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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1995/02/09 朝日新聞朝刊
災害に強い自衛隊にするには(社説)
 
 阪神大震災での自衛隊の活動を検証し、大規模災害に備える態勢を再検討する方針を防衛庁が決めた。当然である。
 地震発生後の本格出動の遅れをきっかけに、政府や自治体の判断の妥当性から現行の法制度の是非まで、自衛隊の災害派遣をめぐってこれほど論議が沸騰したことはない。教訓を生かして態勢を整えることは、防衛庁ばかりでなく、地震国の政府全体として取り組むべき重要課題である。
 その際、何より大事なことは、まずありのままの事実を調査し、公表することだ。そして、明らかになった問題の原因や背景を、官僚組織の利害や責任問題を離れ、自衛隊の機能を災害に有効に活用する立場から、冷静に分析する必要がある。
 出動の遅れについては、さまざまな要因が指摘されている。兵庫県知事からの最初の派遣要請が、地震から四時間も後だったことは、惨害が当初つかめないほど深刻だったとはいえ、余りにくやしい。
 北海道南西沖地震では、北海道知事からの派遣要請はずっと機敏だった。救援の直接の責任を負う自治体や警察、消防の機能をも直撃する大都市災害には、自衛隊の活動がなおさら重要な状況だったはずだ。
 自衛隊側の態勢にもまた、さまざまの反省が要る。被災地周辺の駐屯地が直ちに動き始めたにもかかわらず、陸上自衛隊の中部方面総監部をはじめ、部隊指揮の中枢による被害の規模や救援の出動についての正確な判断が遅れた。
 情報の分析や伝達もうまくゆかなかった。偵察ヘリコプターが上空から被害を目のあたりにしたが、その程度を正確に見積もることができなかった。ヘリからの映像を直接首相官邸に送る機能を備えていれば、という指摘はもっともだが、それを分析する態勢が伴わなければ意味がない。
 自衛隊法には、大震災に備えて事前の出動をも可能にする「地震防災派遣」の条項がある。自衛隊は東海地震や南関東地震に備えた派遣計画をつくってもいる。
 しかし、いつどこで起こるかわからない地震に対して、いまあるシステムを最大限に運用するための準備が、内閣や自治体だけでなく、防衛庁、自衛隊にも欠けていたのではないか。
 自衛隊が自主的に出動できるように権限を強化すべきだとか、災害派遣を自衛隊の主要任務とすべきだというような、自衛隊法改正を求める意見が出ている。
 だが、災害派遣は、すでに実質的な本務とされているし、派遣の根拠となっている自衛隊法八三条は、自治体からの要請を受けてはじめて出動するという原則に立ちながらも、柔軟な運用が可能だ。
 性急に法改正を主張するよりも、現行法制度の運用のどこに問題があったのかを検討することが「危機管理」の出発点であるべきだろう。
 災害に際しての自衛隊の存在が、今回ほど国民の関心を呼んだことはない。では、もっと災害に強い自衛隊にするには、なにが必要か。
 自衛隊の装備や配置、訓練、指揮通信を、災害対応型に転換する努力である。いま作業が進められている防衛計画の大綱の見直しのなかで、震災への対処を新たな柱のひとつにすることも考えられよう。
 とはいえ、自衛隊さえ来てくれればという考えは、法的にも実体的に無理がある。災害に対処する第一義的な責任は、自治体、消防や警察にある。そのうえに立って、自衛隊の機能をもっと発揮させる発想が求められている。
 
 
 
 
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