは救助する際、人がどこに移れば最も安全かを考慮するもので人に着目した概念。対してPlace of refugeは船舶に着目したもので、例えば船が破損し油が漏れた場合、荒れた海域では作業が行えないので平穏なまたは閉鎖された海域に移す際の当該場所のことを指す。
◎カナダから第10回北大西洋RCC会議の報告があり事例紹介があったとのことであるが、具体的に扱った事例はどんなものか?
△例えばSARTが航空機から認識されなかったという事例が発表された。会議はカナダで開催されその概要が情報交換のために紹介されたもの。
○議題6の誤発射に関連し、通信に関わる人全てに三海通を持たせる話が話題になっていたが、そういう話はあったか?
△そのような話は全く無い。現在のIMOでは日本で言う一海特を持ちなさい、という規定があるだけである。
(通信技術関連)
○条約によれば、旗国に送られた警報は沿岸国へ直ちに転送されることになっているが、沿岸国においてその警報はどのように処理されるのか? 資料では、船舶側でテロか海賊か識別できないので、どちらの警報も旗国へ送ることで合意されたとなっているが、転送された沿岸国側も判断できないと思うが。
△非常に難しい問題である。個人的には外交など通じて正式ルートを通さなければテロに関しては沿岸国は動けないと思う。
○船のセキュリティプランには、可能であれば沿岸国にもコンタクトすることも規定されていることが予想されるが、警報装置とは別に直接船から沿岸国へ送信した場合はどうか?やはりテロか海賊かの判断はつかないと思うが。
△非常に政治的に難しい問題である。海賊であればどの国でも対処できるが、テロの場合だと、たとえ沿岸国が受信してもなす術がない。もし、旗国から依頼を受け話し合いが成立していれば手出しできるが、そうでなければ主権の侵害になってしまう。
○船から沿岸国に送信した場合、せめて受信したという返事はもらえるのか。船からすると、送ったはいいが返事が来ないと受け取ったか否かの判断がつかないが。
△技術的には可能だが、送信したことが海賊やテロが知った場合、人命の危険が生じる。これは回答してはいけない分野である。しかしそれでは不安が残るので、ある企業では船長だけに分かるようなランプが点灯するシステムを提案している。
○企業の中では保安システムはCSOが中心になっている。警報ボタンを押すのは時間的余裕が無い時だと思うが、通報項目の中にはCSOに転送して欲しいという話は出ているか?
△知る限りそのような話は出ていない。そういう枠組を作ろうと思えば出来ると思う。
□前回の委員会で、船側としては保安警報を使うのか海賊などの非常連絡用のどちらを使うのかという質問があったが、右は今次会合でも話題となった。IMOとしては、周囲に聞こえてよいから沿岸国にすぐに何とかして欲しいという時は非常連絡用を、知られたら困ると判断した場合には保安警報を押す、といったように船側がどう対応して欲しいかによって2つを使い分ける、との整理だと説明があった。
 旗国に送信された後の対処に関しては、受信した事を船へ送ることは無い、と理解している。
△補足だが、すぐに返答が欲しい場合は海賊ボタンではなく海難ボタンを押すべきだと思う。これであれば沿岸国は対応するだろうと認識している。
△3の中に、将来GMDSSの全面見直しの必要性が指摘されている、とあるがこれはどこの国からか? また公文書であれば文書番号を教えて欲しい。
△公文書では出ていない。そのような話題が多かったというレベルの話である。
(セキュリティ関連)
○現時点でLRITシステムに関する日本政府の対応として、国際機関等の設立が望ましいか、各国独自に行うのが望ましいか、もし方向性があれば教えて欲しい。
△独自に情報収集した限り、どちらが良いとは言えない状況。メリット、デメリットが双方に存在する。インマルサットのポーリングであれば、情報を欲しい国が陸上から命令し船から自動的に送られてくるため、国際機関は要らない。しかし、船から定期的に報告送る場合は、どこに送るかでソフトウェアが非常に複雑になるため、世界のどこかに国際的なデーターベースを作り、情報欲しい国がアクセスして検索する方式が提案されている。しかし国際機関を作るとなると、費用負担やどこに作るかで政治的圧力が懸かり5、6年は平気でかかるため、米国などはインマルのポーリングに賛成している。日本は現在中立の立場。
◎現実に船に乗る人には身近な問題である。しかし決まっているのはまだハード面だけで、オペレーションに関してはそれほど決まっていない状況。
 
