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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/07/31 朝日新聞朝刊
時代にそぐわぬ防衛認識(社説)
 
 冷戦が終結に向かい始めて以来の防衛白書には、一つの共通した傾向が見られる。「だから防衛費の削減を」といわれることへの防御の姿勢である。
 「宮沢自民党政権のうちに」と、防衛庁が駆け込み的に閣議報告した今年の白書は、とくにその色が濃い。内に向かって身構えているように読める。
 第一は、地域紛争の多発やその恐れを列挙して、国際情勢の先行きに不安感、不透明感があると繰り返し述べていることだ。とくに、アジア太平洋地域については「情勢は複雑で、欧州のように大きな変化はみられない」と警戒的である。
 第二は、防衛力は一朝一夕に整備できないという原則論の強調だ。「国際情勢はいまも変化を続けている最中であり、なお慎重に見極めるべきだ」という。
 第三は、昨年末の中期防衛力整備計画(九一―九五年度)の下方修正を、詳細に説明していることである。これによって今年度の防衛費は三十三年ぶりの低い伸び率となり、増加額も二十三年ぶりの低額になったとか、その八割は人件費などの義務的経費である、などと言っている。「だから、減らせない」という主張に通じる。
 第四は、今回初めて、防衛産業の重要性に触れたことだ。防衛費削減は、防衛産業の技術開発力、生産能力を損ね、将来、国際情勢が急変した場合に、対応力を失わせる、という主張の反映だ。
 こうした考え方がすべて誤りだとは思わない。しかし、あまりに柔軟性を欠いている。冷戦時にも通用する理屈であり、新しい時代にふさわしい安全保障観の反映とはとてもいえないだろう。
 このことは、防衛計画大綱の見直しになお慎重論を崩していない白書の姿勢に通じる。冷戦下でつくられた大綱の抜本的な見直しは当然のことで、自民党政権もその方向で動いてきた。これを見直す場合、冷戦後の日本の防衛力・防衛政策をどう位置づけるかが、緊要の課題となる。そこに目を向けず、とにかくこれ以上の防衛費削減は阻止しようとする姿勢はいただけない。
 中心に据えられるべきは、自衛隊の定員への切り込みと、再編であろう。白書は、若年人口の減少傾向に触れて、将来の募集環境が厳しくなることを指摘している。そうである以上、要員が確保できないから定員を減らすという受け身の対応ではなく、日本がアジアで率先して軍縮する道があるはずだ。国際政治へのアピール効果ということが、考えられてよい。
 いま減らすと、急には取り戻せない、との主張は一見もっともにみえる。しかし、時代の変化で軍事力の比重は低下した。先進諸国は競って兵力削減に動いているではないか。さらに予備自衛官制度の再検討も考えられよう。たとえば、退職自衛官が予備自衛官として登録することに魅力を感じるような手当増も一案だ。
 限られた防衛力の中で、さまざまな工夫をこらす知恵が、これからは求められる。白書が「極めて危険な状況になり得る」と指摘した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核とミサイルの結び付きにしても、軍事的な対応を考える前に、孤立化は結局は損だ、という認識を北朝鮮に持たせるための総合的な努力が必要だ。
 自民党単独政権の時代は終わった。連立政権をめざす側は「現政権の防衛政策の継承」を掲げたが、防衛問題をタブー視するようではいけない。連立政権ゆえに論議に空白が生じ、防衛当局者の主張だけが独り歩きする事態になれば大変である。
 
 
 
 
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