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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/01/31 朝日新聞朝刊
特例政令 自衛隊機派遣へ二転、三転(湾岸戦争と日本:14)
「逆転参院」、法改正は難しく
 「避難民の輸送というのは、あくまでも避難民の輸送でございまして、政令できちんと限定いたしましたので、ご理解願います」
 30日の参院本会議で、海部俊樹首相は強調した。だが、自衛隊機の海外派遣を「法改正」で国会に諮ることをせず、特例政令で実現させるやり方に野党の厳しい反発が続く。
 自衛隊は防衛出動が本来の任務である。だが、自衛隊法の100条以降で、「土木工事等の受託」「教育訓練の受託」「運動競技会に対する協力」「南極地域観測に対する協力」「国賓等の輸送」の5つの仕事もできることを定めている。
 湾岸開戦と前後して、自民党の小沢一郎幹事長ら3役は、避難民移送のために自衛隊機を使うことを提唱、その法的根拠を現行法の中にみつけることを基本方針とした。自衛隊法改正案を持ち出せば、野党優位の参院では否決されかねないからだ。
○「土木工事」に着目
 政府・自民党がまず、着目したのは、100条の「土木工事等の受託」。その施行令に、「輸送業務」があり、ここに避難民移送を読み込もうとの発想だった。ただし、この項目は出動の前提として「自衛隊の訓練の目的に適合する」必要がある。17日の安全保障会議で、工藤敦夫内閣法制局長官は「海外での輸送事業がどのような訓練の役に立つのか」という難点を指摘した。
 翌18日、自民党政務調査会湾岸関係部会の合同会議で、弁護士出身の星野行男代議士が発言を求めた。
 「100条より、国賓等の輸送を定めた100条の5を適用した方が、法解釈上、無理がないのではないか。避難民の移送も、国賓の移送も、外交的配慮に基づくものだ」
 だが、防衛庁の日吉章官房長は「100条を適用、外務大臣の委託により輸送協力を行うことが可能だと思う」と答えた。会議のあとも釈然としない表情の星野氏に、今度は畠山蕃防衛局長が「100条の5を使うといっても、国賓と避難民とでは余りに違いますから」と説明した。この時点、政府の大勢は100条の拡大解釈による派遣に傾いていた。
○法制局長官と密会
 だが、内閣法制局は、なお難色を示し続ける。「訓練」を名目に自衛隊の任務の範囲が際限なく広がる恐れがある。何よりも自衛隊の海外派遣を「自衛隊法に任務規定がないので、できない」としてきた歴代法制局長官の国会答弁との食い違いがつらい。19日の土曜日、法制局の検討作業が続く。海部首相が工藤長官とひそかに会ったのはこのころだ。
 首相 何とかならないか。
 長官 そこまで総理が言われるなら致し方ありません。やってみましょう。
 そこで知恵を絞ったのが、100条の5に基づく自衛隊法施行令126の16を改正し、天皇や国賓などに加え、避難民を移送対象とする項目を付け加える案。これで「任務規定がないので」との答弁と何とかつじつまが合う。
 そして、もう一波乱――。防衛庁は、将来的には船舶や防衛医官を海外に派遣する事態も想定、やはり100条の方が幅広い応用がきくとして100条の5の施行令改正に「待った」をかけた。防衛庁幹部が小沢幹事長を訪ねて「手を縛るようなことはしないでほしい」と要請すると、小沢氏は「僕はどっちでもこだわらないよ」と答えた。
 二転三転、結局、この施行令改正案も「恒久的措置となる」(法制局幹部)との理由で見送られ、24日の政府・自民党首脳協議で、期間、対象を今回の湾岸戦争に限定、避難民移送任務を定めた特例政令の新設で決着、25日の閣議で決定した。
○「弁解」に失望の声
 だが、その同じ日の午後、首相は、「自衛隊法を変えるのが筋だと思うけれども」と、論議の根底を覆すような発言をする。「最高権力者は最終責任者のはず。なんで、そんな弁解を」(竹下派幹部)と失望の声が出た。
 折しも、ヨルダン政府が自衛隊機の受け入れを、まだ認めているわけではないことが伝えられる。が、「湾岸危機に伴う避難民の輸送に関する暫定措置に関する政令」と命名された特例政令は29日、予定通り、施行された。
 
 
 
 
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