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(3)「体験型マリンレジャー」の普及を目指す 〜ヤマハマリン西九州〜
 港湾利用タイプ:港湾を基地とする民間のマリンレジャー事業
地域概況
観光
時津町(西彼杵半島の付け根)=長崎空港まで高速艇で約20分、長崎バイパス(至長崎市)
人口は約28,000人(長崎市のベッドタウンとして急速に都市化)
観光資源:大村湾、茶屋と鯖くさらかし岩等
観光レク施設:ヤマハマリン西九州、B&G財団海洋センター施設等
利用港湾 地方港湾時津港(臨港地区)
事業概要 ○事業開始時期:平成5年
○事業内容:マリーナ、小型ボートレンタル、マリン機器販売・修理・保管、教習
駐車場(約60台分)
○利用状況
定数110隻のうち約80%(客層はファミリー、熟年層。集客圏は長崎県内が多い)
○主なPR方法
口コミ、インターネット、キャンペーン実施、イベント参加
○タイアップ機関
ヤマハ発動機
特性
問題点
○長崎のマリーナ先駆け施設での事業
ヤマハマリン西九州は、時津臨港の埋め立て地(臨海工業地域)に30年以上前に整備された民間マリーナ。現在ヤマハ系企業が経営。
○海はマリンレジャーには窮屈
法規制等見えないバリアがある。地元で調整できても、他の海域や港での調整ができていなければ、マリーナネットワーク利用も難しい。
また、時間消費型のレジャーに慣れていない遊ぶ側の意識も海を広く利用する習慣をつくりにくくしていると思う。
○有効なプレジャーボート対策を
国のプレジャーボート対策は有効と思うが、現場行政がこれを運用しようとするとき、一律に適用しようとするのは無理がある。海の条件(風向、潮の干満等)、駐車場からの距離、施設条件(ハシゴで乗り降り=高齢者等には困難)などを評価して、条件により料金を変えるなどの工夫が必要。使用料を払わなくてもペナルティがないなど、係留船同士で不公平感を感じることもある。県内で係船料を払って係留しているプレジャーボートは50%程度(要確認)。財源確保につながらず設備の補習も進まないなど、係留しやすさにつながらない状況がみられる。
工夫点 ○海は「人つながり」
マリンレジャーの世界は、シーマン・シップでつながっている。また、海難救助会などのつながりもある。これが、情報交換や人材育成のネットワークにもなっている。
将来に向けての
課題やアイディア
○マリンレジャーの一般化を行政及びマスコミの協力と事業者の責任で
マリンレジャーは決して一部の人のものではなく、今や誰もが楽しめるものとなってきているが、未だ高価なレジャーとのイメージが崩れていない。
マリンレジャー普及のため、遊びのプログラムを育てたいと考えている。釣り一辺倒のマリンレジャーも、ウィークボードやクリージング等のバラエティを育てることで、環境や水産業にも優しい活動が目指せる。
○時間消費型のレジャーへ
業界だけでなく、利用者側(個人)が意識を育てることも大事である。一般ユーザーにとって、自由に海に漂うことを楽しみ、時には入り江に上陸してキャンプするなどの楽しみ方が理想。現在は法的規制があり無理であるが、利用者の意識育てや、ある程度の条件整備(海面・海浜利用の緩和、海のオートキャンプ場的整備等)がなされるとよい。
○五島のフィッシャリーナ・マリーナ(H16.5オープン予定)に期待したい
五島は魅力的。福岡の市場(ニーズあり)も近く、マリンレジャーのゲレンデづくりに参画していきたいと考えている(クルージングスポットとしての利用)。様々なマリンレジャーがあり、ゲスト船も受け入れて海を楽しむような港づくり、マリーナネットワークづくりのサンプルとして期待している。
 
(4)地域とタイアップした島観光の目玉づくり 〜木口汽船の観光船事業〜
 港湾利用タイプ:離島重湾を基地とする観光周遊船事業
地域概況
観光
福江市(五島列島の中心都市)=五島福江空港(至福岡・長崎)、福江港(至長崎・福岡)
人口約3万人(H16.8に奈留町を含む下五島1市5町合併後は約5万人)
