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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1992/09/29 朝日新聞朝刊
定まらぬ冷戦後の防衛費(転機の自衛隊 PKO本格活動を前に:3)
 
 「1990年代後半の日本の防衛力は、従来の“専守防衛”路線を脱して攻撃的性格に変わりそうだ」
 昨年10月、韓国国防省が発表した「国防白書」は、日本の防衛力についてショッキングな警告を発した。
 「どうしてこういう見方が出るんですかね」と、防衛庁の畠山蕃(しげる)防衛局長は当惑の表情で語る。
 「軍事のことを理解できる人ならば、対外侵略が可能な軍事力など日本が持ちあわせていないことは、わかるはずだが・・・」
 防衛庁の主観的意図はともかく、この白書は、隣国である韓国が、わが国の防衛力を「脅威」と感じ始めたことを示す。
○アジアで金額突出
 英国際戦略研究所の『ミリタリー・バランス(91―92年)』で90年度の各国の国防費(85年価格)を見ると、日本の防衛費は163億ドルで世界の7位。50−60億ドル前後でしのぎを削る韓国、中国、台湾の各国・地域の2、3倍前後に達し、アジア地域で突出している。
 しかも、冷戦体制終結によって世界全体の軍事費が抑制される中で、日本の防衛費はまだ「増え方が減り始めた」という段階で、見直しのテンポは鈍い。
 防衛費総額(歳出ベース)は、前中期防(86―90年度)で年平均伸び率が5.4%だったのが、現中期防(91―95年度)では3%に。
 装備の内訳(契約ベース)では、戦闘機、護衛艦、戦車などの「正面装備」の年平均伸び率が、前中期防のプラス7.7%から、今の中期防ではマイナス2.3%へ。そして、91年度は対前年度比16.2%減、92年度はさらに3.7%減と、削減ペースが定着しつつある。
 こんな動きを防衛産業は心配している。リーダー格の三菱重工業の担当部長が「日本の安保態勢における“ミニマム・クルー”、つまり、通常の状態で最低限備えるべき兵器生産設備、技術者などの規模。その水準を明確にしてもらわなければ、民間企業である兵器産業はやっていけなくなる」と訴えるほど。
○迫られる下方修正
 ただ、「これまでの見直し程度では、ポスト冷戦体制への反応としては鈍い」という野党などからの批判は強い。防衛庁はいま、防衛費の「下方修正」と、より基本的な「防衛のあり方」の見直しを迫られている。
 西広整輝・元防衛事務次官は「防衛費削減を、という国民の期待にはこたえるべきだ。ただ、単に金額だけを論ずるのではなく、自衛隊の任務そのものの見直しから論議しなければ」という。
 「“平和の配当”として防衛費削減を、というなら、それは筋違いでは」と西広氏は付け加えた。
 わが国は長年、防衛費を国民総生産(GNP)の1%以内に抑えることによって、経済的繁栄をかち得た。その意味で、米ソ冷戦時代を通じて、日本は“平和の配当”を先取りしてきた。日本は、これからは世界に「配当」を配る番だ、というのだ。
 これは、米国などに根強い対日「フリーライダー(安保ただ乗り)」批判とも符合する見方だろう。
○速やかな論議必要
 しかし、坂本義和・明治学院大教授は力説する。
 「日本が“平和の配当”を先取りしてきたとしても、それはただでもらったわけではない。米国からの国防費拡大の強い要請に抵抗して、GNP1%枠を守ってきた。そこには、平和主義で生き抜こう、という国民の強い意志があったことも忘れてはいけない」
 平和主義をよりどころとした経済的繁栄。この原点を見据えつつ、冷戦終結で日本の防衛のあり方を根本から見直す時を迎えている。国土防衛という自衛隊の本務と、国連平和維持活動(PKO)参加という新たな任務。この2つの任務を今後どう位置づけるか。
 とかく見えにくい、といわれる「日本の顔」を、広く世界に示すためにも、防衛の見直し論議は、オープンに、スピーディーに運びたい。
 (編集委員・伊藤三郎)
 
 
 
 
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