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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/08/03 朝日新聞朝刊
「自衛隊合憲」を考える 問われる理念 中馬清福・論説主幹(座標)
 
 戦後日本における防衛論争をつきつめていくと、結局のところ、自衛隊の存在をどう見るか、というところにたどり着く。
 社会党は長い間、自衛隊は憲法違反だと主張してきた。それだけに、この党の委員長でもある村山富市首相が、自衛隊は合憲だ、と明言したことの意味は大きい。
○二極的見方は避ける
 これで、長い間、国論を二分してきた自衛隊合憲・違憲論争に終止符が打たれるのだろうか。いや、それほど簡単ではあるまい。自衛隊問題は、歴史的にも、また現状認識の上からも、首相が合憲だと言ったからといって、事態が一挙に百八十度変わる性格のものではない。
 朝日新聞は戦後、日本国民の安全と世界の平和のために、積極的な言論活動を続けてきた。自衛隊を論じる場合も、その出発点はつねに「国民の安全」であり、「世界の平和」であった。だから私たちは、自衛隊は合憲か違憲か、といった二極論的な論争に深入りすることをできるだけ避け、現に存在する自衛隊をいかにコントロールし、憲法の精神に沿ったものにするか、に主張の力点を置いてきた。
 これまで朝日新聞社説は、この問題についてどう論じてきたか、いくつか紹介したい。
 「かねていうように、国民大半の心理は有効なる自衛の力を必要であると考えているであろう。われわれもその通りに考える」(53・12・16)
 「われわれは、独立国家に固有の自衛権の存在を承認し、この自衛権に基づく必要最小限度の自衛力を是認せざるをえない」(64・5・3)
 「われわれも、今日の世界情勢からみて、必要最小限度の自衛措置を講ずることは、万やむをえないことであると考える。憲法の理想からいえば、非武装中立ということは最も望ましい姿勢であろう。しかしそれは、・・・・・・現実には不可能に近いといわねばならない」(66・5・3)
 国家の自衛権を肯定し、それに基づく必要最小限の自衛力を容認する姿勢は、今日に至るまで社説の基調となっている。その上に立って「平和主義に徹せよ」(68・5・3)、「自衛隊の増強を停止せよ」(73・9・9)と主張し、野放図な防衛力増強に歯止めをかけてきた。
○防衛力の中身が問題
 つまり、自衛隊の存在そのものを合憲か違憲かと論じるのではなく、その時々の防衛理念や政策、規模・装備の量と質で判断する方針をとってきた。
 振り返ってみて、この選択は妥当なものだった、と私は思う。
 なるほど、憲法九条を法規範の面からのみ厳密に解釈するなら、憲法学者の多くが主張するように、自衛隊はたしかに違憲的存在であろう。それに「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない、と憲法が規定しているのに、実際には最新兵器を備えた陸海空軍を持っていながら、日本国民はどうして平気な顔をしていられるのだ」という、ロンドン大学教授ロナルド・ドーア氏の疑問にも、無理からぬところがある。
 こうした指摘にも十分耳を傾けた上で、あえて私見を述べるならば、自衛権に基づく実力組織はもともと「袋」みたいなもので、それだけを取りあげて合憲だ違憲だと言ってみても、あまり意味がない。袋に詰め込まれる中身次第で、それは合憲にもなるし違憲にもなる。
 従って、なんの前提もなしに「自衛隊は合憲」と言うだけでは、無責任だし、無用の混乱を招く。歴代の保守政権ですら、自衛隊合憲説を貫くため、多くの制約を自らに課さざるを得なかった。それこそが憲法九条の規範的意味であり、成果である。社会党が合憲を言うなら、その自衛隊像を一日も早く示してもらいたい。
○現況はグレーゾーン
 私が考える「合憲の自衛隊」は、任務の面でも装備・編成面でも、可能な限り抑制され限定され、しかもそのことが内外のだれの目にも明らかな実力集団である。日本の領土・領海・領空の防衛に任務が限られる、いわゆる日本列島守備隊だ。
 この基準に照らしたとき、いまの自衛隊は合憲か違憲か。現況はグレーゾーンにある、というのが私の見方である。率直に言って、これまでのところ、憲法九条のもと、自衛隊の任務や装備・編成は比較的抑制が利いていた。だが、イージスシステム搭載艦に続く空中警戒管制機(AWACS)の導入、さらに支援戦闘機、実は戦術爆撃機FSXの配備となると、そうはいかない。
 そのうえ「防衛庁の保管する防衛秘密と庁秘」は計百八十八万五千六百九十七点におよぶ。合憲か違憲かを判断するには、あまりに厚いマル秘の壁ではないか。これを崩すことが「合憲の自衛隊」の第一歩である。
 
 
 
 
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