自然資源:椿、サンゴなどの自然、多島美と日本の西の落日などの景観 人文資源:遣唐使、倭冦を含む大陸との交流史、キリスト教会、日本古来の民俗文化、藩政の歴史を物語る有形無形の資源あり
観光入込客数:年間約23万人
利用港湾 母港:福江港(重要港湾・離島)現在新ターミナル整備中(平成17年供用開始予定)
寄港:田の浦港(地方港湾)
奥浦(港湾ではなく海岸部の入江。市整備の桟橋あり)
事業概要 ○事業開始:昭和42年
○事業内容:湾内周遊、グラスボート
○代表的なプログラム:
・海中公園周遊(グラスボート19頓66名定員)
・教会巡りクルーズ(クルーズ船19頓97名定員)
・サンセット・クルーズ(同上)
○利用者の状況
H11:5400人 H12:6390人 H13:5940人 H14:4920人 H15:5220人
H14に若年層大幅減→コース見直し(教会クルーズ)で盛り返しを図っている。
○主なPR方法
交通会社による島観光プロモート;ビラ・ポスターを宿泊飲食施設に配布;市観光キャンペーンに参加;口コミ
○タイアップ機関
九州商船;観光協会(教会巡り、椿巨木巡り;修学旅行);教育委員会(体駿学習)
広域で進めている「長崎県の教会を世界遺産に」の運動に参加
特性
問題点
○海の生態系の観察・教会巡り等が売り
グラスボートで、サンゴや熱帯魚が美しい海底・海中を覗く海中公園周遊、「日本で最後に沈む夕日」を売りとするサンセットクルーズ、教会巡り(昔から漁師や船乗りなど海を往来する人々を見守り、海を向いて建てられた教会も少なくない)クルーズは、福江島観光の目玉の一つでもある。
○本土との交通の便が不便・不確実
船便・航空便を併せても便数が少なく、気象条件による欠航も少なくない(船会社では、航空便の遅れに併せて船便の運行時間を調整しているが不便感あり)。料金体系や運行時間も利用しにくい(観光以前に、住民の福祉政策として交通条件の向上が課題との認識)。新ターミナルができるが、港湾スペースに同時に複数の船が離発着するゆとりがない、高速艇の母港が長崎港であるなど、すぐには改善できない点もみられる。
○島内を結ぶ交通の便が不便
福江港から島内旅客船、路線バス、定期観光バス、観光船などにすぐ乗り換えられるが、島内旅客船や路線バスの便数が少ない、複数の予約がないと定期観光バス、観光船の運航がないなど公共的な交通機関や周遊観光の仕組みが弱い。
○観光案内情報・海洋利用関係情報が不十分
徒歩やレンタカーでの移動も、標識や地図などの案内が少なく、わかりにくいなど、港を拠点に自在に歩き回れるという環境は不十分(合併後島内共通のサイン整備を検討中)港ターミナルビルに観光協会があるが、事前に島内の具体的な情報にアクセスしにくい。また、気象・海象情報の提供、海域での活動情報などは特に得られない(最近、島内他地域で修学旅行の子どもが季節外に海遊びして波にさらわれた;大都市圏から訪れたダイビング客の事故(船との接触)があり、来訪者への情報・認識伝達は課題)
○「体験」の重視と「法制度」の壁
「無人島で遊ぼうツアー」を20年近く続け、好評だったが、国・県から「現地に桟橋等の上陸施設が不十分」との指摘を受け、休止を余儀なくされた。市・観光協会も民間事業者も来訪客も、冒険心を満足させるような体験型観光を重視する方向にある中で、法制度の壁が逆に高くなることもある。安全性の確保は重要であるが、現地の状況をより即地的に評価し、柔軟な対応が可能になるとよい。
工夫点 ○島全体の観光コンセプトを確立し、共同PR 〜教会・椿・海〜
「何でもある」と言われる五島の中で、市と観光協会は昨年「教会・椿・海」を観光地づくりの三本柱としたPR戦略を開始。本観光船事業も島観光の目玉の一つとし、共同的な誘客戦略を展開している。現在、観光協会を軸に、教会巡り、山ツアー、漁師体験等のプログラムを実験中。
○修学旅行・体験旅行の重視
関東圏程度までをターゲットに小中高校の修学旅行や大学の合宿旅行の誘致、体験旅行の促進に力を入れ、観光協会は、一般向けガイドのほかに「修学旅行・体験旅行ガイド」冊子を作成。福江島全島の概要紹介のほか、島内にある様々な体験プログラムを総覧(観光船事業を含む)。長崎五島航路の就航率なども紹介しており、一般客にも役立つ。
