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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1990/09/28 朝日新聞朝刊
納得できない自衛隊の参加(社説)
 
 海部首相は新しく設けようとする国連平和協力隊について「憲法に抵触しない」「非軍事面での協力に限る」「武力による威嚇や行使はしない」などの原則を表明した。
 憲法の精神と戦後の平和国家の歩みに沿うものをめざすとはしているものの、政府がいま考えている自衛隊の参加の方針が首相が挙げたこれらの原則から逸脱しないかどうか、大きな問題が残されている。
 当初、海部首相は法案に自衛隊という字句を入れるのを避けようとしたが、自民党側との調整で「組織としての参加」になった。首相は重大な選択に踏み切ったといえよう。
 国連の旗のもと、日本がさまざまな平和維持活動に尽力するのはもちろんのことだ。「平和協力隊」もその1つの具体例として、積極的に検討すべき構想である。
 しかし、平和維持活動への協力といっても、それぞれの国の事情によって当然、違いが出てくる。わが国の場合、自ら発動した戦争でアジア諸国に惨禍をもたらした歴史を忘れてはならない。戦争放棄の憲法を持ち、自衛隊に対する国民のコンセンサスも十分とはいえぬ日本は、軍事力による平和維持活動にはよほど神経を使わねばなるまい。
 その視点からすれば、今回の海部首相の選択には納得のいかないところがある。
 第1は、自衛隊の「組織」参加を認めた点だ。自衛隊の組織という以上、それは指揮命令系統にもとづく「人」と、それとセットになった「装備」から成る。従って、自衛隊が組織で参加するということは、たとえ平和協力隊の傘下にあるとしても、自衛隊の海外派遣につながる。
 海部首相は「自衛隊の海外派遣は考えていない」と繰り返してきた。歴代の自民党政府は「海外派遣には自衛隊法の改正が必要」と表明してきた。その主張を貫くなら、自衛隊法の改正なしに自衛隊の事実上の海外派遣をめざす今回の選択は矛盾している。
 首相は27日の記者会見で南極観測の例を挙げ、自衛隊海外派遣がすでに行われていると説明した。だが、自衛隊法で明示されているこのようなケースと新しい派遣問題を混同するのは拡大解釈の疑いがある。
 第2は、平和協力隊の任務として「国連決議に基づき、またはその実効性を確保するために行われる国際平和、安全維持のためにとられる措置への協力を目的とする活動」があげられている点だ。
 日本が国連決議を尊重し、原則としてこれに従うのは自明のことである。しかし、決議さえあれば無条件で平和協力隊派遣というのではなく、あくまで日本政府が主体性を持って決断すべき事柄だろう。
 提示された平和協力法の素案には、確かに「武力による威嚇や武力の行使にあたる行為は行わない」とあり、協力隊の行動に歯止めをかけている。これによって、戦闘機や戦闘目的の艦艇の派遣は不可能になったが、輸送などの目的で自衛隊機や補給艦を派遣することは認められようとしている。
 それでは、それらの自衛隊機や補給艦が身の危険を主張し、完全武装の戦闘機や戦闘目的の艦艇の護衛を求めてきたらどうするか。状況が変わって攻撃を受けた場合、それこそなしくずし的に本格的派兵につながる可能性も否定できまい。
 自衛隊が組織として海外派遣されることになれば、日本の戦後の安全保障政策は一大転機を迎える。自衛隊の転換点でもあり、隊員の気持ちも複雑だろう。国会はこの構想がはらむ数々の問題点を直視し、十分な論議を尽くした上で結論を出すべきである。
 
 
 
 
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