(3)AIS今後の課題(案)の検討
 事務局からAISの報告書の形式について、AISの調査に関しては別冊として、これまでの調査結果を踏まえた形で、最後に本項を掲載するとの説明の後、本案について事務局から説明、以下次のとおり質疑応答があった。
 
○かつてこの委員会でもCOLREGの見直しに関して様々な検証を行ないIMOで発表し相当の評価を得たものと理解している。AISに関する事故例、ヒヤリハットやインシデントの話は相当先の話だと思うが、COLREGにならいAISについてもこの種研究を本委員会で企画していくと考えているのか。
□ご理解の通り。
○AIS搭載船の乗組員のコメントについては、実際に使ってみた船員の感想をまとめたもので、今後の参考になればと思い提供したもの。
○タンカー等の一部のバースでは、船上通信機器の発射電波による危険性が指摘されていることから、OCIMF(注:石油会社国際海事評議会)が発行している国際指針等では、着岸中の船舶の通信機器の送信出力は1W未満とすることが勧告されているが、AISの国際規格では低出力でも2Wとなっており、その整合性について、現在同指針の改定作業に伴い検討されていると聞いている。
 一方、AISには、船舶側の送信出力の高低を陸上局から強制的に切り替えることができるポーリング機能があり、これは主管庁の定める海域で行うこととなっている。強制的に高出力とされれば、着岸中の船舶もその対象となるわけだが、どういう状況で高出力とし或いは低出力とするかといった、使い分けの指針があれば教えて欲しい。例えば日本周辺海域において、この海域は低出力、この海域は高出力と考えられている場所があるのかどうか。
◎そこまでは決められてないのだろうか。そのような一部のバースにおいては現時点では船側で切り替えが必要ということだが。希望としては自動切換えが望ましい。
△東京マーチスにおいては7月1日からの運用を目指しているが、実際にどの様にAISを活用していくか現在詰めの段階である。先ほどの出力の主官庁による切り替えの話は特段検討されていない。また着岸荷役における1wと2wの指摘については持ち帰り、後ほど回答したい。
○参考までに、AISの表示に関する調査報告では、AIS搭載船の針路が実際とは異なり反方位で出ることがあるとされている。先日海事局安全基準課において計器メーカーが集まって別件を検討中、「船の針路・速力をGPSで測定した場合、船尾楼船は右舵を取ると針路が左方向に出てしまい、それが加算されるとでたらめな針路・速力が出る。」との指摘があった。メーカーはどうすると間違った情報が出るかを良く知っており、委員会において技術的な話をするなら専門家を呼ぶか、意見を聞いたほうが良い。
 また、バイナリー・メッセージの内容をどうするかについては、船側でどんな利用ができるかをもっと話し合うべき。AISは船からの情報の話として見られることが多いが、陸上からAISを通じて船宛に送信される情報という見方も忘れてはならない。
○行き会う船舶がAISを活用し相互にその動きを認識し、衝突予防に役立てようとする所期の目的から、最近は、様々な情報が入ってきて、結局AISを航路管制に使うのか、衝突予防に使うのかが混沌としてきて、基本方針がぼやけてきた気がする。AISを活用することで見張りを怠り結局衝突してしまったら本末転倒であり、AISを搭載していない小型船も当然考慮して基本方針をきっちり決めなければ、かえってAISを義務化したら危なくなったという事態も招きかねない。このような観点から、本委員会のAIS今後の課題は、問題点をよく纏めていると思う。
 
