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(2)今後の調査体制の提示
 今回の実証実験の結果を踏まえて、今後、よりスムーズにバリア関連情報等まちの情報を収集し、Web上に地域コミュニティマップを作成していくための体制についてバリアフリーマップ作成を例にして提示する。
 
ア 活動主体
 自分たちが生活する地域のことであり、今後も関わりを持ち続けていくこと、また、バリア情報だけでなく様々な地域事情に詳しいことなどから、地域住民を主体とするまちづくり協議会などの住民団体が主体となって行うものとするが、行政もまちづくり支援課等を中心としてその活動に対し、道具の貸し出しやアドバイス、場合によっては職員の派遣といった物心両面からの支援・協力をすることが必要である。
 
イ 調査の流れ
 Web上におけるバリアフリーマップの作成にあたっては、〔事前準備⇒現地調査による情報収集⇒情報入力作業⇒登録情報の承認作業〕という流れを経て作成される。
 
事前準備
・現地調査をよりスムーズに行うためにその前段階として、事前準備をしっかりとしておくこと必要がある。
 
【説明会】
・現地調査当日は大人数集まることもあり、調査の主旨や進め方について必ずしも十分な理解を得られない可能性もあるため、現地調査の前に地区ごとの調査リーダーを対象とした調査説明会を行うことが必要である。ここで、調査の主旨や現地調査の進め方について理解の徹底を図る。
・住民側は、行政に対し、当日準備して欲しいものや協力して欲しいことを確認する。
・住民側はこの時までに当日の参加予定者を把握し、行政に伝えておく、行政はそれに基づき、簡単な名簿を当日までに作成しておく。また、地区によって参加人数に偏りが見られるときは、その調整も行っておく。
・悪天候等により現地調査を中止する場合の判断基準やその連絡方法を検討しておく必要がある。アンケート結果から悪天候時の実施を望む人は少ないことがわかっているため、原則として悪天候の際は中止することが望ましい。
【準備するもの】
《筆記具》
・調査票記入用の筆記具のほかに調査ルート確認等のため蛍光ペンがあると望ましい。
《調査票》
・1種類の調査票に異なる情報を記録してしまうと混乱するため、色紙を使うなど調査する種類ごとに異なる調査票を用意する必要がある。
・調査対象地区名等が予め分かっているときは地区名等を印刷した調査票を用意しておき、当日の作業量をなるべく軽減することが必要である。
・今回の実験では写真と調査票の符号に手間取ったため、写真情報をより細く記録できる調査票を作成する必要がある。
・実際の調査では、バリア情報とバリアフリー情報があるので、一目で区別できるように工夫する必要がある。
・以上の点に考慮して調査票の案を提示する(図表3-23)。
 
図表3-23 調査票(案)
 
《調査マニュアル》
・調査の進め方のほかに、現地調査の視点や注意点、ポイントなどを記載したマニュアルを用意する必要があるが、完成したものではなく、調査を積み重ねて作りあげていくことが望まれる。
《白地図》
《住宅地図等の一般地図》
・白地図だけでは、場所を把握しづらいことも考えられるので、店舗等詳細な情報が記載された市販の地図を参考に用意することが望ましい。
《デジタルカメラ》
・画像情報の方が文字情報と比べてはるかに伝わる情報量が多いので、積極的に画像情報を添付、公開していくべきである。そのためには、現地調査でデジタルカメラが必要となる。今後、市は可能な限り備品として整備をすすめていく必要がある。
《安全対策グッズ》
・調査地域によっては、車の往来の激しい箇所等がある。少しでも現地調査中の安全を確保するために、市としては蛍光色のジャケットや帽子、腕章などを用意し、それを住民団体に貸与するなどの安全対策を講じる必要がある。
 
現地調査
・現地調査は実際に現地を回り、できるだけ多くの人の目で、バリア情報等地域情報を見つけ、それをみんなで話しあい、地域課題や情報を共有することに意義があるので、できるだけ多くの人の参加と話し合いの機会をつくることが望まれる。そのためには、グループ内で役割分担を決め、効率よく調査を進めていく必要がある。
以下に、現地調査の各グループ内の役割分担体制について提示する(図表3-24)。
 
図表3-24 各グループの役割分担イメージ
 
《地区ごとの調査リーダー》
・各係の人に対し指示を与える。また、現場での疑問点や問題点の整理を行う。
その他、調査の進め方等全体の指揮を執る。
《記録係》
・調査票に情報を記入する係。調査する情報の種類ごとに係をおくことが望ましい。
・係の人は自分の担当する情報について責任を持って調査票及び地図に記録する。
《撮影係》
・調査ポイントを撮影する係。1つのカメラでは1種類の情報の写真しか撮影しないようにするため調査情報の種類ごとに係を置くことが理想であるが、カメラの台数に限りがある場合には、撮影係が、記録係と連携を取り、きちんと記録枚数を管理することが必要となる。
《交通安全係》
・必置の係ではないが、現地調査中の不測の事故を防ぐためにも、特に交通量の盛んな地域を調査するときには置く必要がある。
 
検討作業
・現地調査で特に問題となった点について、改めて検討する。
 
入力作業
・今回の実証実験によって、参加者に基本的なパソコン操作の技術があることがわかったので、入力作業については、各個人で分担して行うこともできるが、大勢で行うことで仲間意識も生まれ、また、操作に弱い人でも積極的に関わることが可能となることなどを考えると当面は、一ヶ所に集まって入力作業を行うことが望ましい。その際は、行政が学校等の公共施設を提供するなどの側面支援をする必要がある。
また、将来的には、よりスムーズな入力作業の実現と参加者の底辺を拡大することを目指してIT講習を終了した地域ITリーダーとの連携・協力も視野に入れて進めていくことが望ましい。
 
承認作業
・この承認の作業は、Web上に公開される前の最後の関門のような作業のため、大きな責任の伴う作業となる。その一方で、現地調査から得られた地域の生の情報全てに目を通すことができるため、地域住民のニーズや地域課題を把握するのに非常に重要かつ有用な作業でもある。したがって、今回の実験では本市がこの作業を担ったが、将来的には自分たちのまちを自分たちの手で作り上げていくという住民自治の観点から住民団体が担うことが望ましい。しかし、今回のアンケート結果からみてもわかるように、責任の大きさや人数の不足等により現実には住民団体にこの作業を任せることは難しい状況にある。そこで当面は、行政が責任主体となってこの承認作業を行い、そこに住民団体の代表者が参加する形でノウハウを蓄積・共有し、責任の所在を明確にした「バリアフリー情報承認基準」のようなもの作り、責任の範囲を明確にした上で、住民団体に引き継ぐことが望ましいものと考える。
 
HP上の公開
・HP上に公開されたバリア(フリー)情報をはじめとする地域情報は活用されなければ何の意味も無い。そうならないためにも行政は積極的に市民にアピールすることが求められる。と同時に、作成主体である住民団体の活動意欲をより一層高めるために公開情報に対するレスポンス(反応)がわかるような仕組みを取り入れていくことが必要となる。また、こうした情報から住民ニーズ、地域課題を把握し、行政施索へ反映させることが求められる。作成主体である住民団体も、情報の鮮度を維持するために定期的に現地調査を行い、情報の更新・削除等を心がけることが求められる。







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