1999/04/22 朝日新聞朝刊
続・船舶検査 国連決議で実効性確保(ガイドライン法案Q&A)
Q 新しい日米防衛協力のための指針(ガイドライン)関連法案の船舶検査活動について、修正協議でもめているんだって。
A 政府案は、経済制裁の実施を確保するための船舶検査の前提として国連決議が必要と定めている。だけど、自由党は国連決議の条件を「削除しろ」と要求している。公明党や民主党は「必要だ」といって真っ向から対立している。
Q なぜ自由党は国連決議をはずしたいの。
A ガイドライン法案は米軍への協力の話なので、国連決議に基づく行動は別の法体系で整理すべきだ、という主張が根っこにある。実際的な話では、安保理常任理事国が拒否権を発動して国連決議が採択されない場合に活動できなくなるという懸念もある。
Q 政府案では、なぜ国連決議が前提なの。
A 自社さ連立政権時代に社民党が盛り込むよう求め、新指針に「国連決議に基づく船舶検査の協力」と書かれた。自衛隊の活動が無限定にならないように、一定の歯止めをかけたんだ。
Q 政府は、決議の意味についてどのような説明をしているの。
A 国会では「これまでの例をみると、たいてい国連決議がある」とか、「国連決議がある方が実効性が高い」などと説明している。
Q 国連決議に基づく船舶検査の具体例は。
A 一九六六年の南ローデシア、九〇年のイラク、九二年のセルビア、モンテネグロ、九三年のハイチの四回がある。
Q 実効性が高いとはどういうことかな。
A 国際的な慣行で、船の上では、その船の属する国の法律が適用される。船の掲げる旗の下という意味で「旗国主義」という。船舶検査は旗国の同意がある場合にできるものなので、国連決議があれば国連加盟国はみんな同意したことになるから、いちいち旗国の同意をとらないでできる。
Q 決議の扱いについて自民党はどういう考えなの。
A 国連決議の条件に「条約その他の国際約束及び確立された国際法規」という文言を加える修正案を考えている。つまりは、旗国主義に基づいて、対象の船の国が同意すれば船舶検査できるということのようだ。
Q 例えばどんなケースを想定しているの。
A 国連決議がない場合に、日本、米国、韓国の三国で船舶検査を実施すると決めたとすると、日米韓の船は対象に入るし、ほかの国の船も旗国の同意をとれば可能になる。また、中国など一部の常任理事国が拒否権を発動して国連決議が採択されない時でも、大方の国が検査に賛成していれば、ある程度の活動ができることになる。
Q 決議の規定を抜かれると、政府は困るのかな。
A 検査の対象となる禁制品を何にするかなど国連決議で明確に決まっている場合に比べ、決議がないと説得力が弱いよね。
Q 国連決議の削除に反対する意見は、どんなものがあるの。
A 船舶検査を機能させるには、根拠として国連決議という権威が必要で、それに基づかない船舶検査は現実味がないと言われている。
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