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1993/12/31 読売新聞朝刊
ミサイル防空網強化 新防衛構想が固まる PKO協力も盛る/防衛庁
 
 防衛庁は三十日までに、日本の防衛政策の基本である「防衛計画の大綱」に代わる新防衛構想の具体的な策定方針を固めた。米国が弾道ミサイル対策として開発を進めている戦域ミサイル防衛(TMD)の活用を念頭に置いたミサイル防空網強化や、国連平和維持活動(PKO)などの国際貢献を新たに盛り込むのが特徴。自衛隊編成では、陸上自衛官定数を十五万人以下に削減し、事実上、ロシアを仮想敵国とする北方重視戦略を転換するとともに、陸海空三自衛隊の統合運用を進める考えだ。
 細川首相は来春にも、新防衛構想を検討する私的諮問機関を設置し、作業をスタートさせたい方針。これを受け、防衛庁は、平時の必要最小限の防衛力を保持し、有事の際は増強するという「基盤的防衛力整備」構想に、世界軍縮の進展や周辺国の不安定要因が低下した場合は、防衛力抑制を図る考え方を加味する新理念を模索している。
 具体的な防衛体制では、ミサイル対策が焦点。「大綱」が策定された昭和五十一年当時、日本周辺に中距離弾道ミサイルの脅威はなく、防空対策も航空機の侵入を対象にしていた。しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が新型ミサイル「労働(ノドン)1号」の試射に成功したにもかかわらず、対処能力が欠落しているため、新防衛構想に明記し、迎撃体制を整備することにしたものだ。
 米国が進めているTMD構想に、日本が技術協力をするかどうかは未定だが、将来的には、パトリオットミサイルよりも高高度の迎撃ミサイル「サード」などを導入する方向だ。
 PKOへの協力は、現在、自衛隊法一〇〇条の雑則の中に入っており、「雑則の業務では士気が上がらない」という意見があり、自衛隊の任務を定めた三条に盛り込み、本来任務に格上げする方針。これに伴い、新防衛構想の中でも、明確に位置付ける必要性が出てきた。(解説2面に)
 
 
 
 
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