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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1999/05/25 朝日新聞朝刊
ガイドライン法成立 日米安保、アジア太平洋も視野
 
 新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法は二十四日午後、参院の特別委員会と本会議で、自民、自由、公明三党などの賛成多数で可決、成立した。日米両国が「安保共同宣言」でガイドラインの見直しをうたってから約三年で法整備が実現した。日本の周辺で起きる武力紛争などの「周辺事態」で、日本が米軍を支援する枠組みが整い、日米安保体制は、アジア太平洋地域を視野に入れた新たな段階に入る。関連法審議では、自民、自由、公明三党の協力の枠組みがつくられ、政府案が修正されたが、「周辺」の範囲や自衛隊出動の国会承認の基準などはあいまいなままだ。(3面に「時時刻刻」、6面に「周辺事態法全文」、2・7・30・31面に関係記事)
 関連法は一九九七年に日米が共同発表した新ガイドラインに基づく。旧ガイドラインは日本への直接攻撃に重点を置いていたが、新ガイドラインは米軍がアジア太平洋地域に影響力を保ち、日本が支援する関係を築くことで地域紛争を抑止することを狙っている。
 成立した関連法は「周辺事態法」「改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)」「改正自衛隊法」。自自公三党が衆院の段階で(1)後方地域支援など自衛隊の活動について原則事前、緊急時事後の国会承認規定を盛り込む(2)周辺事態の定義に「そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」との例示を挿入、などと修正。自由、公明両党で調整が難航した船舶検査活動は削除された。
 ただ、国会承認が事後となる「緊急時」はどんな場合か▽「周辺事態」の範囲はどこまでか▽自治体や民間はどこまで協力を求められるのか、などの疑問は解消されず、政府の判断にゆだねられた。
 周辺事態法は公布後三カ月以内に施行される。各省庁はこれに伴う政省令の改正作業に入る。
 
