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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/06/27 朝日新聞朝刊
今後の問題点 自衛隊の海外派遣:下(なんでもQ&A)
 
 Q 自衛隊の海外派遣には、アジア諸国から「日本の軍事大国化につながる」という懸念が強いようだね。
 A 例えば、シンガポールのリー・クアンユー前首相は、日本が国連平和維持活動(PKO)に軍事的なかかわりを持つことに、「アルコール中毒患者にウイスキー入りのチョコレートをあたえるようなもの」と手厳しい。掃海艇派遣についても、中国共産党の江沢民総書記は、訪中した中曽根元首相に「歴史上のいろいろなことが、中国、アジアの人々の記憶に残っている」と注意を促している。
 Q まずいね。
 A うん。海部首相も気にしたんだろう、掃海艇派遣決定の直後に東南アジア諸国連合(ASEAN)5カ国を歴訪し、第2次世界大戦での反省を述べながら、理解を求めた。でも、掃海艇の寄港を認めたフィリピンのアキノ大統領も、今後、自衛隊を海外に出す場合は改めて相談するよう、海部さんにクギを刺した。
 Q 去年の秋、政府・自民党は国連憲章にもとづく国連軍にも自衛隊を出せると言っていたね。
 A 国連軍は、PKOと違い、侵略国に武力攻撃を加えて制圧するのが目的の軍隊だ。これまで純粋な形で結成されたことは一度もない。去年10月15日、海部首相は記者団にこう言った。「集団安全保障と集団的自衛権は違う」とね。これまで歴代政府は、憲法が「集団的自衛権」の行使を許していないという立場から、国連軍には参加できないと説明してきた。ところが、国連軍は、実は「集団的自衛権」でなくて「集団安保」という別の理念に基づくものです、といっているわけなんだ。
 Q ややこしいね。その2つはどう違うの。
 A 当時、外務省が作った国会審議の虎(とら)の巻によると、「集団安全保障」とは、国連加盟国が「国際社会全体として」侵略行為に立ち向かう考え方だという。一方、「集団的自衛権」の方は、国連とは関係ない。攻撃を受けた国と同盟関係にある国々が「個別の判断で対処する」という考え方だ。だから、国連軍の軍事行動に自衛隊が協力するのは、国際平和を希求する憲法の理念にも合致すると、海部さんの発言は読める。
 Q ところが、政府部内の見解は不統一だったね。
 A そう。工藤内閣法制局長官は10月19日の衆院予算委員会で、国連軍への参加には「憲法上問題が残る」と答弁した。
 Q 国連軍参加は無理だね。
 A しかし、国連平和協力法案の審議で、政府は国連軍への「参加」と「協力」を分ける見解を、初めて持ち出した。参加とは「国連軍の司令官の指揮下に入り、その一員として行動する」こと。協力は「国連軍の組織の外にあって行う参加に至らない各種の支援も含む」とし、武力行使と一体にならないような協力は憲法上許される、とも言ってるんだ。でも武力行使と一体にならない明確な基準は示していない。
 Q そうすると、国連軍参加問題は、まだくすぶり続けるのか。
 A 自衛隊を海外に出すについては、法律だけでなく、憲法そのものの読み方を広げていこうという動きも自民党内にはある。小沢一郎前幹事長が会長になって発足した「国際社会における日本の役割に関する特別調査会」は、国連軍への参加も含めて、憲法と自衛隊の関係をじっくり再検討しようとしているよ。
 Q そうなると、PKO組織への自衛隊参加問題は、いつごろ、どんな形で決着しそうかね。
 A 衆院派遣のPKO調査班が、19日に帰国し、野党側の理解が深まったと政府は評価しているようだ。幹事長・書記長レベルの調査団が7月7日に出発するが、首相周辺はこれに間に合うように中間報告をまとめ、各党に協議してもらいたい意向だ。
 だけど、政府部内にさえ、食い違いがあるからね。首相周辺などは、国連平和協力法案の失敗もあって、「今度こそ」の意気込みだが、防衛庁は世論をにらみながら、「あわてる必要はない」というスタンス。臨時国会への法案提出を目指しているけど、政治改革の動向や、政局とも絡んで、複雑な展開になりそうだ。
 Q しばらく目を離せないね。
(政治部・根本清樹)
 
 
 
 
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