将来に向けての
課題やアイディア
○新ターミナルとしての活用
地元(市・観光協会等)は、新ターミナル(県が整備し市が運営を受託)に情報センター機能、交流機能(イベントやオリエンテーリングの発着地等の利用)を置くことを期待している(県・市・民間企業間の共同体制づくりが課題)。
 
(5)海を守りながら楽しむシステムづくりへの試み 〜長崎県中央釣船協同組合〜
 港湾利用タイプ:港湾を基地に、海域利用の秩序づくりに取り組む事業者団体
 
(6)港湾の歴史を背景に、漁業と観光がタイアップ 〜海の駅「船番所」〜
 港湾利用タイプ:港湾の歴史的環境を活かした、ブルーツーリズムの拠点
地域概況
観光
西彼杵郡西海町=人口約1万人。農業が基幹産業。七ツ釜港のほかに瀬川港、面高港、太田和港があり、横瀬港は佐世保港の地区の一つ。
自然資源:七ツ釜鍾乳洞、長崎西海楽園、伊佐ノ浦公園、虚空蔵展望台からの朝日・中浦からの夕日
人文資源:中浦ジュリアン、横瀬浦史跡公園、唐人墓、船番所跡、大島大橋・・・
観光施設:西海町歴史民俗資料館、みかんドーム、海の駅船番所・・・
利用港湾 佐世保港(横瀬地区)佐世保への渡海船営業あり
事業概要 ○事業開始時期:平成14年
○概要 〜グリーンツーリズム事業の一環〜
西海町では町の活性化を目指し、平成10年にグリーンツーリズムの基本計画を策定し、地場産業+観光振興を進めている。この施設はその一環(佐世保港への出入口にある西海町の海岸部には、藩政時代、佐世保港に出入りする密航船等を取り締まる「船番所」が7ヶ所設置あり当地も一つ。当時の建物に使われていた材料を使って船番所施設を復元した観光施設。ブルーツーリズム=漁業が低迷する中、漁家対策の一環でもある)。
○事業内容:飲食50席(全て地元農水産物)、簡易宿泊10名の規模、売店・体験施設
○利用状況:H14.11から5か月で5600人(飲食+買い物)。周辺観光(買い物をしない客)を入れると約2万人が来訪している。
○船番所協会が整備・運営 町は企画、補助金(国+町単)の運用と拠出、広報・宣伝を担うが、整備運営は地元住民からなる船番所協会(任意団体)行う(100%独立採算)。
特性
問題点
○重要港湾×県立自然公園内にある
佐世保港内の地区(横瀬港)に立地。目前に八の子島(キリスト教の歴史あり)、船舶が航行する海路の風景が広がる。歴史と自然と現在の佐世保周辺の風景が交錯する環境は観光魅力があるが、公共の防波堤、物揚場などが美観の妨げになるとともに、周辺海域の利用にも制限がある。
○海・港湾の観光への実質的な活用はこれから
漁業権との調整問題などもあり、海に囲まれながらも海のレジャーは少ないなど、利活用は今後の課題。ブルーツーリズムの考え方を取り入れて漁業+観光を模索する「面高漁業研究会」などの活動がみられるものの、未だ進みにくい(イベントは有料であり、磯遊びに2000円/年徴収(イベント時無料)、漁船使用は禁止など敷居が高い)。畜産による海洋汚染が問題になったこともある。
工夫点 ○農業・漁業・観光の融合
グリーンツーリズム計画により、分野間を融合させ、統一感のあるまちづくりが進み、観光客の増加、地産地消型の産業活性化、食育の推進、UIターン者の出現(ポルトガル大使館スタッフが町嘱託職員に転職、船番所の板前さんはUターン者等)など、様々な効果が得られつつある。
○住民ガイドを育成中
キリシタン大名やポルトガル人宣教師がいた歴史、船の文化があった歴史など、町の観光案内システムとして資料館や船番所のような施設整備のほか、住民ガイドの育成に着手している。
将来に向けての
課題やアイディア
○船番所〜八の子島周辺の観光エリアづくり
八の子島は、船番所及び横瀬港を特色づけるランドマークになっているが、無人で未活用(地元の若い人がボランタリーにライティングする)。船番所〜八の子島を自然体験と釣り・磯遊び・船遊びのエリアにしようという計画がある。







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