 ガイドライン関連法は参院本会議で二十四日午後六時過ぎ、自民、自由、公明などの賛成で可決、成立した。周辺事態法は自民、自由、公明など賛成一四二、反対九七▽改定日米物品役務相互提供協定は自民、自由、公明、民主・新緑風会など賛成一九九、反対四〇▽改正自衛隊法は自民、自由、公明、民主・新緑風会など賛成二〇一、反対三九。民主党・新緑風会の松田岩夫氏が周辺事態法で賛成に回ったほか、公明党の高野博師、加藤修一両氏が欠席、参議院の会、二院クラブ・自由連合は所属議員の対応が割れた。
○国会承認・自治体協力拒否 基準、なお不透明 周辺事態対応
 近くの国で何らかの事態が起き、米国が武力行使の動きを見せた――。そのとき日本政府はどう動くか。成立したガイドライン関連法に従って、周辺事態への対応を予測してみた。
 まず、在外の大使館などが情報を収集する。日米両国の関係者が様々なレベルで協議する。そのうえで、米軍の要請を踏まえた基本計画の策定作業が始まる。政府の安全保障会議では、首相が基本計画案をはかり、日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態かどうかの判断や協力内容を詰める。基本計画は閣議で決まり、国会に報告。計画を変更する際の国会報告も義務付けられている。
 周辺事態法で新たに自衛隊の任務とされた後方地域支援と捜索救助の二つの活動は、出動の可否について国会承認を得なければならない。出動できる範囲は明確でないが、政府は「アジア太平洋地域を超えない」としている。国会承認を得たあとで自衛隊が出動し、活動するのが原則。ただ、緊急時にはまず出動し、あとで国会承認を求めることもできる。緊急時の定義は不明確なままで、政府の判断にゆだねられている。衆参両院の承認が必要となり、一院でも不承認の場合は活動を終える。
 後方地域支援と捜索救助の活動に入る前に、防衛庁長官が戦闘状況を判断し、具体的な実施区域を指定する。これには首相の承認が必要だ。区域は固定せず、自衛隊のレーダーなどで情報収集にあたり、危険が予測される場合は活動を中止し、区域を変更する。
 ただ、人員や物資の輸送を除く大半の後方地域支援(修理・整備や給水・給油、医療の提供など)は、日本国内で実施する。
 もしも日本が本格的に他国から攻撃を受ける事態に発展すれば、周辺事態法ではなく、自衛隊法の防衛出動など別の法律に基づいて対応する。邦人救出のための自衛隊の航空機や艦船の派遣、掃海艇による機雷除去、大量の避難民への対応、自治体・民間の協力などは、国会承認は必要ない。
 協力を求められた自治体の首長は、正当な理由があれば拒否できるが、求めに応じることが「法的に期待される」となっている。政府は「一般的な協力義務」と説明している。また、自治体職員が首長の指示を拒否した場合、その職員は地方公務員法などで処罰対象となる可能性がある。
○外交尽くし新法の出番つくるな
 万一のとき守ってもらう代わりに、日本は米軍にアジアの前線基地を提供しましょう。ただし日本防衛以外の米軍出動にはあまり協力できませんよ、というのが日米安保条約だった。
 だが、これからは違う。政府がいわゆる周辺事態と認めれば、ひとごとと思わず、自衛隊による後方支援をはじめ、官民あげて米軍にできる限り協力しようというのだ。それがガイドライン関連法である。安保条約の改定に等しいといわれるゆえんだ。
 講和条約とともに一九五一年に生まれ、六〇年に改定された安保条約は、これで第三段階に入った。米ソ冷戦の時代は終わったが、朝鮮半島は物騒だしアジアにはまだ火種がくすぶる。周辺の有事には、武力行使に至らぬぎりぎりの範囲で関与するのが冷戦後の日本の務め、というわけだ。
 「戦争放棄」の憲法をもち、外国の紛争に軍事介入しないことを国是としてきた日本にとって、これはきわどい選択である。「日本なりの責任を果たし、安保条約を充実させた」との評価がある一方で、「平和憲法の理念に背く戦争協力法だ」と、不安の声が上がるのも無理はない。
 どちらにせよ、これはいざというときに日本が危険に身をさらす覚悟を迫る法律に違いない。大きな転換点であることは、胸に刻むべきだろう。
 いや、これはまさかの時の備えであり、戦争を防ぐ抑止力になる、と政府はいう。切にそう願いたい。だが、ならばその「まさか」が本物になって新法の出番がくることがないよう、とことん外交努力をしてもらわなければ困る。
 その相手はまず朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)だ。ガイドラインが抑止力の域を超え、敵対心と緊張を高めるだけなら危険だ。北朝鮮をただ追い詰めるのでなく、日本は辛抱強くあらゆる知恵を使い、話し合いに引き込んでいくべきである。
 中国も深く意を用いるべき相手だ。ガイドラインには中国の軍拡をけん制する狙いも込められているが、その中国は日本の方に軍事大国化の危険性を感じて警戒している。そんな食い違いが悪循環になって緊張を高めたのでは困る。
 われわれは日中平和友好の気持ちに変わりなく、台湾独立にも手を貸さず、ただ中台間の平和的な解決を心から望んでいるのだと、根気よく伝えていくしかあるまい。中国の民族主義的機運が気になる折、「日の丸・君が代」の唐突な法制化などでこちらもナショナリズムの動きを見せるのは決して利口でない。
 米国との距離の取り方も肝心だ。ガイドラインで信頼を固めたからといって、万一のとき、日本の協力すべき「周辺事態」かどうかは、米国の判断をうのみにできない。その危うさはかつてはベトナム戦争で、いまはユーゴ空爆の泥沼化でも明らかだ。
 そして、より根本的には安保条約の見直しを図ろうという展望を忘れてはなるまい。
 安保条約が結ばれてほぼ半世紀、とりわけ沖縄は広大な基地の島であり続けて変化の兆しがない。米軍が日本国内から出撃する際は日本と事前協議するという取り決めは、ベトナム戦争でも中東への出動でも空証文であり続けた。
 朝鮮半島の緊張も永久でないはずだ。アジア情勢の変化をにらみ、こうした理不尽を正していけないなら、ガイドラインの収支はとても合わないだろう。
(政治部長・若宮啓文)
●関連3法、主な内容
■周辺事態法
 ○政府は周辺事態に際して、後方地域支援、後方地域捜索救助活動、その他必要な対応措置を実施する
 ○首相は対応措置の基本計画について閣議の決定を求める
 ○自衛隊の後方地域支援、後方地域捜索救助活動について、首相は実施前に国会の承認を得る。緊急の場合は、実施後速やかに承認を求める
 ○防衛庁長官は自衛隊による後方地域支援、後方地域捜索救助活動について実施要項を定め、実施を命令する
 ○国は地方自治体や民間に協力の要請・依頼ができる
 ○首相は基本計画の決定・変更や、対応措置終了後の結果を国会に報告する
 ○後方地域支援と後方地域捜索救助活動で、生命・身体の防護のために武器を使用できる
■改正自衛隊法
 ○緊急事態での在外邦人の輸送手段に船舶と船舶搭載ヘリコプターを追加する
 ○隊員や輸送する邦人らの生命・身体の防護のために武器を使用できる
■改定日米物品役務相互提供協定(ACSA)
 ○周辺事態に際しての活動で物品・役務を相互に提供できる
 ○武器・弾薬の提供は含まない
<ガイドライン>
 冷戦終結など国際情勢の変化から日米両国は、一九七八年の日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を見直し、九七年九月に完成した。日本周辺の有事での対米支援策を具体化し、日本の防衛政策の転換点になる。
 旧ガイドラインは日本がソ連から武力攻撃を受けた場合の共同対処を中心にまとめたが、新ガイドラインは九三、九四年の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)危機を念頭に「周辺事態」という新概念を導入した。
 物資の輸送や補給といった後方地域支援、経済制裁が実施された時の不審船舶の検査、非戦闘員を退避させるための活動、機雷除去など四十項目の具体策が盛り込まれた。
 
 
 
 
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