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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/06/26 朝日新聞朝刊
対日圧力強める米 「極東情勢」背に攻勢 TMD構想への参加問題
 
 「いっそう緊密な防衛協力」をうたった四月の日米安保共同宣言を受けて、戦域ミサイル防衛(TMD)が日米間の大きなテーマに浮上している。米政府は三年前からTMD構想への日本の参加を求めてきたが、このところの極東情勢の緊張もあり、日本の態度決定を促す圧力は強まるばかりだ。迎撃性能の信頼度や開発費用、宇宙空間の平和利用を定めた国会決議との関係など、問題点はヤマほどある。だが、日米安保新時代を象徴する協力分野として、なし崩し的に参加に進む流れが強まっている。
 (木村伊量・アメリカ総局 岡崎哲也・政治部)
 ●日米会合まだ5回
 「年内に結論を出せとは、どういうことですか」
 「参加が早ければそれだけ日本にとって有利、という意味ですよ」
 五月末のワシントン。訪米した防衛庁の幹部は、米国防総省の幹部の熱気に押されがちだった。
 四月に東京で開かれた日米防衛首脳会談で、ペリー国防長官は臼井日出男防衛庁長官に対し、TMD構想への参加問題で「早期回答」を迫った。防衛庁の幹部は米側の真意をただすために訪米したのだった。
 ミサイル兵器などの完成品の値段には開発費用が含まれており、導入するなら開発段階から参加した方が安くつくといわれる。米国はその利点を持ち出し、早期参加を迫ったわけだ。
 だが、TMDに関する日本政府の取り組みは「まだ二、三合目」(防衛庁幹部)。日米間の作業グループ会合は二年前に始まり、日本側はミサイルや探知センサーの研究開発や、日本周辺の弾道ミサイル配備の現況の説明を受けてきた。ただ、その会合もこれまで五回開かれたにすぎない。
 技術面を検討する民間委託の研究も、始まったばかり。「研究結果は来夏に出る。それまで導入が決められないことは、米側も承知しているはず」と防衛庁幹部は戸惑う。
 ●議会への説得材料
 TMDを防衛政策の優先課題に挙げてきたクリントン政権は、三月に中国が台湾近海でミサイル演習をして以来、中国や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイルに関する機密データを日本側に示し、「新たな脅威への備え」をいっそう強く説き始めた。
 だが、見逃せないのは議会対策の要素だ。特に大気圏外でのミサイル迎撃を狙う高高度のTMDについては、共和党のレーガン政権が推進し、「スターウオーズ」計画と呼ばれた戦略防衛構想(SDI)の焼き直しといった批判が議会民主党を中心にくすぶる。
 北大西洋条約機構(NATO)諸国では、英国やドイツが米国のTMD導入を検討中だが、決定には二の足を踏んでいる。「日本の参加表明は、議会に対して強力な説得材料になる」と国防総省スタッフは話す。
 高高度で敵のミサイルを狙い、撃ちもらしたミサイルは落下寸前にたたく――そんな芸当が本当にできるのか。各国がTMD構想に慎重な第一の理由は性能面の不安だ。高高度用のTMDは最近の実験でも満足な結果が得られていない。
 米国は下層用のPAC3の配備を優先させる方針で、日本が導入を決めた場合、PAC3とイージス艦搭載の対空ミサイルを組み合わせたシステムが想定されている。ただ、米議会のミサイル防衛の専門家の間には、近い将来日本はもっと本格的なTMD導入に進むとの見方が少なくない。
 民主党のスプラット下院議員は「日本は将来、日本海沿岸への高高度用のTHAAD配備を防衛の軸にすべきだ」。一方、共和党のカイル上院議員は「日本防衛には海軍戦域防衛システムが最適」と話す。
 だが、研究開発から配備まで二兆円以上とも言われる費用をどこからひねり出すのか。研究開発費をどう分担するのか。米国にも明確な指針はない。
 ●兵器会社のドル箱
 冷戦終結で需要が落ち込むロッキード、レイシオンなどの米大手兵器メーカーにとって、TMDは願ってもない「ドル箱」。三菱重工、川崎重工はじめ日本の防衛関連メーカーも共同開発やライセンス受注に備えている。共同開発となれば、武器輸出三原則など日本の防衛政策との整合性が問われることは必至だ。
 だが、難題ずくめでも、防衛庁などには「参加を決断せざるを得まい」との声が強まっている。四月からは米静止衛星が探知した弾道ミサイル発射に関する早期警戒情報も日本に提供され始めた。ある幹部は「ここでチャレンジしないと日米安保体制がもたない」。海上自衛隊に比べ、配備に慎重といわれる陸上自衛隊幹部からも「もう逃げられない」との声が出始めた。
 <戦域ミサイル防衛(TMD)>
 射程が80−3000キロの戦域弾道ミサイル(TBM)に対する防衛システム。迎撃ミサイルなどの武器システム、赤外線探知衛星などのセンサーシステム、総合的な統率をする「司令・管制・通信・情報(C3I)」システムから成る。
 迎撃は、ミサイルの落下段階を狙うものと、高高度飛行の段階を狙うものに分けられる。米国が開発中のシステムは、前者ではパトリオット迎撃ミサイルの改良型の「PAC3」、後者では地上発射の「THAAD」、海上発射の「海軍戦域防衛システム」など。最大の技術的課題は弾頭の破壊。弾道ミサイルの最高速度は毎秒3キロに達し、「短銃から発射された弾丸に弾丸をあてるより難しい」とされる。
 
 
 
 
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