(4)EUの海上安全・海洋環境保護政策について
 山地ロンドン研究室長から、最近のEUの動きについて説明があった後、次のとおり質問があった。
△ガリレオサービスの中で「暗号化」とあるが、これはどのような機能化か?
□詳細は不明。関連情報を入手したらお伝えしたい。
○EUのセキュリティへの取組みに関し2点指摘したい。1点目は、EUの海上セキュリティ関連規則が米国のMTSと非常に類似していると感じた。EU側の基本的な考え方なりについて更に情報があれば提供願いたい。2点目としては、今回の米国の海上セキュリティへの取組みはかなり強引というイメージを持っているが、右米国の取組みに対するEUとしての見方や姿勢を知りたい。
□1つ目は詳細について承知していない。2点目に関しては2001年9月のテロによって、米国のみならず世界的に相当の影響があったため、EUとしても方針としては同じベクトルで動いていると理解している。
○「汚染原因者刑事罰適用指令案(1)対象船舶」とあり、罰則が記されているが、罰則が適用される対象者は乗組員か管理会社か、そういう話は出たか?
□具体的な項目は記憶していないが、乗組員だけでなく関係者を含む広い概念で対象を規定しているように思われる。
△2点指摘したい。1点目は「船舶通航監視及び情報システムに関するEU指令(3)スペイン計画:船主無限責任要求」に関して、LLMC条約は第三者責任を制限することで保険料を計算できるという利点があるが、保険業界は何と言っているか?
 2つは、「汚染原因者刑事罰適用指令案」に関して、海洋汚染は民事と刑事に分けられ、一般的に民事の方が損害賠償は高い。そこに刑事罰を設定しても、原因者が破綻すると民事に払えないため、刑事の罰金は放棄せざるを得ないが、そういう話はあったか?
□1点目に関してはまだ反応に接したことは無い。ただサルベージ業界としては、スペインが保証金を積めというのに対し、緊急を要するサルベージ作業においてそのような算定をするのは極めて困難である、とスペインの対応を強く批判している。
 2点目に関しても今までの欧州連合の審議記録の中では見たことがない。1、2共に新たに情報収集したら提供したい。
◎最後のスライドにIMOとEUとUSAの関係図があるが、EUはこれからますます加盟国が増え、IMOの中で強い力を持つ。採決になればほとんど決まってしまうのではないか。
□採決の場合だけでなく、条約の発効に関してもこれからサイプラスとマルタが加わりEUが同一歩調を合わせれば当然大きな影響力をもつと思う。
○IMOでは船員の疲労の問題もクローズアップされていると思う。EU指令関係の中で、例えば週の勤務時間を何時間以内にするといったような話は出ているか?
□それについてはILOも関係してくると思うが、ご紹介できる情報は持ち合わせていない。
◎様々な質問が出たが、今後新たな情報があれば提供いただきたい。
 
(5)平成15年度事業報告書(案)の検討
 事務局から、平成15年度事業報告書(案)の取りまとめ方について説明があり、特段の意見なく承認された。
 
(6)その他
 本委員会の終わりの挨拶として、日本海難防止協会津田常務から、本年度最後の委員会を無事終えることが出来たことに関し、今津委員長及び各委員をはじめご出席いただいた関係省庁の方々に対し感謝の意が表された。
 更に、来年度の本委員会においては、IMOでの各委員会の対処方針の検討及びIMOでの議論のレビューの場を提供するという目的に加え、本年度同様、海上安全の分野の中で注目すべき案件について国際的な動向を調査するとともに、調査結果については調査発表会という形で、本委員会の委員の方々のみならず広く関係者に公表することを考えているところ、今後ますますのご指導をいただきたい旨述べ、本年度の委員会を閉会した。







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