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c. 河川縦断の可能性
 荒川においては、平井大橋〜秋ヶ瀬取水堰の区間のみが河川の縦断が可能な経路である。そこで、平井大橋近傍の周辺施設の状況により、河川を利用した人員及び物資等の輸送の可能性を整理した。
 隅田川においては、倒壊する可能性のある橋梁が点在しているため、「河口〜駒形橋」、「駒形橋〜水神大橋」、「千住新橋〜岩淵水門」といった3つの区間について、河川を利用した人員及び物資等の輸送の可能性を整理した。
(1)「荒川エリア(2)」における河川縦断の可能性
 荒川エリア(2)における河川縦断の可能性は、図−3.2.11に示すとおりである。新砂リバーステーションは、東京湾との結節が可能なため機能するが、小松川リバーステーションは、倒壊した橋梁に挟まれるため、河川縦断という視点では機能しないことが想定される。
 新砂リバーステーションから小松川リバーステーション間で人員及び物資を輸送するためには、陸上で約3.5kmの移動が必要となる。
 当エリアにおいては、地下鉄東西線鉄橋より東京湾側は縦断することが可能である。しかし、それ以北は橋梁倒壊の影響により、河川を縦断しても人員及び物資等の輸送に有効であるとは言い難い。
 
図−3.2.11
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川縦断の可能性(荒川エリア(2))
(拡大画面:162KB)
 
(2)「荒川エリア(3)」における河川縦断の可能性
 平井大橋近傍の施設は図−3.2.12に示すとおりであり、船着場の「平井水上ステーション」がある。また、陸上との結節状況は、緊急輸送道路が近く、良好な条件であるといえる。そのため、船着場の「平井水上ステーション」を拠点とした縦断が有効である。
 平井大橋より南側は、河川を縦断できるエリアもあるが、船舶による人員及び物資等の輸送に関しては、船着場やリバーステーションがないため、実際は機能しないものと考えられる。
 当エリアにおいては、橋梁が倒壊した際に船着場の「平井水上ステーション」が非常に重要な位置づけとなり、緊急輸送道路に近いこともあいまって、船舶航行の拠点となりうると考えられる。
 
図−3.2.12
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川縦断の可能性(荒川エリア(3))
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(3)「隅田川エリア(2)」における河川縦断の可能性
 隅田川エリア(2)における河川縦断の可能性は、図−3.2.13に示すとおり、駒形橋の倒壊により、上流側からも下流側からも駒形橋までの航行のみ可能である。
 駒形橋より上流側及び下流側共に、船着場が多数存在するため、船舶を用いた人員及び物資の輸送は有効であると考えられる。
 当該エリアにおいては、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて縦断することが可能である。
 
図−3.2.13
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川縦断の可能性(隅田川エリア(2))
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(4)「隅田川エリア(3)」における河川縦断の可能性
 隅田川エリア(3)における河川縦断の可能性は、図−3.2.14に示すとおり、水神大橋の倒壊に伴い、高速道路出入口が倒壊することが想定され、高速道路の利用が制限される可能性がある。
 水神大橋〜日比谷線鉄橋間や日比谷線鉄橋〜千住大橋間は航行可能であるが範囲が非常に狭い。そのため有益な航行が困難であると考えられる。その他の区間については、航行が可能である。
 当エリアにおいては、倒壊した橋梁間を除けば、人員及び物資等を輸送するために、船舶を用いて縦断することが可能である。
 
図−3.2.14
 
設定条件における全ての橋梁が倒壊した際の河川縦断の可能性(隅田川エリア(3))
(拡大画面:132KB)
 
(5)問題点・課題
問題点(1):河川横断について
 橋梁が倒壊した際、船舶を用いたとしても、リバーステーションや船着場の位置関係により、河川を横断することは困難となる区間が多い。
 特に、隅田川エリア(3)の白髭橋〜千住大橋付近に面する地域では、橋梁の倒壊により対岸へのアクセスが困難な状況となり、島のように孤立する可能性もある。そのため、陸上交通が分断された場合には、船舶による人員・緊急物資等の輸送が重要となると考えられる。
 
問題点(2):河川縦断について
 荒川において、河川を縦断するためには、船着場の「平井水上ステーション」が重要な役割を果たす。しかし、この船着場はリバーステーションではないため、利用できる船舶等が限定されることや、人員及び物資等の積換え、積卸しスペース等に懸念が残る。
 
問題点(3):陸上との結節状況
 リバーステーションや船着場と緊急輸送道路や鉄道との結節状況がスムーズではない箇所が存在する。
 特に隅田川は、船着場から道路までの間に階段がある箇所が多く、船舶からの物資を車両に移すためには労力が必要となる。「車両→船舶→車両」という経路の人員及び物資等の輸送には時間がかかり、緊急時において有効に機能させるためには、何らかの改善策や入念な訓練が必要になると考えられる。
 
問題点(4):首都高速道路の出入口
 橋梁の倒壊に伴い、首都高速道路の出入りが不可能となる箇所が存在する。
 
課題(1):河川横断方法の検討
・簡易的に係留可能な施設の整備等
 
課題(2):河川縦断方法の検討
・災害時における船着場等の利用可能船舶の拡大等
 
課題(3):陸上との結節方法の検討
・緊急輸送道路からリバーステーションまでの道路の整備
・緊急輸送道路近傍の船着場までの道路の整備
・船着場と陸上の道路までに存在する「階段」のスロープ化や物資輸送のための訓練、組織形成
・荷役施設の検討
 
課題(4):鉄道の有効活用方法の検討
・緊急時に鉄道を道路として活用する方法
・物資輸送の拠点に駅を活用する方法
・船着場と線路もしくは駅までの結節状況の改善等







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