2001/10/21 朝日新聞朝刊
補給・輸送活動とは?(Q&A テロ特措法案)
Q 今回のテロ対策特別措置法案に基づく自衛隊の活動は、補給・輸送が中心になるって聞いたけど、具体的にはどんな内容になるのかな。
A 大きく分けて、米軍の後方支援と、難民救援のための物資輸送の二つがある。米軍支援は法成立後に基本計画を作る中で、米軍が何を必要とするか調べて決める。
今のところ、インド洋に展開している米艦船に対し、燃料を洋上補給するのが主な活動になりそうだ。米軍拠点の一つとなっている英領ディエゴガルシア島まで燃料や食料、水を輸送することも想定される。
Q 洋上補給って。
A タンクに燃料を積んだ海上自衛隊の補給艦が、海の上で米艦船に給油ホースをつなぎ、燃料を与えることだ。岸壁に係留して行う給油よりも、はるかに効率的に補給作業が進む。海上自衛隊と米海軍の共同訓練では、これまでもしばしば洋上補給をこなしている。
Q 同じ米軍への後方支援でも、周辺事態法に基づく補給・輸送とはどこが違うのだろう。
A 周辺事態法は日本の「周辺地域」で紛争が起きた時に米軍支援を行う法律だ。後方支援活動のうち、輸送だけは戦闘地域でない公海上でできるけど、それ以外の補給や修理・整備などは、日本の領域内で行うとされている。
一方、特措法案では、戦闘行為が行われていない条件で、公海上に加えて他国の領域内でもその国の同意が得られれば活動できる。このため、外国での陸上輸送なども可能になってくる。
Q 難民支援の物資輸送は、外国での陸上輸送が考えられるの。
A パキスタンにいるアフガニスタン難民向けの援助物資の輸送が検討されている。艦船以外に航空自衛隊の輸送機を使い、まずはイスラマバードやカラチまで運ぶことになるだろう。
ただパキスタン国内は治安の悪化が伝えられるし、パキスタン側からの要請もない。物資はパキスタン政府が難民キャンプまで輸送し、陸上自衛隊が輸送にあたることは、今のところなさそうだね。
Q 衆院で採決される前に、与党の法案修正で陸上での武器・弾薬の輸送が除外されたけど。
A 与党内から「需要もなく、他国で武器輸送をした実績もない」との声が出て修正された。確かに陸上は海上より危険度は高いけど、民主党を賛成に引き込むための駆け引きに使われた面もあったんじゃないかな。
Q 小泉首相は何度も「(積み荷に)武器・弾薬があるか、いちいち確かめられるのか」と答弁していたよね。
A この言い方だと、海上輸送はできる武器・弾薬を、陸路では運べないことの説明がつかなくなるよね。いずれにしろ、米軍は自ら使う武器はたとえ一時的にでも他国の手に預けたりはしない、という見方も強い。実際に要請があるかどうかはわからないよ。
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