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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/01/08 産経新聞朝刊
【主張】新防衛指針 危機管理阻む私権の固執 国際責務果たす好機がきた
 
 今年の日本の安全保障面の課題は、大別して二つある。第一は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に盛られた周辺事態に対する協力を円滑に進めるための有事法制の立法作業。第二は、国際社会の一員としての責務を果たす国連平和維持活動(PKO)への積極的な参加である。
 前者のガイドライン関連法案は逐次国会に提出されるが、武器・弾薬の輸送問題ひとつとってみても、集団的自衛権論議は避けられまい。主権国家として集団的自衛権は保有しているが憲法上使用できないという憲法解釈の非論理性を徹底論議する機会である。
 この二つの問題は実は一九九一年の湾岸戦争と冷戦終結以来、大きな国民的・政治的課題となり続けているものである。両者は目的や行動面で基本的に性格を異にするが、求められているのは戦後日本の一国平和主義(平和ボケ)状態からの脱却である。国際国家らしい意識変革が迫られている。
 昨年秋、日米両国政府間で最終合意に至った「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)は、文字通りそのための指針になり得る。極東有事においての指針研究も冷戦期に着手されたが公表には至らず、冷戦後の国際情勢を踏まえて今回、見直された。
 安保条約は日本に対する直接侵攻を米軍支援により排除することと、いわゆる極東有事に対応する米軍への基地提供を二本柱にしている。九六年の日米安保共同宣言はアジア・太平洋地域の安定をうたっているのだから、宣言に基づくガイドラインも当然、極東有事を視野に入れているはずだ。しかし、主眼はあくまで「日本の平和と安全に重要な影響を与える」ところの「周辺事態」への対処である。台湾海峡がそれに含まれるかどうかなど地理的特定論議は不毛である。地域の特定を避けるのは安全保障の常識でもある。
◆激甚災害の対処と同じ
 日本の安全に脅威(さまざまな態様がある)を与えるものが周辺事態だから、ガイドラインは日本の危機管理策以外の何物でもない。その意味では阪神大震災など激甚災害への対処と同じなのだ。ガイドラインは周辺事態に対処する米軍への後方支援などを充実することで、安保体制の信頼性を向上させる。一方、集団的自衛権不行使という憲法解釈の制約下ながら、日本に何ができ何ができないかを整理し、安保条約運用の手引を提供するものでもある。それゆえガイドラインによって日本が戦争に巻き込まれやすいとの警戒論は的外れだ。「周辺事態」の判断も含め文民統制は強化される。「平素から行う協力」による紛争の未然防止効果にも目を向けるべきであろう。
 ただし、有事に即応する首相を頂点とした判断・指揮体制は整備されていない。国内災害時にも必要となる私権制限を伴う有事法制(例えば私用車両の交通規制、必要とする施設の借り上げ手続き簡素化)程度に対してさえ、「憲法に基づく国民の基本的権利や経済活動を束縛する」という反対論があるのは、あまりに危機管理に対する認識が薄すぎるのではないか。
 後者のPKO活性化について、現在の三与党体制は鈍感である。国民の意識も薄れつつある。本来、人的リスクもある程度覚悟して成立させたはずのPKO協力法に基づき、ただちに国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)に自衛隊の施設部隊が延べ千二百人参加した。だが、自衛隊のそれ以後のPKOへの参加は少数にとどまっている。
 PKO協力法に明記された見直し時期(三年後)はとうにすぎているのに、改善策は講じられていない。三与党は今年の通常国会後半に改正案を国会に提出する方針だが、最も重要な国連平和維持隊(PKF)本体(隊)への自衛隊参加凍結を解除する考えはないようだ。PKF本体とは歩兵部隊のことである。停戦監視、兵力引き離し、武装解除など最も重要な任務に就く。数も多く身を守るため武装している。これは軍事色が強いという不合理な政治判断で暫定的に凍結された。加えてPKO法採決に牛歩戦術で抵抗した社会党(現社民党)が与党なので、凍結解除はほぼ不可能に近いわけだ。
◆法も認めたPKF解除
 しかし、自衛隊のPKF本体参加はれっきとして法律で認められているという事実を忘れては困る。しかも国際社会は停戦合意の成立などを派遣原則とする伝統的PKOに回帰しつつある。もちろんリスクは残っているが、要は志の問題だ。しかも自衛隊が参加しやすい環境は整っている。国連がソマリア平和執行部隊のような武力行使型PKOの失敗を認めたからである。
 日本のカンボジアPKOは一部の近隣諸国を除いて大変評価された。「PKOは軍人の仕事ではないが、しかし軍人のみがその仕事をなし得る」というハマーショルド元国連事務総長の言葉を改めて想起すべきであろう。
 
 
 
 
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