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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/07/21 朝日新聞朝刊
ルビコンを渡ったあとで(社説)
 
 村山富市首相は二十日の衆院本会議で、日米安全保障体制を堅持すること、自衛隊は憲法に違反しないことを、これまでになく明快な口調で言明した。
 十八日の所信表明などで、村山首相はすでに「日米安保体制堅持」と事実上の「自衛隊容認」を表明している。しかし今回の答弁は、立党以来の基本政策の転換を公式に宣言したことを意味する。
 総理大臣としての、また社会党の党首としての、この踏み込んだ発言が現実のものとなり、党の方針が転換するとなると、革新勢力にとどまらず、戦後政治全般にわたる画期的な変化となるであろう。波紋は大きいと見なければならない。
 村山首相の言明で示された「変化」を、どう評価すべきであろうか。
 第一に、私たちは、これによって社会党が自衛隊の実態を正面から直視し、真の意味のシビリアンコントロール(文民統制)へ向けて政党としての機能を発揮してくれるなら、この変化は決して悪くない、と考えている。
 社会党はこれまで、ともすれば極端な自衛隊違憲論に閉じこもりがちで、現にある自衛隊をどうコントロールするかという、政党としてもっとも肝心なことがお留守になっていた。違憲論に寄りかかったまま、見るべきものを見ず、正すべきものも正さず、という姿勢が党内には見られた。
 まじめな護憲論の展開に、これがどれほど足かせになっていたか、これを機に反省してもらいたい。同党がよく口にする「自衛隊の軍縮」にしても、防衛構想から装備まで、正確な実態を把握しないかぎり、納得ゆく提案などできないのである。
 第二には、実はこれこそ肝心な、そして私たちが何とも納得いかない点であるが、村山答弁は周到な手続きと歴史的展望を欠いている、ということである。手法はかなり強引で、政策の大転換にはつきものの苦悩のあとが見られない。
 社会党が、反安保・自衛隊違憲論を基本政策にすえてきた背景には、保守勢力が憲法を無視する形で戦力保持を進めたという事情もあった。のちにその硬直的姿勢がひずみを生み、党没落の一因になったものの、同党の「平和路線」が一定の役割をはたしたのは確かである。
 社会党の方針転換の是非を論じているのではない。ただ、変わるなら、まず過去の政策をきちんと清算し、そのうえで転換の理由と展望をはっきり有権者に示す必要がある。それは大変につらい作業かもしれないが、それを経ない転換は本当の転換とは言えないのではないか。
 自衛隊問題で村山首相は確実にルビコンを渡った。しかし、世界的に軍事力依存の傾向は減退しつつあり、自衛隊自身も多くの課題を抱えている。首相は今回の答弁で、合憲論の前提に「専守防衛」と「自衛のための必要最小限度の実力組織」をあげたが、これだけでは自民党時代とあまり変わらない。冷戦後にふさわしく、また憲法の理念に少しでも近づけるように、「必要最小限度」の中身まで踏み込まないと、せっかくの歴史的転換も生かされまい。
 このことは「日米安保体制の堅持」についても言える。村山氏が堅持を約束した安保体制とは何かが、まず問われなければならない。安保体制の意義も方向も冷戦期と冷戦後では当然違うし、駐留米軍の役割も変わったはずである。いま求められているのは、米国と一緒に安保体制を再点検し、維持するものと手直しするものを精査することである。
 
 
 
 
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