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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/08/20 世界週報
海軍の信頼関係と日米同盟
元駐タイ大使
岡崎研究所所長
岡崎 久彦
海自創設とバーク大将の功労
 海上自衛隊の創設に功労のあった方の中で、米海軍のアーレイ・バーク大将という方は、かつて草鹿龍之介中将と親交を結ばれ、そのうちに日本海軍に対する理解を深められた。それで、海自の発足に当たって、非常に尽力してくださった理解者です。亡くなった時に胸に飾られたのは、本人のご遺志で日本の勲章だけだったといいます。
 自衛隊を創設する時の話で私が聞き及んでいるのは、陸自と空自については、米国としては新しい発想で作ったわけです。しかし海自だけは、バーク大将のご意見もあったと思いますが、日本海軍の伝統を尊重して、「かつての日本海軍を復活すればいいんだ」という趣旨で作られたようです。
 海自創設五〇周年と言いますが、むしろ勝海舟の咸臨丸以来一四二年の歴史ということだと思います。
 幕末は、日本の近代化と安全保障ということで、すべてが海軍の建設に集中されたんです。「帝国主義の時代に、日本は生き延びなきゃいけない。そのためには、まず海軍を増強しなきゃいかん。大砲だ」と、坂本竜馬が海援隊を作って、勝海舟が海軍操練所を作り、そこから始まったのです。
 こうした優秀な人材が作った海軍が、勝つかどうか全然分からない日清戦争の黄海海戦で、やってみたら強かったんですね。日本が。黄海海戦で勝ったということが大日本帝国の始めですよ。その後、日露戦争の日本海海戦で勝利したのも、結局は日本国民の民度が高かった、つまり民度の勝負で勝ったんだと思います。日本人は、短時間で、きちんと正確なことをやる、いわば茶道の作法で戦争もやったわけです。さっと準備して、パッと撃つんですね。
 こうして自信がつくと、皆が立派な海軍だと思うようになり、伝統を守ろうとし、その相乗作用で世界一の海軍ができたんです。明治期から大東亜戦争の終わりまで、日本海軍は、軍人個人の力量、責任感、それに任務遂行能力など、すべて世界最高だったのです。その伝統を、そのまま生かしたのが海自ですね。現に水交社の伝統も、水交会にそのまま引き継いでいます。そんなわけで、私は海自五〇周年というよりも、帝国海軍の一四二年といった方が、ふさわしいと思っています。
日米同盟の“隠れた成功物語”
 次に、日米関係についての話ですが、日米同盟が最も緊密だったのは、大体一九八〇年代です。八〇年にリムパックに初めて参加したり、八一年が鈴木内閣の一〇〇〇カイリ・シーレーン防衛の話、八三年からは中曽根内閣で、不沈空母発言や三海峡防衛など、その頃の日米同盟というのは、ジェームス・アワー元ペンタゴン(米国防総省)日本部長に言わせますと、冷戦時代の最後の勝負を米国が極東で勝利したとも言うべきもので、“隠れた成功物語”と言っています。
 在日米軍司令官をはじめ、第七艦隊司令官、太平洋軍司令官など日本関係を担当した人は全部親日的で、これらは日本が持っている、いわば財産です。クリントン時代の、日本いじめがひどかった時でも、かばってくれたのはペンタゴンの連中でした。その当時の安全保障担当者が、今度はブッシュ政権に帰ってきたんです。日米間の人脈でお互いに信頼できる人がたくさんいる今が、日本にとっても、ほとんど最後のチャンスですね。
集団的自衛権は信頼関係の基礎
 海自の装備や能力は、実質上世界で第二位です。通常兵力なら、もうイギリスより強いですから。海自が、イージス艦を四隻持ってP-3C哨戒機一〇〇機体制で米海軍の第七艦隊と完全に補完し合っていく信頼関係が続く限り、日米関係は持ちますよ。軍人同士の信頼関係、特に海軍の信頼関係ががっちりして、最後の歯止めになるようであれば、日米関係は、我々の孫子の代まで、大体大丈夫ではないかと、そう思っています。
 ところで、テロ対策特措法に基づいて海自の艦艇がインド洋方面に派遣されたことで、米国は満足しています。米国民から見れば、一緒に戦争してくれると思っているわけです。ところが、いざという場合に、日本の艦艇は戦争に参加しないと分かったら、同盟関係は崩れます。海自が補給に当たっているのは、テロ対策特措法で戦闘地域外ですから、そこが戦闘地域になってきたら、補給をやめて帰ってしまう。そんなこと、できるわけないんです。だけど、そういう建前になっている。それが本当に表に現れた時は、日米同盟の危機です。
 集団的自衛権行使の問題を解決しないでやっていると、いつ何時、日米同盟がおかしくなるか分からないという危険が、いつもあるのです。「集団的自衛権はあるけれども行使できない」などと、国会答弁の惰性だけでいつまでもやって、日米関係の基礎を脅かしている。早く、集団的自衛権の行使を認めるべきです。この点が、これからの懸念材料なんです。
 それには、法制を変えればいいのです。法制といっても、解釈だけの問題ですから、この解釈を変えれば、今の海自の力と日米同盟で十分に我が国を守れますよ。(談)
岡崎久彦(おかざき ひさひこ)
1930年生まれ。
東京大学法学部中退。英ケンブリッジ大学大学院修了。
東大在学中に外交官試験合格、外務省入省。情報調査局長、サウジアラビア大使、タイ大使を歴任。
現在、岡崎研究所所長。
 
 
 
 
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