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2003/05/29 朝日新聞朝刊
治安出動 武器の基準、霧の中(「日本有事」と自衛隊:中)
2月の寒い夜、滋賀県の駐屯地で、陸上自衛隊が非公開で原発警備の訓練をした。
自衛官が扮する武装工作員約10人が、黒いウエットスーツ姿で琵琶湖から岸に上がった。ぬれた体で自動小銃を構え、サーチライトをかいくぐる。駐屯地へ着くと、ロケット砲を構えた。原発に見立てた格納庫を攻撃したという想定だ。
○原発守る戦車
「原発」のそばに配備されていた74式戦車が、反撃として空砲を撃った。「工作員を殱滅(せんめつ)」という判定が出て、訓練は終わった。
政府は武装工作員が上陸するような事態には、警察が対処できない場合に自衛隊が出動する「治安出動」で対応する考えだ。その際の自衛隊の武器使用は警察官職務執行法が準用され、相手の鎮圧に「合理的に必要」な範囲に限られる。
ある制服組幹部は「それで工作員の攻撃を止められるか。逆に我々がやられないか」と言い、戦車を使った訓練は現場の声を防衛庁にあげるのが目的だったという。
自衛隊と警察は00年末、武装工作員の侵入対処などで協力することを合意。昨年秋以降、15基の原発を抱える福井を含め、6道府県で共同図上演習をしている。
工作員侵入などテロ行為への対処は「一義的に警察の責任」と主張してきた警察庁内でも、「警察力で対処しきれない事態もあり得る」として、自衛隊との連携が必要だ、という雰囲気が広がっている。
○初の特殊部隊
自衛隊は独自に戦う態勢も整えている。
96年、北朝鮮の武装工作員ら26人が韓国に上陸した事件が一つのきっかけだ。韓国軍は50日にわたり約6万人を投入して包囲したが、工作員によって12人を殺された。
昨年9月、陸自はハワイの米陸軍の市街地戦闘訓練場で、市街戦を想定した訓練を初めて米軍と実施した。陸自隊員が建物に忍び寄り、ドアから突入、小銃を撃った。
来春には、陸自で初めての特殊作戦部隊が300人規模で千葉県習志野市にできる。命中率の高い対人狙撃銃も来年度、部隊配備が始まる。
もし侵略が外国による組織的で計画的なものと認められれば、首相は防衛出動を命令できる。
対ゲリラ作戦を担当する自衛官は「(そうなれば)武器使用の制限がなくなり、対処しやすくなる。工作員が少人数でも上陸すれば、世論は防衛出動を求めるのではないか」と言う。
武力攻撃事態対処法案には、テロ対策などをめぐる「警察、海上保安庁と自衛隊の連携強化」が盛り込まれた。テロ対策は民主党が求める基本法でも柱の一つだ。
治安維持も担い始めた自衛隊。「抑えながら使う武力」の基準は、まだ定まっていない。
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