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2 協働によるまちづくり
(1)全国的な動向
 
 現在の日本は、急激な少子高齢社会の到来を受けて、医療・福祉・年金といった分野の行政需要は増え続けており、また一方では、都市化や核家族化の進展、携帯電話やパソコンといった情報機器の発展によるライフスタイルの変化などによって個人の価値観は多様化、複雑化し、それに伴って、行政に対する住民のニーズも多様化、複雑化、高度化し、公平・公正を原則とする従来の行政サービスでは対応できない新たな行政ニーズが発生してきている状況にある。
 しかし、行政は、長期にわたる経済不況等の影響で、国・地方を問わず税収等の歳入は減り続けており、国債・地方債を発行してかろうじて従来の行政ニーズに対応している状態にある。こうした行政はもはや量的にも質的にも行政ニーズに対応することが非常に難しい状況となっている。
 
図表1-8 過去7年間の老年人口と出生率の推移
資料:国勢調査を基に作成
 
 
図表1-9 近年の地方財政の借入金残高
資料:総務省「地方財政の状況(平成15年度版)」より作成
 
 一方、サービスの受け手である住民の側も経済成長を経て物質的に豊かな生活を享受することができるようになり、次第に生きがいや自己実現といった心の豊かさを求め、自然や環境といった自分が生活している身近な問題に興味を持つようになってきている。このような地域社会や社会貢献に対する関心は、平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災におけるボランティア活動によって一層注目を集めることとなった。
 政府もこうした住民の社会貢献活動への意識の高まりを意識し、その発展を促進することを目的として平成10年(1998年)3月に「特定非営利活動促進法」(以下、NPO法という)を制定、12月に施行した。この法律によってボランティア活動をはじめとした公益活動を行う団体は法人格を取得することが可能となり、自主性、自律性を基礎とした柔軟かつ迅速な活動を行うことを特徴とするボランティア・NPO団体は組織的継続的な活動が可能となり、地域や家庭が持っていた助け合いの機能の低下を補うものとして、また、新たなサービスの供給主体としての役割や期待が寄せられるようになっている。
 このことは平成14年(2002年)12月に成立した改正NPO法の中が、特定非営利活動の種類を既存の12分野から「情報」「経済活性化」「雇用機会拡充」など5分野を加えた17分野に拡充されたことからもうかがえる。平成15年(2003年)11月末現在、全国で14,199団体が認証を受けている。
 ここに、地域社会を担うそれぞれの主体が互いの特性や役割を認め合い、対等な立場でそれぞれ得意な公共サービスを提供し、それを行政がコーディネートしていく「協働による地域経営」の活動素地が整ったとみることが出来る。
 
図表1-10 NPO法改正による対象分野の追加状況
従前 改正後(平成15年5月1日施行)
1 保健、医療、又は福祉の増進を図る活動
2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづくりの推進を図る活動
4 文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
5 環境の保全を図る活動
6 災害救助活動
7 地域安全活動
8 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
9 国際協力の活動
10 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
11 子どもの健全育成を図る活動
12 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は
  活動に関する連絡、助言又は援助の活動
1 保健、医療、又は福祉の増進を図る活動
2 社会教育の推進を図る活動
3 まちづくりの推進を図る活動
4 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
5 環境の保全を図る活動
6 災害救助活動
7 地域安全活動
8 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
9 国際協力の活動
10 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
11 子どもの健全育成を図る活動
12 情報化社会の発展を図る活動
13 科学技術の振興を図る活動
14 経済活動の活性化を図る活動
15 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
16 消費者の保護を図る活動
17 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は
  活動に関する連絡、助言又は援助の活動
資料:内閣府
 
図表1-11 NPO法人認証数の推移
資料:内閣府資料を基に作成
 
 
(2)本市の取り組み
 
 本市においても、こうした社会情勢の変化や価値観の多様化によって複雑化した地域課題に対応するため、これまでの行政中心の公共運営の仕組みを見直し、地域社会を構成する様々な人々の参加と協働による新しい公共運営の仕組みづくりにむけて取り組んでおり、平成15年(2003年)3月には、豊中市市民公益活動推進委員会の提言を受けて、「豊中市市民公益活動推進指針」を策定、これを基にワークショップなどで得られた市民の意見を踏まえて平成15年(2003年)12月に「豊中市市民公益活動推進条例」が成立、平成16年(2004年)4月から施行が予定されている。
 
図表1-12 豊中市市民公益活動推進条例の構成
資料:豊中市HP
 
 こうした市の施策に呼応するように、本市ではNPOやボランティアといった市民公益活動が盛んに行われている。平成16年(2004年)1月現在、本市にはNPOを含めた市民公益活動団体が101団体登録しており、社会福祉や環境、教育や国際交流といった分野で積極的な活動を行っている(図表1-13)。特に平成15年(2003年)12月にNPO法人化した「とよなか市民環境会議アジェンダ21」においては、環境分野において中間支援組織としての役割を担うなど活動の幅に広がりを見せており、今後、他団体においても中間支援的な活動がなされることが期待される。その一方で、将来、一層の活躍が期待される情報関連分野の活動が手薄な状況にあり、課題となっている。
 
