2000/12/15 朝日新聞夕刊
次期防は総額横ばい25兆円、空中給油機盛る 閣議決定
政府は十五日、二〇〇一年度から五年間の防衛力整備の指針となる中期防衛力整備計画(次期防)を、首相官邸で開いた安全保障会議(議長・森喜朗首相)と閣議で決めた。情報技術(IT)進展への対応、災害派遣能力の強化などを重点に据えながら、防衛力の合理化を進めていく方針を示した。主な正面装備では、大型のヘリコプター搭載護衛艦の建造、新型戦車の開発などのほか、公明党との調整が難航した空中給油機の導入も盛り込んだ。総額は二十五兆千六百億円で、期間中の年平均伸び率は〇・七%。厳しい財政事情を反映し、今年度までの現・中期防の当初総額とほぼ同程度に抑制した。(2面に解説)
次期防は、防衛力の合理化、コンパクト化をうたった現在の防衛大綱(一九九五年策定)のもとで、二回目の五カ年計画となる。
総額のうち通常の予算編成ができる額は、五年間で二十五兆百億円以内とされた。残りの千五百億円は、災害など予測できない事態の際、安保会議の承認で使用できる。現・中期防の当初額は二十五兆千五百億円(九七年に二十四兆二千三百億円に減額修正)だ。
戦車や護衛艦など正面装備の契約額では、総額のうち四兆円を計上した。
海上自衛隊は五、〇〇〇トン級ヘリコプター搭載護衛艦の退役に伴い、倍以上の規模の一三、五〇〇トン型の大型ヘリ搭載艦二隻を整備する。船体の前後に飛行甲板を持ち、哨戒ヘリと輸送ヘリ計四機の搭載が可能だ。七、七〇〇トン型のミサイル護衛艦二隻も建造する。
航空自衛隊では、公明党が「専守防衛」の原則を超える恐れがあるとして慎重だった空中給油機の導入が、要望通り四機盛り込まれた。輸送機として国際貢献で利用できることも強調している。ただ、公明党に配慮して、二〇〇一年度予算案では購入を見送る。
陸上自衛隊では、74式戦車が大量に退役するため、現在の主力の90式戦車を小型・軽量化した新型戦車の開発を目指す。空自の輸送機C1と海自の対潜哨戒機P3Cの後継機は、国産開発を視野に研究する。その際、機体の一部を共用化することで経費節減を目指す。
日米で共同技術研究をする戦域ミサイル防衛(TMD)は「技術的な実現可能性を検討し、必要な措置を講ずる」とした。
全体の重点策のうち、IT化への対応では、コンピューターに侵入しようとするサイバーテロ対策や、中央から地方部隊まで情報を共有するシステムの強化などを目指す。ゲリラによる攻撃や、核・生物・化学兵器(NBC)への対処能力の向上も図る。
災害対策では、初動態勢を重視。災害が起きた場合にすぐに派遣できる即応部隊を指定するほか、予備自衛官も活用するとした。
■中期防衛力整備計画骨子■
【基本方針】
●情報技術(IT)進展への対応
●災害即応部隊を指定
●ゲリラ攻撃、核・生物・化学兵器(NBC)攻撃への対処
●部隊改編など合理化、コンパクト化
【正面装備】
●大型のヘリコプター搭載護衛艦、ミサイル護衛艦各2隻の建造
●空中給油機を4機導入
●新型戦車の開発
●輸送機C1と対潜哨戒機P3Cの後継機開発
●戦域ミサイル防衛(TMD)の日米共同技術研究推進
■中期防衛力整備計画の主要な装備■
(金額は防衛庁が公表した見積額)
【陸上自衛隊】 |
数量 |
金額 |
戦車 |
91両 |
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火砲 |
47両 |
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多連装ロケットシステム |
18両 |
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装甲車 |
129両 |
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戦闘ヘリコプター |
10機 |
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輸送ヘリコプター (CH47JA) |
7機 |
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地対空誘導弾(ホーク)改善用装備品 |
0.25個群 |
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新中距離地対空誘導弾 |
1.25個群 |
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新戦車の開発 |
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500億円 |
【海上自衛隊】 |
護衛艦 |
5隻 |
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うちミサイル護衛艦 |
2隻 |
2800億円 |
うちヘリコプター搭載護衛艦 |
2隻 |
1900億円 |
潜水艦 |
5隻 |
|
その他 |
15隻 |
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哨戒ヘリコプター(SH60J、同改) |
39機 |
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新掃海・輸送ヘリコプター |
2機 |
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哨戒機(P3C)後継機と輸送機(C1)の後継機開発 |
|
3400億円 |
=空自= |
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【航空自衛隊】 |
要撃戦闘機(F15) 近代化改修 |
12機 |
350億円 |
支援戦闘機(F2) |
47機 |
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輸送ヘリコプター(CH47J) |
12機 |
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空中給油機 |
4機 |
900億円 |
【IT関連など】 |
自動警戒管制組織(バッジシステム)の近代化 |
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250億円 |
防衛情報通信基盤(DII)の整備 |
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250億円 |
コンピューターシステム共通運用基盤(COE)の整備 |
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50億円 |
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