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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1994/07/16 朝日新聞朝刊
「自衛隊40年」後の安保を問う(社説)
 
 警察予備隊、保安隊をへて、陸海空の三自衛隊が正式に発足したのは一九五四年七月だった。その直前、参院は「自衛隊の海外出動禁止」を決議している。
 あれから四十年。自衛隊は合憲か否か、いまなお議論が続いている。なかには、自衛隊がここまで「成長」した以上、その現実に合わすため憲法自体を改定すべきだ、との意見も出ている。
 憲法の条文と現実との間に違いが出てきた場合、どうすべきなのか。二つの方法があるだろう。憲法を変えて実態を追認するか、逆に、できるだけ憲法に近づけるよう実態を変えるかだ。
 手っとり早く改憲する手法は、一見、分かりやすく、一時的にはすっきりするかもしれない。だが何が「現実」か、その判断はむずかしい。昨日の現実は今日の現実でないことが多いのだ。それに、憲法にもとる恐れのあることを先行させておいて、もう仕方がない、改憲だ、というのは良いやり方とは思えない。
 国民世論を二分する「改憲」にいきなり飛び込むのではなく、もう一つのやり方、つまり実態をできる限り憲法に近づけることに、もう少し真剣になっていいのではないか、と私たちは考える。具体的に言うなら、思い切った軍縮である。
 自衛隊四十年の足跡は、そのまま冷戦にもてあそばれた歴史でもあった。国民の意に沿わないまま、心ならずも憲法とは離れた施策が実施されたこともあっただろう。その点からだけでも、自衛隊の「現実」は問い直されなければならない。軍事力の比重が相対的に低下した冷戦後の世界では、なおのことだ。
 今年の防衛白書は、「自衛隊――変化への対応」の一章を設け、自衛隊四十年を総括している。しかし、「軍事力は国の安全保障を最終的に担保するもの」との認識を示すのみで、冷戦後の自衛隊が何をめざすのかは明らかでない。
 もっとも、この一年で内閣は三回も変わった。そのうえ、細川政権下に発足した首相の私的諮問機関「防衛問題懇談会」の結論は間にあわなかった。実のある白書を、という注文自体が無理だったろう。それだけに、近く予定されている防衛問題懇談会の答申に注目せざるを得ない。
 伝えられるところでは、答申は「多角的な安全保障戦略」を提唱し、日本の防衛力は国際的な安全保障に協力する手段としての側面を持つ、との認識を示す。その吟味は正式の答申後にするとして、現時点で気になるのは、「平和の配当」的な発想があまり見られないことだ。
 たとえば、自衛隊員の定員を減らすかわりに公募予備自衛官制度を新設せよとか、戦闘機削減のかわりに空中給油機の導入が検討に値する、といった構想が答申に盛り込まれるという。しかし、これでは、懇談会の有力メンバーが認めているように、防衛費は従来と変わるまい。
 ここには、欧米諸国のような、冷戦終結に伴って一度とにかく防衛費を大きく削減してみよう、という発想はない。Aを減らすかわりにBをふやす。これは再編成ではあっても、軍縮ではない。
 防衛白書には「わが国が憲法上保持し得る自衛力は、自衛のための必要最小限度のものでなければならない」とある。憲法を自衛隊に合わすのではなく、自衛隊を憲法に合わすためには、必要最小限度の防衛力とは何か、つねに謙虚に自らに問う姿勢が必要だ。答申をまえにした懇談会に、ぜひ考えてもらいたいことである。
 
 
 
 
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