図表1-13 豊中市内で活動している市民公益活動
グループ名・団体名 活動分野 
国際交流
国際協力
教育・学習
文化・スポーツ
人権
平和
社会福祉
保健・医療
環境
地域づくり
あけぼの男女共生社会づくりの会
あさひ会作業所        
インクルージョンプログラムラボラトリ  
エコ・グループ    
SCC東アフリカ子供救援センター    
OIC豊中        
大阪城公園ネイチャーゲームの会      
おかまち・まちづくり協議会        
ガールスカウト 豊中地区協議会      
学校図書館を考え専任司書配置を願う市民の会        
簡易通所授産所よーいドン        
環境フォーラム市民の会        
希望スクール        
キャロット          
校区福祉委員会      
国際ソロプチミスト
災害支援ネットワーク会議        
シークエンスクラブとよなか        
シネメッセとよなか      
島熊山の雑木林を守る会        
(社)アムネスティ・インターナショナル 日本第10グループ      
社会福祉法人飛翔会 障害者通所授産施設TOPPOI        
障害者の為の生活支援センターみらい        
てくてくあふさか      
NPO法人アートフルエフ      
NPO法人オリーブの園        
NPO法人カームフラワーアソシエーション      
NPO法人高環境創造支援協会      
NP0法人ゴールデンベル      
NPO法人国際交流の会とよなか        
NPO法人子どものメディアを考える会        
NPO法人サン福祉センター    
NPO法人CIL豊中        
NPO法人障害者の自立を支えるサポートネットワーク      
NPO法人豊中生涯学習ボランティアせんりの会      
NPO法人であいの郷市民委員会        
NPO法人ディージーシー基礎研究所      
NPO法人豊中市障害者就労雇用支援センター        
NPO法人ニッポン・アクティブライフ・クラブ豊中・池田・箕面        
NPO法人日本レスキュー協会    
NPO法人パフォーミングアーツコーポレーションおおさか    
NPO法人ビー・ジーみなみ        
NPO法人ほがらか        
NPO法人まちづくりネットワークゆう        
NPO法人まちづくり福祉推進ネット      
NPO法人ユニバーサルデザイン推進協会      
NPO法人よつ葉福祉友の会        
NPO法人医師と歩こうハートの会        
NPO法人喜樹福会        
NPO法人バムスピア        
NPO法人シー・エイ・イー懇話会          
NPO法人大阪カヌーイング協会        
NPO法人日本口腔ケア支援協会        
NPO法人パピルス        
NPO法人豊中訪美会        
NPO法人いきいきライフ協会          
NPO法人地球村倶楽部        
NPO法人バイオマスエネルギー協会        
NPO法人特許流通促進会議          
NPO法人えむ・コミューズ        
NPO法人多重債務者再起協力会        
NPO法人で・あ・い    
NPO法人とよなか市民環境会議アジェンダ21        
NPO法人花と緑のネットワークとよなか        
NPO法人バイオグリッドセンター関西        
豊中駅前まちづくり協議会        
豊中エスペラント会    
豊中おもちゃ病院      
豊中子ども文庫連絡会        
市社協登録ボランティアアクセス          
市社協登録ボランティア豊中アッシー          
市社協登録ボランティア豊中
いきいき歌体操グループさわやか
         
市社協登録ボランティア聴く会        
市社協登録ボランティアズームイン        
市社協登録ボランティアステッキ        
市社協登録ボランティアそよかぜ        
市社協登録ボランティア小さな手        
市社協登録ボランティアつぼみ        
市社協登録ボランティアみちしるべ        
市社協ボランティア団体連絡協議会        
豊中市ひとり暮らし老人の会      
豊中市婦人団体連絡協議会        
とよなか消費者協会      
豊中シルバーハウス連絡会        
豊中市老人介護者(家族)の会        
豊中生物同好会        
豊中中国文化交流会        
とよなか友の会(東豊中方面)    
とよなか2020市民ネット  
野と森の遊び文化協会    
福祉の店「なかま」運営委員会        
ボーイスカウト豊中地区      
まちづくり協議会そね21の会      
メアリ・豊中市コリアン高齢者福祉の会  
リカバリーループ        
ロータスクラブ          
資料:豊中市資料を基に作成
 
 また、本市では、地域づくりの分野についても力を入れており、平成4年(1992年)に「豊中市まちづくり条例」を制定し、地域での市民の主体的な活動を支援し、地域単位でのきめ細かなまちづくりを実現するための市民と行政の参加・協働の新しいしくみづくりを進めている。平成5年(1993年)には、「豊中駅前まちづくり協議会」(平成14年6月「豊中駅前まちづくり推進協議会」と改称)が、平成6年(1994年)には、「おかまち・まちづくり協議会」が、平成15年(2003年)には、「まちづくり協議会 そね21 の会」が、「豊中市まちづくり条例」に基づき協議会認定されている。
 
図表1-14 「市まちづくり条例」によって認定された市民主体のまちづくり組織
名称 内容
豊中駅前まちづくり推進協議会  平成7年6月に「まちづくり構想」を市長に提案、交通混雑の解消と安全な歩行者空間の確保を目標に活動を行っている。平成12年4月には行政や交通事業者と連携した「交通社会実験」、翌年には「豊中駅前地区のまちづくりを進める交通施策に関する調査」を実施し、商業活性化のための「商人大学」「繁盛店づくり」にも取り組んでいる。
おかまち・まちづくり協議会  平成9年7月、「まちづくり構想」を市長に提案、音声誘導・案内システムやタウンモビリティなど、だれにでもやさしく歩きやすい通りづくりの検討のほか、まちの特性である歴史・文化をいかしたまちづくりに取り組んでいる。
まちづくり協議会そね21の会  平成9年12月、まちづくり条例に基づく研究会となり、「道路交通」「駅前商業」「住環境」「地域コミュニティ」を中心テーマに活動を展開している。平成15年6月には「まちづくり協議会」を設立し、まちづくり構想づくりにむけて活動をすすめている。
資料:豊中市
 
図表1-15 「まちづくり条例」とまちづくりの進め方
(拡大画面:91KB)
資料:豊中市HP







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