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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1986/10/27 読売新聞朝刊
「防衛大綱」10年、転機に 「別表」見直し機運も 世論形成には一応の貢献
 
 わが国の防衛力整備の基本的指針である「防衛計画の大綱」(五十一年十月二十九日、閣議決定)が策定されて、二十九日で十年を迎える。基盤的防衛力構想を理念とする「大綱」は、左右両勢力からの非難を受けながらも、「防衛に関する世論形成に貢献した」との評価もある。同時に、今後五年間で「大綱」の防衛力水準の達成を目指す中期防衛力整備計画が今年度からスタートしたのに合わせるように、主要装備量を定めた、「大綱」別表の改定問題も浮上、また、「大綱」と前後して策定された、防衛費の対国民総生産(GNP)比一%枠も、年末の六十二年度予算編成時には、中曽根首相が、見直しについて政治判断を迫られる情勢だ。「大綱」を軸とする防衛力整備の在り方は、大きな曲がり角にさしかかっているようだ。
 ◆節目の防衛体制 「あの当時、これで十年はもつと思いましたね」。防衛計画大綱策定時の防衛庁長官である坂田道太氏(前衆院議長)は、こう述懐する。
 十年前の五十一年十月二十九日。ロッキード事件、“三木おろし”で政界は大揺れに揺れ、世間の関心はむしろこちらの方に向けられていた。だが、わが国の防衛力整備の指針が定められたという意味で、この日は、戦後政治の重要な節目となっている。それまでは、一次防(第一次防衛力整備計画)から四次防まで、三か年あるいは五か年の“買い物計画”で航空機や艦船を調達するという方式が取られ、防衛力整備の理念、あるいは目標を示すものは存在しなかった。
 「大綱」策定から十年を経たいまいえることは、第一に、政府計画として中期防衛力整備計画がスタートし、一応「大綱」水準達成の見通しがついたことだ。このため防衛庁は、軍事情勢、技術水準の動向をにらんで、新たな装備体系による防衛体制の構築に乗り出そうとしている。
 ことしの防衛白書で、主要装備量を定めた「大綱」別表について、諸外国の技術水準の動向に応じて、その内容を変更することは大綱の枠内で可能――との見解を初めて打ち出したのは、その布石といえる。防衛庁は、「いま、別表の手直しは考えていない」(栗原祐幸防衛庁長官)というが、今後の防衛力整備の最重要課題としている総合的な洋上防空体制の確立、陸・海・空自衛隊の統合運用などを実現するには別表に手をつけざるを得ない。
 「大綱の基盤的防衛力構想は間違い。この構想は、アメリカが、必要な時に、必要な場所に、必要な量の兵力を投入して日本を支援することを前提としているが、そんなことは考えられない。それに、極東ソ連軍の増強など、大綱策定時と比べて国際情勢は大きく変わっている」。自民党の椎名素夫政調副会長(外交・防衛問題担当)は、「大綱」そのものを厳しく批判する。
 その椎名氏も、「大綱は憲法みたいなものでその本体を変えることは難しい。しかし別表の手直しで実態的に防衛力整備が進められるなら、当分はそれを見守るということだ」と語る。防衛庁自身の意図はともかく、別表改定の動きが、「大綱」見直しに代わるものとしてとらえられている側面があることは否定できない。またそれが、一時期噴出した、自民党内などの「大綱」見直し論の鎮静化につながっているともいえる。
 ◆瀬戸際の一% 「大綱」策定の一週間後の五十一年十一月五日に、防衛力整備を進めるテンポとして決定された「一%枠」も、十年を経過して、撤廃の瀬戸際にある。
 防衛庁からみれば、「一%枠」の制約で防衛力整備にブレーキがかかり、「大綱水準の装備を取得するまで十三、四年とみていたが、現状では約五年遅れている」(同庁幹部)。中期防衛力整備計画の防衛費総額十八兆四千億円は、計画期間中のGNPの一・〇二%に当たり、事実上、「一%枠」に風穴をあけた格好にはなっているものの、毎年度の防衛費の目安となる閣議決定自体は依然として残っており、防衛庁にとって目の上のタンコブ的存在であることに変わりはない。
 栗原防衛庁長官は先月末から今月にかけ、竹下幹事長らニューリーダー、首相経験者、金丸信副総理など自民党の実力者を歴訪した。「訪米報告」を名目としていたが、「大綱」水準の早期達成を訴える形で、「一%枠」見直しの地ならし工作を進める狙いが込められていた。
 今年度は、「一%枠」内に収まることは確実だが、六十二年度は、経済成長が名目で五%以上の高い水準に設定されない限り、「一%枠」順守は厳しい情勢。栗原長官の実力者歴訪も、そのへんをにらんだもので、「大綱優先に大方の理解を得られた」という。しかし、この中で福田元首相は、「中曽根君は、『はじめに一%突破ありき』という姿勢では困るよ」とクギを刺し、河本敏夫氏は、「経済成長を高くすれば一%枠内に収まるじゃないか」と、持論の積極経済政策を持ち出して「一%枠」見直しに慎重な姿勢を示した。
 そこには政局への思惑も微妙に絡んでいる。こうした党内情勢のほか、野党の出方や世論の動向、さらにはアメリカの反応などを勘案して「一%枠」問題にどう取り組むか――最終的には首相の政治判断にかかっているといえる。
 「大綱」別表の改定は、「大綱」そのものの変質につながらないか。「一%枠」を見直すとすれば、その意味は何か。国民に対して、十年前の「大綱」策定の原点を踏まえたわかりやすい説明が求められている。
 (注)基盤的防衛力構想=防衛計画大綱の基になった防衛構想。核相互抑止を含む軍事均衡、米中ソの三極構造などから、軍事力で現状変更を図ることは困難になったとの情勢認識に立ち、わが国の防衛力は、特定の脅威を対象として整備するのではなく、情勢が緊迫した際の防衛態勢の中核となる基盤的なものとするとしている。この防衛力は、奇襲的侵攻など、「小規模限定侵略」に対応し得るもので、「大綱」では、独力で侵略の排除が困難な場合は、「米国からの協力をまって排除する」としている。
 一―四次防では、所要防衛力構想に立ち、防衛目標を、一段高い「本格化した限定侵略」に置いていた。
 
 
 
 
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