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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/04/26 毎日新聞朝刊
「破られたタブー」 自衛隊掃海艇派遣/中 問われる安保政策 与野党とも大揺れ
 
 「自衛隊法九九条は海外派遣を想定していない。機雷除去は交戦国の責任で行うべきだ」(後藤田元官房長官)、「自衛隊法を改正しないで派遣するのは反対だ。時間がないというのはおかしい」(小泉元厚相)。党首会談を数時間後に控えた二十三日昼――国会内で開かれていた自民党総務会では、現行法での掃海艇派遣に批判の声が相次いだ。
 その五日前の十八日。社会党の中執委では、時限立法による歯止めを条件に派遣容認論が浮上した。最終的には土井委員長の判断もあり反対姿勢を貫いたが、社会党も掃海艇派遣問題で右に左に大きく揺れた。
 自衛隊の海外派遣を長年の悲願としてきた自民党内に慎重論が根強く、「違憲」自衛隊の海外派遣など禁句に等しかった社会党で派遣論議が正面からとりあげられる様変わりぶり。「十年前なら考えられない」(宮下創平元国防部会長)どころか、半年前ですら想定されなかった両者の防衛論議の交錯は、今回の派遣問題の大きな特徴といえる。
 掃海艇派遣は自民党にとり、昨年の国連平和協力法案、今年一月の輸送機派遣決定に続いて三度目に訪れた自衛隊海外派遣のチャンスだった。これまで二回は「派遣」という形で身分を変え、特別政令で例外的措置とするなどの変則手段で乗り切ろうとしたが、武力衝突に巻き込まれるのを恐れた世論や野党を説得できず、「自衛隊をオモチャ扱いしただけ」(倉成正安全保障調査会長)に終わった。
 二度の失敗の教訓から、自民党は今回は「掃海艇問題を表に出したらまた大論争になる。腹を決めたら即実行に移さなければダメだ」(倉成氏)と政府に決断のゲタを預け、海外派遣の実績作りを最優先する構えをとった。統一地方選や国連平和維持活動(PKO)の自公民三党合意への悪影響もさることながら、あえて派遣論議に深入りしなかった背景には、「今度失敗したら自衛隊不要論につながる」(加藤六月政調会長)との深刻な危機感があった。
 社会党では統一地方選の惨敗で現実路線を模索する中、掃海艇派遣に前向きな声が上がった。十七日の国対委ではほぼ全員が容認論に傾いたが、左派の巻き返しが活発化。「自衛隊を違憲とする党の基本政策を崩すものだ」(矢田部理氏)といった“左バネ”が利き、容認論は立ち消えになった。とはいえ、党内には「非武装中立政策が結果的に自衛隊の増強を許してきた。ポスト冷戦では文民統制を強化する方法を考えるべきだ」(川崎寛治氏)などの柔軟な発想もあり、自民党の自衛隊派遣論議との接点が芽生えつつある。
 また、公明党は三月の中執委で派遣反対を確認しながら、その後も二度にわたり国対委で派遣問題を論議するなどの迷いをみせた。これをきっかけに国際貢献のため、自衛隊の「将来のあり方」を正面から検討しようという機運も出ており、市川書記長は「結論を出す際は公明党の安保政策の転換になるだろう」と言い切っている。
 一方、自民党では派遣決定を受け「今回のような海外派遣を自衛隊法で明確にうたう必要があるし、集団的自衛権の問題を掘り下げていくべきだ」(倉成氏)などの意見が出ており、自衛隊法改正や憲法見直しを求める空気が強まりそうな気配だ。また、国防族の一部には掃海艇派遣を前例に、自衛隊抜きのPKO参加論議を空洞化しようという動きも見え隠れしている。
 いずれにせよ今回の掃海艇派遣は、与野党の防衛・安保政策を根底から問い直す形になった。各党とも「国際貢献」と「歯止め」のはざまで悩みながら、新たな自衛隊の行動原理を模索し始めたようだ。
 
 
 
 
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