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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/04/22 産経新聞朝刊
【海を越える「使命」】半年間の成果と課題(中)ギャップ
 
 「今後、日本がPKOに参加するなら、最悪の事態を想定してから来るべきだ」
 半年間の活動を終えた陸上自衛隊の第一次施設大隊がプノンペンを離れる際、オーストラリア軍の大佐は大隊幹部にこう忠告した。
 大隊の特別幕僚を務めた三佐(三七)は、ガーナやカナダ部隊の駐屯地を帰国あいさつに訪ね、それまでなかった場所に土のうが高く積み上げられているのに気付いた。数日前にポト派がブルガリア駐屯地を襲撃しており、そのための自衛対策だった。
 平和に慣れた自衛隊との隔たりを目の当たりにしたという三佐はこう語る。
 「『安全だから』と国はわれわれをここに派遣した。しかし、他国の部隊は『犠牲者が出て当たり前』という軍隊として当然の意識を持っている。だからこそ『身をどう守ればよいか』が考えられる」
 銃の携帯にしても、一次部隊では駐屯地ゲートの警備要員に小銃を、作業現場の警務隊員に短銃を持たせた以外、約六百丁の銃の大半は駐屯地内に保管していた。「武器は一括保管」というのが派遣時の政府方針だった。
 「他国の隊員はわれわれの水筒と同じような感覚で銃を持っていた」
 
 五月の総選挙を控えたカンボジアは、急速に治安が悪化している。自衛隊が駐屯するタケオの北方や、一個中隊が分駐しているカンポット周辺では、ポル・ポト派兵士が集結しているという情報もある。
 一次大隊の大隊長、渡辺隆二佐(三九)は「われわれの活動範囲で、紛争四派による停戦合意違反はなかった」と前置きし、危機対策の心構えをこう打ち明けた。
 「被害者にはなりたくない、いざとなれば迷わず銃を持たせようと腹では決めていた。しかし、どんな事態になったら持たせればよいか、状況判断がなかなかつかめなかった」
 その理由のひとつに、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)本部軍事部門に、幕僚スタッフを送っていないことによる情報収集能力の限界があった。平和維持軍(PKF)への参加凍結を決めた政府の方針によるものだ。
 ポト派の動向など軍事的情勢の予測は、UNTACが公式発表した情報に頼っていたため、「対応に時間がかかる」。
 「本国からの指示待ち」という日本の特殊事情もあった。渡辺二佐は言う。「『現地情勢を考えて必要と思ったら持ちなさい』と裁量を与えてくれるのが、欲しい指示だった」
 国連ボランティアの中田厚仁さん(二五)が射殺されてから四日後の今月十二日、防衛庁は初めて、現地情勢によっては大隊長の判断で隊員に武器を携帯させることを認める方針を決めた。
 翌日、交代の第二次施設大隊は、移動中に銃や防弾チョッキの携行を始めた。
 
 部隊の行動は、PKO協力法に基づく実施計画、実施要領で限定されている。このため、UNTACの指示を「実施計画に含まれていない」と断ったり、本国の判断を待つ間に対応が遅れることも相次いだ。
 「なぜ現場で判断できないのか」。UNTAC本部の幹部からそう言われる度に、調整役の隊員たちは、自衛隊の文民統制の現状から、憲法九条まで自国の事情を説明してきた。
 半年間で、世界と日本のさまざまな常識のギャップが露呈された。大隊で広報担当を務めた太田清彦三佐(三六)は率直に振り返る。
 「国際社会で日本流は通用しないことを痛感した。(今回の派遣は)人を出すことだけにウエートを置いたあまり、出たら何をするのか、という視点が欠けていたと思う」
(渡辺浩生)
 
 
 
 
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