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第5節 海上セキュリティの調査研究(SSO研修)
 平成15年5月、(社)日本海難防止協会若林主任研究員は、英国ロンドンで開催されてロイズレジスター・船舶保安要員のトレーニングコースに参加し、右概要を次のとおり取り纏めた。
 
1 ロイズレジスター・船舶保安要員トレーニングコーススケジュール
(1)日程 平成15年5月27日−29日(3日間)
(2)プログラム
イ 一日目
コース概要説明
ソーラス条約改正部分とISPSコードの解説
ロ ニ日目
テロリズムに関する基礎知識
船舶保安アセスメントの実施と現場調査の方策
ハ 三日目
船舶保安計画
受講者に対する本コース達成度見極め試験
(参照:別添1プログラム 別添2プログラム概要 別添3テキスト目次
 
2 講師
(1)ロイズレジスターLRトレーニング・プロジェクト・マネージャー(Mr. Mark Benson)
 十数年の一般商船への乗船後、現在、講師として活動。CSOの講師も勤める。セキュリティの分野の経験なし。1日目の改正SOLAS条約・ISPAコードの解説を担当。
(2)セキュリティ会社IDS*からの派遣職員(Mr. Daren Dickson)
 現役26年の英国特殊任務機関での経験を持つ専門家で、間もなく退役しIDS専従社員となる予定。2・3日目のセキュリティ関連の知識等についての説明を担当。
 
3 LRのセキュリティ・ビジネスに対する取組み
(1)教材
イ 今回使用したテキストは、複数のスタッフが手分けをして8ヶ月もの期間をかけて作成したもの。その内の一人であるMr. Daren Dicksonが今回の講師を勤めた。
ロ 講師はプレゼン用パワーポイントを使って説明、各講師は同じパワーポイントを使って説明し、個別に作成等はしない由。
(2)講師
 今回セキュリティに係る研修を実施するにあたり、軍関係等での経験を有する複数の者と講師として契約を結び、彼らを派遣し世界各国で研修を実施することとしている。今回のコースでも、米海軍での経験を持つ米国人講師が補助講師として参加。彼は3週間ほど前に契約し米国から渡英、既にロンドンにおいて研修1回を実施済み。
(3)LRのセキュリティ関連のトレーニング・コースの種類と開催予定(6月末まで)
イ 会社保安要員(CSO):4日間コース
 ロンドン×6、シンガポール×5、ピレウス(ギリシャ)×3、グラスゴー、ロッテルダム×3、マドリッド、ドバイ、香港×2、イスタンブール、コペンハーゲン×2
ロ 船舶保安要員(SSO):3日コース
 ピレウス×2、ロッテルダム、ロンドン×2、コペンハーゲン
ハ ISPSコード−上級管理者研修:半日コース
 米国、ロンドンを予定
ニ ISPSコード−乗組員慣熟:1日コース
 ロッテルダム、ピレウス、シンガポール、香港、マイアミ、南米(詳細未定)
 
4 今次ロンドンでの受講者(計10名:9人+日海防)
(1)現役船乗り3名(船長(英国人×2)、一等航海士(豪州))
(2)LR職員×4名
(3)セキュリティ会社職員×2名(イタリア退役軍人、デンマーク軍関係者)
 
5 所見
(1)セキュリティの捉え方
 本コースでは、SSOとして不可欠なSOLAS上の規定とテロに関する基礎的な知識を教えることを主眼に置いていたが、セキュリティに関する「PSC」を、テロや海賊による船舶への「脅威」と同等に扱い、更に演習においては、PSC官が荷役を止める指示を出したり出港差し止めを宣言するのに対し、SSOとしてはどう対応するかについて知恵を与えるなど、船舶にとってはまことに実践的かつありがたい内容となっていた。
(2)研修用テキスト
 本コースのテキストは、内容的にはカバレッジも広く、読み応えのある良質の情報がつまっている。SSOやCSOにとっては「航路上や入港する港に控える今ある現実のリスク」が知りたいことあり、その点について、Mr. Daren Dicksonは、未だ計画の段階と断りながら、ロイズレジスターがそれらインテリジェンスに関連した情報を衛星或いはAISを活用して提供するサービスを検討中と述べた。右は、まさにセキュリティがビジネスの対象として確実にその市場を広げつつあることを実感した。
(4)現時点で曖昧なポイント
 本コース中でも、講師から次の点が未だ明らかでない旨の指摘があった。
イ アセスメント、プランの策定は結局誰がやるのか?CSOかSSOか。
ロ 旗国の主管庁からセキュリティレベルの変更が本当に来るのか?また、特にFOC船にとって、旗国はセキュリティに関する情報を提供できるのか?
ハ 定期航路を持たない船は、入港する港も度々違うし通過する海域も航路も違うが、米USCGがNVIC10-02で示した「脅威に基づくセキュリティ・アセスメント法」はそれらの船で適応できるのか?またそれに伴う煩雑な作業を誰が実施するのか?リスク見極めに有効な情報は誰が提供してくれるのか?
ニ 訓練・演習などは具体的にどのような内容を実施するのか。
(5)テスト
 コース最終日のテストは、厳正な中で実施され、内容もSSOとして抑えておくべきポイントを問う常識的な問題とSSOとしての判断を問う問題で構成され、バランスがとれた実践的なテストであった。
 
別添1
Lloy's Register
Ship Security Officer Course Programme
  Day 1 Day 2 Day 3
8.45am - 10.30am Introduction to course
Complyung with the ISPS Code

LR
Terrorism: The Threat
Maritime Security Terrorist Profile
Piracy
Ship Security Equipment
Detection and Prevention of Weapons and Dangerous Substances and Devices
Crowd Control
Handling Classified Material

IDS + LR
Ship Security Plan:
SSP Practical

LR + IDS
10.45am - 12.30pm Complying with the ISPS Code
Exercise 1

LR
12.30pm - 1.15pm LUNCH LUNCH LUNCH
1.15pm - 6.00pm Complying with the ISPS Code
Exercise 2
Exercise 3

LR
The Practical Pack
Ship Security Assessment
On Scene Security Survey

IDS + LR
Confirmation period prior to Assessment
Assessment (2 hours and 30 minutes)
Course de-brief (1 hour)

LR + IDS
Homework      
Note: Morning and afternoon breaks will be taken at appropriate times throughout each day of the course.
 

*International Development Service
*LR職員はOJTの色彩。セキュリティ会社職員は、将来、LRと契約をして各国で講師となるような口ぶりであった。







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