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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/11/08 朝日新聞朝刊
「集団的自衛」議論の誤解 田岡俊次(私の見方)
 
 民主党の鳩山由紀夫代表が十月十五日のテレビ朝日「サンデー・プロジェクト」で「憲法を改正し集団的自衛権を認めるべきだ」と述べて以来、集団的自衛論議がさかんだ。もちろんこれを言うのは鳩山氏が最初ではない。米国の“知日派”論客や日本の親米派には、以前から「日本周辺有事の際、米軍と共同行動を取れるよう集団的自衛権を認めるべし」との論が強い。
 だが、そもそも韓国や台湾を守るための米軍の作戦に協力することが、日本にとって「集団的自衛」に当たるか否か、という論議はほとんどないようだ。集団的自衛は本来もっぱら同盟国間の関係であり、日米安全保障条約が「日本の施政の下にある領域」への武力攻撃に対し「共通の危険に対処するよう行動する」と定めるように、米国の施政権下にあるグアム、ハワイや米本土が攻撃された際、日本が共同行動を取るのなら集団的自衛である。
 ところが韓国は日本の同盟国ではないし、台湾にいたっては独立を自ら宣言してもいない。韓国は米国の同盟国だから、米軍が韓国防衛のために戦うことは、今日その可能性は低くなったとはいえ集団的自衛だが、日本が韓国を守るのは集団的自衛にはまず当たるまい。また万一、日本に被害が及ぶ場合に戦うなら個別的自衛だ。
 集団的自衛を認めても、同盟国の軍隊がどこで行動しても援助する義務があるわけではない。仮にPKOで海外に派遣された自衛隊の部隊が紛争に巻き込まれても、日本の領域ではない以上、米国が助ける義務はもちろんない。他の同盟国間でも同様だ。助けるとしても、それは集団的自衛ではなく、単なる武力行使だろう。
 仮に憲法を改正して、それに、集団的自衛を明記したところで、それによって日米が「周辺事態」で共同行動を取れるわけではなく、それをするためには海外での武力行使の自由を確保せねばなるまい。
 当然、日米安全保障条約の改定も必要となろうが、相互主義の原則に立つ限り、日本が米軍の海外での行動を支援する条項を入れるなら、米国も自衛隊(憲法改正後なら日本軍隊)の海外での行動を支援せざるをえまい。そんな危険な条約を米国が認めるとは考えにくい。
 仮に中国と台湾の間で将来紛争が起きたとし、米国が台湾支援に出た場合には、日本がそれを支援するのは一層難しい。米国自身が台湾独立を認める姿勢を示さず、あいまいな政策を取っている以上、他国の内戦への介入を米国も集団的自衛と主張できないからだ。日米が台湾を軍事的に支援するには日本の憲法改正だけでなく、台湾が独立宣言をし、日米がそれを承認し、両国が台湾と軍事同盟を結ぶ、という手順が必要だが、その可能性は極めて低い。
 「集団的自衛」論は米国側からの「米国は日本を守る義務があるのに日本は米国を守る義務を負わないのは不公平」という片務性説から発した。だがこれは日本側だけが基地提供義務を負い、巨額の補助金まで支給していることを忘れた自己中心的な説だ。社宅に住み、給料をもらいながら「働くのはオレばかり」と苦情を言う者に似ている。真に双務的にするなら、米国領土への攻撃に共同対処する代わりに、自衛隊基地を米国に置き、維持費は向こう持ち、となる理屈だ。片務性説には毅然(きぜん)として反論すべきなのだ。
(編集委員)
 
 
 
 
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