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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/09/17 朝日新聞朝刊
自衛隊に専門の部隊を PKO10年(社説)
 
 自衛隊の音楽隊が演奏する「軍艦マーチ」と、市民団体の「海外派兵反対」のシュプレヒコールの中を、34人の陸上自衛隊員を乗せた自衛艦がカンボジアに向けて出発した。92年9月17日のことだ。
 日本が国連の平和維持活動(PKO)に参加して10年、自衛隊の海外での活動に対する国民の評価は大きく変わった。
 「金だけでなく人的貢献もすべきだ」という声が日本に向けられるきっかけは、90年夏のイラクによるクウェート侵攻だった。多国籍軍への130億ドルもの財政支援は国際社会で評価されなかった。
 多国籍軍には参加できない。しかしPKOなら、ということになったのだが、国民の間には軍事行動を目的とする海外派兵につながる恐れがある、と反対する人たちが6割近くもいた。
●評価につながった実績
 PKO活動とはどんなものか、日本ではよく理解されていなかった。軍事力で敵を制圧することが目的の戦争行為とは違う。国連の枠内の任務であり、自衛隊は勝手な行動をできない。そうした説明を聞いても、国民の不安はぬぐえなかった。
 それまで、武器を持った自衛隊組織が海外に出かけることを経験していないのだ。先の戦争の記憶をよみがえらせ、派遣をためらったのは、やむをえなかった。
 カンボジアに始まるこの10年間、日本政府はPKO協力法に基づいて合計16のPKOや人道的国際救援活動、選挙監視に参加した。地方自治体職員や警察官、そして民間人も含め約3500人を派遣した。このうち約3200人が自衛隊員だった。
 道路の補修や橋の建設、食料輸送、難民救援などで自衛隊員は実績を積んだ。いま派遣中の東ティモールでは隊員が休日を生かして孤児院を訪問し、音楽演奏会や日本語教室などを開いて喜ばれている。
 国内の世論には変化が起きた。政府の世論調査では、自衛隊のPKO参加に肯定的な回答がこの数年間、約8割を維持している。逆に「参加すべきでない」という回答は2%前後に下がった。
●変わってきたPKO
 このところPKOのありようも大きく変わった。かつては武力紛争と言えば国家と国家の対立だった。国連の役目は双方に矛を収めさせ、停戦が破られないよう監視する、文字通りの「平和維持」だった。
 冷戦後は内戦が増えた。激しい対立で国土は荒れ、人々は難民となって脱出する。コソボや東ティモールのように統治機構が消滅する例もある。国連は平和維持だけでなく、国造りを一から手伝う「平和構築」も担わなくてはならなくなった。
 行政や立法、司法などの国家組織作り、社会のインフラ整備、教育や保健などの住民サービスも必要だ。日常の治安を守るには文民警察官も欠かせない。各国から派遣される専門家や一般公務員、NGOなど民間人の役割は大きくなっている。
 紛争を収める軍事組織と、国造りを担う文民集団が協力してこそ、平和で安定した国を造ることができる。日本の果たせる領域は確実に増しており、そのための体制作りが次の課題となっている。
 私たちは95年の社説特集の中で、自衛隊ではなく、志願者中心の平和支援隊をつくり、PKOに派遣することを提案した。自衛隊の任務が国土防衛であることと、朝鮮の植民地支配や中国などを軍靴で踏みにじった日本の過去を考え、その運用はできるだけ抑制的にすべきだと考えたためだ。
 その主張には多くの賛同もあったし、北欧諸国などの例をみれば実現性もあった。しかし、実際にはこの10年間、自衛隊がPKO活動の主力を担い、それが定着してきたという事実を否定できない。
 そうしたことを踏まえ、いまはむしろ、自衛隊の一部をPKOの変化に対応して改組する方が望ましいと考える。派遣される隊員には、PKOの知識や武器の使い方、英語など、一定の研修や訓練が必要だ。
 ならば、自衛隊の中にPKOを専門とする待機部隊のようなものを設置してはどうか。民間組織や一般公務員との連携、共同作業のあり方を考えるためでもある。
 現在、PKO活動は自衛隊法100条に列挙された追加的な任務のひとつとされ、国防という本来の任務の遂行に支障をきたさない範囲で派遣できるとされている。
 しかし、PKOはもはや片手間仕事ではない。国際社会の平和構築に積極的に貢献する姿勢を示すためにも、自衛隊法を見直し、国土防衛と並ぶ任務であることを明記することは検討に値する。
●アジアの訓練センターを
 国際情勢の変化に合わせて、軍事力としての自衛隊は縮小していくべきだ、と私たちは考えている。自衛隊の一部をPKO専門の待機部隊にすれば、実質的な軍縮にもつながろう。
 一方、公務員や民間人については、いざというときに機敏に対応できるよう、希望者の登録制度を拡充するとともに、訓練センターを設置する必要がある。訓練センターに、日本人だけでなくアジア各国からの希望者を受け入れ、内外に幅広いネットワークを作りたいものである。
 大切なのは、なぜPKOに参加するのかということだ。資源が少なく国土の狭い日本は、世界が平和であるがゆえに貿易立国が可能になり、経済大国へ成長できた。平和の恩恵を受ける者が、平和の維持に貢献することは当然ではないか。
 これまでは、国連からの要請を理由に参加してきた。そろそろ、受け身のPKOから卒業し、憲法の枠内で、主体的に平和を創(つく)る発想を持つべき時である。
 
 
 
 
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