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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/03/06 朝日新聞朝刊
日本型の平和維持組織を作れ(社説)
 
 中東湾岸の戦火がひとまず収まったことに伴って、わが国の国際貢献策をめぐる論議が再び国会で活発になってきた。こんどこそ、非軍事の原則のもと、人員の派遣を含めた国際貢献を整然と実行しなければならない。
 なによりも戒めるべきは、臨時措置だ応急措置だといって政府・自民党が基本原則を軽視した案を持ち出すことだ。ここでまた与野党がドロ沼の論争に足をとられ何事も実行できなかったら、わが国の立場はみっともないものになるだろう。
 政府と自民党の協議のなかで党側の有力者の1人から「戦後の停戦監視などにあたる国連の平和維持活動(PKO)に自衛隊を参加させるべきだ」との意見が出たという。さらに防衛庁幹部も、自衛隊がPKOに参加することに積極姿勢を示している、と伝えられる。
○自公民合意を土台に
 自衛隊の海外派遣には批判が多いにもかかわらず、また派遣要請がどこからも来ていないにもかかわらず、なにがなんでも自衛隊を、という考え方はもう捨てた方がよい。関係国の意向や実態の掌握も不十分のまま「まず自衛隊機を」との論議ばかりが先行し、結局、難民輸送ができなかったことへの反省が、ここには見られない。
 自民党は、国連平和協力法案の廃案の際に、公明、民社両党との間で「自衛隊とは別に国連の平和維持活動に協力する組織をつくる」ことで合意し、覚書までかわしている。ここで再び自衛隊を持ち出すことは、3党合意に反する。
 われわれも、自衛隊とは別個の組織を作るべきだと提唱してきた。既存の自衛隊を海外派遣することは憲法の精神から疑問があるだけではなく、実際にプラスよりもマイナスが大きいと判断したからだ。
 なるほど、自衛隊は平和維持活動に必要な軍事知識を持ち、紛争後の地域で最も動きやすい利点を持つ。「すぐに使える」「新組織をつくるよりも安上がり」という理由で海外派遣に賛成する向きもあるだろう。だが、この問題は目先のことだけで判断するには、あまりに重大である。
 第1は国内的事情だ。たしかに自衛隊違憲論は、後退しつつある。しかし自衛隊を積極的に肯定するにしても、さまざまな世論調査で明らかなように、多くの人びとは国土防衛隊的存在として容認している。
 せっかくコンセンサスが得られようとしているとき、任務を海外に広げ、自衛隊の性格まで一変させようとするのは、防衛政策の上からいっても得策ではない。
 第2は国際的事情だ。自衛隊がいつでも海外にとび出していける態勢を整えることに対しては、近隣諸国のみならず米国内にすら不安の声がある。国際貢献という場合広い視野を欠いては、意味がない。
 平和維持協力組織は、国によって差がある。憲法や外交方針が異なるのだから、違いがあって当然だろう。われわれがめざすべきは、自衛隊と切り離された、いわば日本型の国連待機団だ。
 停戦監視や平和維持活動に、一応の軍事知識を欠かせないのは確かだ。「別個の組織」を支持する人びとのなかに「自衛隊からの一時的な出向は認めるべきだ」との意見があるのも、このためとみられる。しかし、いまの状況で出向制度をとりいれたら、新組織の主力も自衛隊員となり、文字通り第2自衛隊となって、かえって海外の不信を増幅するだろう。
○活動の舞台は広い
 当面は、軍事知識の伝授のため少数の退役自衛官を起用するのはやむをえないかもしれない。しかしもっと重要なことは、日本に期待される活動範囲はきわめて広いということだ。医療、食料供給、土木作業など日本型組織ができれば、その真価はいくらでも発揮できるはずだ。
 新組織の要員には最小限の語学力はじめ各分野での専門知識が要求される。そうした要員の養成のため、国連の意向も勘案しながら、常設のトレーニング・センターを設置することも必要だろう。だれもが誇りに思う組織をつくるため、ただちに行動を始めなければならない。
 自民党は、この問題で来週から公明、民社両党との協議にはいる予定だという。社会党など他の野党も、国際貢献にいまや積極的な姿勢をとっている。特別委員会など設けて、全党で集中的に論議ができるはずだ。自衛隊の参加に固執するのではなく、合意したところから実行に移していく積極姿勢を政府に求めたい。
 
 
 
 
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