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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1996/04/15 朝日新聞夕刊
日本の安保政策岐路に 集団的自衛権、論議必至 日米防衛協力強化へ
 
 橋本龍太郎首相とペリー米国防長官が「極東有事」の際の米軍に対する日本の協力の具体化に関する協議開始で合意したことは、日米安保体制が防衛協力の強化に向けて新しい局面に入ったことを意味する。自衛隊と米軍が燃料などを融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の締結とあわせて、日本が米国の戦略の一翼を担う態勢づくりが進むことは確実だ。有事協力の本格的な協議は、日本国憲法では許されないとされてきた集団的自衛権の行使に関する論議を引き起こすとみられる。一方、ACSAでは武器輸出三原則の「例外措置」もなし崩し的に拡大しており、安保「再定義」を機に、日本の安全保障政策は大きな転機に向かいつつある。
 十五日に日米両政府が締結したACSAは、防衛協力強化に向けた第一歩となる。今回の協定では対象を共同訓練や国連平和維持活動(PKO)に限定した。「有事」も対象にした場合、憲法上認められていないとされてきた集団的自衛権の行使に踏み込むことになり、いまの段階では日本国内の合意形成は難しいと判断したからだ。
 その一方で日米両政府は、十七日の首脳会談で安保「再定義」の文書が交わされるのを受けて、「極東有事」の際の米軍に対する協力について、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の見直しに着手することを決めている。外務、防衛両省庁は、今回のACSAに盛り込まれたものとほぼ同様の項目を有事の「後方支援」の検討対象にあげている。つまり、ACSAでは抜け落ちている「有事」に関する協議が、ガイドラインの見直しという形で補完的に進むことになる。
 政府はこれまで、武力行使と「一体」となる後方支援は、集団的自衛権の行使につながり、憲法上許されないという見解に立ってきた。こうした従来の政府見解と矛盾しない形で、有事における「後方支援」がどこまで許容されるか、が焦点になる。日米協議の進み具合によっては、憲法解釈のなし崩し的な変更につながる可能性もはらんでいる。
 また、ACSAのPKOへの適用は、日米の防衛協力関係が平時という限定つきとはいえ、「極東」にとどまらず、世界的規模に拡大し始めたことを意味する。安保体制の「広域化」を志向する流れの中で、仮に日本が凍結しているPKF(国連平和維持軍)への参加を解除した場合、ここでも集団的自衛権の行使という問題が浮上することになりそうだ。
 一方、ACSAには、米軍への提供項目に「武器部品」が盛り込まれ、武器輸出三原則に例外が設けられた。武器そのものと言える弾薬などの提供は除外されたが、本質的には対米武器輸出解禁という側面が強い。中曽根康弘首相時代の一九八三年に米国向け武器技術供与が解禁されたのに続いて、佐藤栄作首相時代の六七年から積み上げてきた安保政策の大原則の一角が崩れたといえる。
 朝鮮半島や台湾海峡の緊張も受けて、米側の日本に対する防衛協力強化の要請は強まっている。米国は沖縄の普天間飛行場の全面返還という「思い切った決断」(防衛庁首脳)によって、こうした動きに弾みをつけようとしている。橋本首相をはじめ日本側にも、沖縄基地問題に一つの決着をつけたのと引き換えに、戦後の安保政策の実質的な転換を図ろうとする狙いがうかがえる。冷戦後の日本の安保政策をどう構想するかをめぐる独自の論議を欠いたまま、米国のアジア政策への協調による安保政策の根幹の変更が急ピッチで進められる可能性がある。
(政治部・岡崎哲也)
○物品役務協定の主な内容
食料
食料、食事の提供、調理器具など
水、給水、給水に必要な用具など
宿泊
宿泊設備や入浴設備の利用、寝具類など
輸送
空輸を含む。人または物の輸送、輸送用資材など
燃料・油脂・潤滑油
燃料、油脂および潤滑油、給油、給油に必要な用具など
被服
被服、被服の補修など
通信
通信設備の利用、通信機器など
衛生業務
診療、衛生器具など
基地支援
廃棄物の収集や処理、洗濯、給電など
保管
倉庫または冷蔵貯蔵室における一時的保管など
施設の利用
建物、訓練施設および駐機場の一時的利用など
訓練業務
指導員の派遣、教育訓練用資材、訓練用消耗品など
部品・構成品
軍用航空機、車両、船舶の部品または構成品など
修理・整備
修理や整備、修理および整備用機器など
空港・港湾業務
航空機の離着陸および艦船の出入港に対する支援、積み下ろし作業など
 
 
 
 
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