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 磯舟の軸は直線では無く上方に行くに従いや上反りとなり、巾も広くなり、一般的には外舳を取付けないと記憶しています。胴海船は直線の舳で厚さは製材所で寸法通りに挽いて来ますが巾は鉞、手斧で仕上げます。更に外舳が付きます。起船や三伴船は曲りがありますから、巾のみ 型に製材所で落としてから、細工場へ運ばれてますが殆んどが手仕上げと云えます。
 
磯舟
 
 舳の材料は三伴船、起船はかつらが多かった様で、桂材に大口経のものが山に多く。柔かく、削り易い事に有るかと存じます。又木目が堅いという(例えば、杉や松の如く)ことが有りません。大工言葉で四枚矧と云われる起船、三伴船の舳の形について説明します。
 当時は曲りの有るこの材料も殆んど一材を以て構成されております。曲りは円弧ではなく、上棚と下棚の接点がやゝ折れた様に、下棚は上棚と較べて曲りが、少い型です。之は下棚は、取付の際一体物の外板ですから、どうしても、全体が上反りの形で納り、舳への取付部が平面的に見て接面が中心部へ弯曲します。この弯曲形状をなるべく少くする様の事で、直線に近い曲面となるかと思います。取付の経験の有る人でなければ、少し解り難い説明ですが、次に繪を以てなるべく訳り易くと存じます。
 
原本の形
場内の製材所で上記の様、なるべく削り易い様に挽落した
 
舳の図
 
 起船より三伴船の方が舳の反りが大きく、えぼしの部分は起船では切落した様な形と記憶が有りますが、確かでは有りません。制作には5日〜7日位を要した様です。継手辺は取合と整形の都合から完全な仕上げとせず取付固着后(但し仮止)にノセ盤と共に仕上げをしておりました。
 
 一般の小さな造船所では、多忙でも40尺〜70尺の和形漁船は年間2〜3隻でしょう。この造船所は和洋含めて40隻以上となります。ですからこの舳は一般には全て手仕上げとなり、小型を見て、長さも、巾も、深さも1つひとつバッテン(1)撓み定規)(2)しない)を掛けて墨付をして削った筈です。然し此処は側面の形状丈は木型が有りました。他は全てにしないを使って曲線部をひとつひとつ墨付をします。舳を削らせられると云う事は名誉な事なのです。他の人が集団仕事をやっている中で独り単独仕事なのですから、(同時に戸立組立も単独仕事となります。)外板が嵌め込まれる隈の下線はさくり鋸というもので切込を入れ、他は鉞、手斧、ノミ、鉋に依り制作されます。内外面は鉋でキレイになりますが隈という外板用の溝は、手斧目の残る程度の仕上げとなります。こヽは后々のみうちと漆の塗付で水密となる所ですから、之で差支えないのです。内面に接する角の面取りは、この后々ののみうち作業と漆塗りの為なのです。
 この面は12m/m巾位で右図の様になります。
 







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