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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/06/27 朝日新聞朝刊
説明・検証、尽くせぬ危険(イラクと自衛隊 特措法案は問う:下)
 
 その朝、海上自衛隊の護衛艦「さわかぜ」の空気は一変した。
 テロ対策特別措置法に基づきインド洋に派遣されていた艦内で、51歳の海曹長(当時)が食堂で突然倒れ、意識不明となった。沿岸国の病院に運ばれたが、ほぼ1時間後に死亡が確認された。昨年5月8日のことだ。
 さわかぜは同年2月に佐世保を出港。海曹長はエンジン部門の担当者として、張りつめた日々を送っており、海上自衛隊は過労を理由に公務災害と認定した。同法による自衛隊派遣で初めての死者だった。
 
 海曹長が倒れた9日後、政府は自衛隊の派遣期間を半年延長する閣議決定をした。同日の衆院テロ対策特別委員会で、中谷元・防衛庁長官(当時)が、期間延長の決定理由やこれまでの活動実績について説明した。委員には「政府報告」と題した文書が配布された。
 中谷氏は「私もインド洋上で活動する自衛艦を訪問し、士気も高く立派に任務を遂行している隊員の姿をみてきた」と述べたが、隊員の死亡については触れなかった。派遣活動の重要さと延長の必要性を強調する狙いがうかがえる。
 配布された「政府報告」も、防衛庁長官が説明した原稿の写しに過ぎず、法律の規定に基づくものではない。同法が国会への報告を義務づけているのは、活動期間などを示す基本計画の決定・変更内容。それと、すべての活動終了後の実績報告だけだ。
 基本計画は半年ごと3度延長された。政府は活動実績の国会報告について「半年ごとに丁寧に説明し、資料も出している」(防衛庁幹部)というが、法律に規定があれば、国会にとっては詳細な説明を求める立場を強めることになる。
 自衛隊をPKO(国連平和維持活動)に送り出す法律では、実施期間を変更する場合、それまでの活動報告を義務づけている。テロ特措法では、「時限立法なので必要ない」(防衛庁当局者)との判断から、そうした規定は盛られなかった。イラク復興支援特別措置法案も同じだ。
 
 テロ特措法での派遣活動が、PKO派遣と比べて不透明感が漂うのは、法的な問題に加えて、「テロ掃討作戦」という活動の性格が大きい。政府は「米軍の作戦に影響を与える」「自衛官に危害が加えられる」との二つの理由によって、補給対象の艦船名など詳細を明らかにしていない。
 そもそも自衛隊による燃料補給がインド洋での作戦に必要な量のうち、どの程度を占めるかについて防衛庁幹部も米側から詳しくは知らされておらず、「全体像は米軍しか分からない」という。
 
 一方、国会は派遣後の活動について自ら評価・検証をしようと試みてきただろうか。インド洋派遣から約20カ月。衆参両院とも議員団による現地視察はなく、法案審議の際の高い関心が、派遣後も続いているようには見えない。これでは、政府の自衛隊運用の妥当性を厳しく点検できるかどうかは疑わしい。
 政府の説明責任と、国会の評価・検証責任――。遠く離れた危険地域に自衛隊を派遣するというのであれば、この二つが十分に果たされない限り、政治が軍事組織を統制するという原則が危うくなってくる。
(佐藤和雄)
 
 
 
 
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