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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2003/06/26 朝日新聞朝刊
「なぜ」見えず、役割拡大(イラクと自衛隊 特措法案は問う:中)
 
 今月初旬、佐世保を本拠地とする海上自衛隊の護衛艦部隊は、同じ海自の潜水艦を「敵」に見立てた対潜戦の訓練に臨んだ。参加した幹部の一人は、その技量を「下手だった」と振り返る。
 無理もない事情があった。その部隊は、テロ特措法に基づいてインド洋に出動したしわ寄せで、実物の潜水艦と訓練するのは1年ぶりだったのだ。同時多発テロが起きるまでは年に2、3回は実施していたという。
 「これで国土防衛の任務が全うできるのか。実は皆、不安に思っている」とその幹部は話す。
 
 92年に国連平和維持活動(PKO)協力法が成立し、自衛隊が初めてカンボジアに派遣されてから11年。自衛隊の役割は国防一辺倒から、国外に出て国際秩序の維持にも当たる「多目的」へと、大きく転換した。
 イラクに派遣となれば治安状態がなお不安定なため、「活動の中身は、従来の平和維持より平和構築に近いものになる」(陸上自衛隊幹部)との指摘もある。
 日本の役割拡大は米国の要望でもあった。00年に現在のアーミテージ国務副長官が中心となってまとめた、いわゆるアーミテージ・リポートは日米同盟関係が「防衛負担の分かち合いから、(秩序形成の)力の共有へと発展する時を迎えた」と明記した。今月上旬来日した同氏は「リポートの考えはほとんど実現した」と満足げに語った。
 
 しかし防衛庁・自衛隊関係者の顔色はさえない。表向きは「任務を淡々とこなす」と話すが、割り切れない思いもあるようだ。政治の決断、自衛隊の編成など、任務の拡大に必要な条件が必ずしも整っていないからだ。
 国土防衛に悪影響が出かねないという懸念のほか、そもそも「なぜイラクなのか」という疑問も、なお聞かれる。イラク復興支援特別措置法案は「我が国として主体的に」と強調するが、小泉首相は国会でも「国連決議に基づく要請」という程度の説明しかしない。
 実際には「米国との同盟に賭けた」(陸自幹部)ことは、関係者の間で当然のこととして語られている。米側には「ブッシュ政権は日本が支持しているという証明が欲しいのだ」(モチヅキ・ジョージワシントン大教授)という指摘もある。
 一部の部隊の負担はかなり重くなっており「もう勘弁してほしい」という声すら聞かれる。
 
 5月末、シンガポールでアジアや欧米の国防相と安保政策の専門家が集まって開かれた会議では、日本の軍事力をめぐって先制攻撃や核武装の可能性が取りざたされた。防衛庁幹部や外務省OBが「日本は専守防衛の原則を持っている」などと否定したが発言者の納得は得られなかった。
 一方、各国代表と会談した防衛庁首脳は「日本が集団的自衛権の行使を制限しているということなんて、ほとんど知られていない」と驚きを隠さなかった。
 自衛隊の近代化と役割の拡大が進む中、海外では「北朝鮮危機に直面し、軍事力増強に走る日本」というイメージが独り歩きしている。
 日本は自衛隊の活動に対する一連の「規制緩和」を通じて、一体何を目指しているのか――。安全保障戦略の根幹が依然はっきりしないまま、新たな海外派遣に向けた動きが本格化した。
(加藤洋一)
 
 
 
 
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