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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/10/03 朝日新聞朝刊
人かカネか、試行錯誤 湾岸−東ティモール 日本の国際貢献
 
 インドネシアからの独立を住民が選んだ直後から、独立反対派民兵らの暴動で騒乱状態に陥った東ティモール。治安回復のためにオーストラリアを中心とした多国籍軍が現地に展開する中、改めて日本の国際貢献のありかたが問われている。不戦を誓った憲法九条との絡みから、日本は多国籍軍には参加できない。憲法を変えて人的貢献の枠を拡大するのか、現行の憲法の枠内でできることに知恵を絞るのか。九年前の湾岸戦争以来、日本はこの岐路に立たされ続けている。
(政治部・古川伝)
○憲法との兼ね合い
 冷戦が終わってからの主な国際紛争と日本のかかわり方は表の通り。国際部隊の形態や武力行使を裏付ける国連決議の有無などをポイントに整理すると、日本は憲法の制約を判断基準に、カネですませたり人を出したり、試行錯誤の道を歩んできた。
 日本の国際貢献論議が本格化したのは、一九九〇年八月、イラクがクウェートに侵攻して始まる湾岸危機・戦争からだ。政府は多国籍軍への支援を可能にするため、国連平和協力法案を提出した。
 当時、自民党の小沢一郎幹事長(現自由党党首)は「日本が国際社会で孤立しないために」と主張したが、急ごしらえの法案は憲法の平和主義との兼ね合いが整理されず、国会答弁が迷走。自民党内でさえ慎重論が強く、廃案になった。結局、日本は多国籍軍に百三十億ドルの財政支援をしたが、国際社会の評価は低かった。
 それでも、この時の議論が九二年六月の国連平和維持活動(PKO)協力法の制定につながる。内戦が終結したカンボジアの和平プロセスに加わる形で、自衛隊派遣が実現した。PKO自体は成功したが、文民警察官らの殺傷事件もあり、危険と背中合わせであることを思い知らされた。
 九三年に非自民で発足した細川政権はPKOなどに積極的に貢献することで合意。九四年の自民、社会、さきがけの連立政権もシリア・ゴラン高原などへの自衛隊派遣を決めるなど自衛隊派遣は常態化してきた。
 しかし、今年三月に北大西洋条約機構(NATO)が人道介入を名目に空爆に踏み切ったユーゴスラビア・コソボ紛争で、日本は再び頭を抱える。政府は空爆について「やむを得ず取られた措置と理解する」という見解で、難民帰還や復興など二億ドルの資金拠出にとどめた。空爆が国連安全保障理事会の決議抜きで行われ、国際法上、正当かどうか疑問が残ったため、政府としても明確な空爆支持には踏み切れなかった。
○日本の「守備範囲」
 今度の東ティモールはアジアの一角であり、日本はインドネシアの最大の援助国で、スハルト前大統領を長年経済的に支えてきた経緯がある。日本政府はアジアで起きた問題にどれだけ責任を果たせるのかという問いを突きつけられている。
 カンボジア以来七年ぶりに、日本政府は住民投票が円滑に実施されるよう文民警察官三人を派遣した。しかし、住民投票後の騒乱状態で、インドネシア国軍が治安維持の責任を果たせなくなり、国連安保理は多国籍軍の派遣を決議した。政府の途上国援助(ODA)見直しなどを示唆して多国籍軍を受け入れるよう圧力をかける欧米諸国とは対照的に、日本は「友人」としてインドネシアを説得する姿勢に徹した。
 さらに、多国籍軍にどう貢献するかについては、最初から自衛隊の参加は議論されなかった。PKO協力法が多国籍軍への人的貢献を想定していないためだ。そして、多国籍軍に参加する意思はあっても財政的に厳しい国々を支援するための資金拠出を表明した。
 そればかりではない。東ティモール問題は、平和維持軍(PKF)凍結解除からPKO五原則の見直しや多国籍軍支援まで、休眠状態だった問題に再び火をつけた。自民、自由、公明の政策協議ではPKF本体業務の凍結解除や多国籍軍への後方支援に前向きな方向で合意した。武器使用などを厳しく制限したPKO参加五原則を、憲法論議と併せて見直すべきだとの声も出ている。
○遅れた戦争の清算
 湾岸戦争以後の国際貢献をめぐる議論は、振り返ってみると結局、憲法論だった。憲法の平和主義は、侵略戦争の反省から海外での武力行使を禁じ、そのことが平和を保つという発想だった。そこには自らが紛争地にでかけて平和をつくり出すという事態は想定されていなかった。
 冷戦終結後、各地で紛争が多発し、国際社会が平和維持活動を必要とする時代が訪れ、日本にも大きな役割が期待されだしたとき、日本はまだ、過去の清算を終えていなかった。日本は侵略した国々に対しての謝罪を明確にしてこず、首相らが一歩踏み込んだ反省の言葉を述べても、それを打ち消す政治家の発言も繰り返された。
 もし、日本の政治家が、植民地支配や侵略戦争の事実を正当化したり、あるいは否定したりする発言を繰り返さなかったらどうだったろう。日本の国際貢献への取り組みは国内外の世論の広い支持を得て、比較的スムーズに進んでいたかもしれない。
 今回の東ティモールでは湾岸戦争の時のような「日本はカネだけか」の外圧はそれほど目立っていない。外務省のある幹部は「アジアの国々の中にはそもそも自衛隊が海外に出ることへの警戒感が底流にあるからだ」と言う。憲法論議だけでなく、近隣諸国が日本に対して抱くこうした警戒感を解消することも、日本にとって大きな課題だ。
 堂々と国際貢献していくためには、戦後処理であいまいにしてきた部分と正面から向き合うことを避けては通れない。
<日本の主な国際貢献>
  湾岸戦争(1991年) カンボジア(1992〜93年)
国際部隊の形態 多国籍軍 PKO
国連決議
武力行使 ×
地理的関係 中東 アジア
日本の貢献策 カネ(130億ドル) 人(自衛隊員600人、文民警官75人など)
  コソボ(1999年) 東ティモール(1999年)
国際部隊の形態 NATO 多国籍軍
国連決議 ×
武力行使
地理的関係 東欧 アジア
日本の貢献策 カネ(2億ドル) カネ人(?)
 
 
 
 
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