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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/05/10 朝日新聞朝刊
戦闘では役立たない有事法案 田岡俊次(記者は考える)
 
 有事法制について政府は従来、「日本が武力攻撃を受けた際に自衛隊が超法規的な行動をとらないよう、平時に冷静に検討し、法令の枠をはめておくことが必要」と説明してきた。だが、現実的に戦闘を考えれば、今国会に上程された自衛隊法改正案、武力攻撃事態法案には欠落した部分が多い。それを指摘すると、内閣官房と防衛庁の幹部は「戦闘行動はこの法案の範囲外」と言う。それなら何のための有事法制か、根本が怪しくなっている。
 
 今回の自衛隊法改正案では、約20の法律の適用除外などを求め、自衛隊の行動への支障を除こうとする。たとえば道路法では道路工事には道路管理者の承認が必要だが、改正案では自衛隊が破損している道路を通行するための応急工事は承認が不要、とする。だが、道路の破壊を許す条文はない。外敵の侵攻に対して橋を落としたり、がけを崩したり、地雷を埋めて進撃を妨害することは普通の戦術だ。
 また、自衛隊は家屋を使用し、「形状の変更」もできるようになるが、敵が占拠した家屋に砲、爆撃を加えて破壊することは許されていない。自衛隊員の戦死者の埋葬には市町村長の埋葬許可は不要、とすることにしているが、敵の死体には言及していない。
 陸上自衛隊の医官(軍医)は連隊レベル以上にしかおらず、他国でも前線では衛生兵がモルヒネや神経ガスの解毒剤を注射したり、動脈を縛って止血するなど診療行為を行うが、今回の自衛隊法改正では医師法の適用除外はない、などだ。
 
 「戦闘時の行動は刑法の正当行為、緊急避難に当たるから、そうした規定はなくてもよい」と内閣官房、防衛庁の担当幹部は言う。「正当行為」とは医師の手術が傷害罪に当たらないような例。「緊急避難」は自他の生命、身体、自由、財産への危険を避けるための行為は、避けようとした害の程度を超えない限り罰しないという規定だ。
 この論法だと、多分、本土防衛戦での自衛隊の行動はほぼすべてこれに該当するから、運転免許証の更新期間延長まで、細々と有事法制を決めるのは無意味に近い。航空・ミサイル攻撃や特殊部隊に対し、戦闘地域とそうでない地域を分けるのは非現実的で、今回の法制が役に立つのは攻撃が始まる前、その「おそれ」や「予測」の段階だけで、現実には外国での米軍の作戦を支援する際に有効だ。
 日本有事の際、沖縄戦のような民衆の惨禍を局限しようとすれば、自衛隊がやってよいことを詳細に定めるより、戦闘時でも決してやってはならないことや、上部の特別の許可なしにしてはならないこと(民間物資の収用、民間人の徴用など)を決めておくしか手はないと思われる。
(社会部)
 
 
 
 
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