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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/05/28 読売新聞朝刊
[改定40年・安保の課題](6)中台関係 米任せ、戦略なき日本(連載)
◆「アジアの一員」重い責任
 「中国が台湾に攻め入ったら、日本はどちらにつくのか」
 先月二十五日、米コロンビア大で講演した自民党の加藤紘一・元幹事長は、中国系の学生からこう質問された。「そういう事態は起こしてはならないし、起こさないように努力する」と答えると、あいまいな回答に不満を持ったその学生は加藤氏の個人的見解を重ねて質問してきた。だが、加藤氏は同様の答えを繰り返したという。
 「中台紛争が起こらないよう必死に努力をする姿勢を示すことが重要だ」
 加藤氏はこう強調する。二十一世紀の日米安保体制にとって、「ロシアと同様、二〇一五年以降に米国と競う大国になる潜在力がある」(二〇〇〇年版米国防報告)と見られる中国との関係をどう構築するかは、最大の課題だ。
 中国を必要以上に刺激しないためにも、加藤氏が言うように中台間で武力衝突が起きた場合の対応を今の段階で日本が明確にすることはできない。ただ、戦略的準備を何らしないことに、不安を覚える防衛関係者は少なくない。
 日米防衛協力の指針(ガイドライン)関連法は、米軍を後方支援する「周辺事態」の対象に中台紛争を含めるかどうかはあいまいにしている。しかし、紛争発生時の対応についてまで、「中国を刺激すべきでないという外交判断がすべてに優先し、中台紛争の検討は意識的に避けられている」(自衛隊幹部)という。
 米国は日本同様、「台湾は中国の不可分の領土」とする中国政府の「一つの中国」政策を支持している。ただ、その一方で「台湾関係法」を制定し、台湾に長距離レーダーやミサイルなど防御兵器の供与を続けている。米国の対台湾政策は、中台紛争への対応を明言しない「戦略的あいまいさ」とともに、必要なら軍事行動を起こせる能力を堅持する「戦術的明りょうさ」が基本だ。
 ガイドラインなど日米安保の再確認作業に携わった秋山昌広・元防衛事務次官(現・米ハーバード大客員研究員)は、今月中旬、北京で開かれた日米中三か国の民間有識者による非公式安全保障対話に出席した。
 秋山氏は、中国の国防関係者が「台湾問題は中国のレジティマシー(政権の正統性)にかかわる。絶対に妥協できない」と強調するのを聞きながら、「中台間には遅かれ早かれ、何らかの危機が到来する。台湾問題は朝鮮半島以上に深刻な問題になる」と確信した。
 〈北朝鮮の脅威は、日本国民がそれを肌で感じ、日米韓三か国間や日本独自でも真剣に議論してきた。しかし、台湾問題は戦略的検討がないまま、米国頼みの状態が続いている〉
 秋山氏の最近の感想だ。
 もちろん日米両政府は中台双方に平和解決を働きかけているが、それでも武力衝突が起きた時、日本は極めて難しい選択を迫られる。仮に日本が米軍の後方支援要請を断れば、同盟関係は崩壊しかねない。
 安全保障の重点をアジアに移しつつある米国では、日本により大きな役割分担を求める空気が強まっている。同盟国との関係強化を外交政策の柱に掲げる共和党のジョージ・ブッシュ・テキサス州知事が大統領になれば、アジアの米軍兵力構成を含めた「平和維持のための重荷と負担」をめぐる議論が日米間で再燃する可能性は大きい。
 コーエン米国防長官は十日、アジア各国の駐米大使らを前に講演、「米国が中国といかなる関係を発展させても、日本を犠牲にしない。我々は日本にアジア・太平洋地域における安全保障上のアンカー(錨(いかり))であるよう求め続ける」と強調した。
 米国との同盟関係を一層強めながら、アジアの一員として自前の戦略論に基づき、この地域の平和と安定にどう貢献していくのか。日本の責任はますます重くなっている。(おわり)
 
 この連載は、政治部・内田明憲、飯塚恵子(那覇駐在)、指尾喜伸、河島光平、吉山一輝、ワシントン支局・柴田岳が担当しました。
 
 
 
 
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