防衛庁は24日の庁議で、1991年度(平成3年度)予算の概算要求を正式決定した。総額は概算要求基準(シーリング)いっぱいの4兆4023億円、90年度当初予算に比べると5.8%増となっている。91年度は次期防衛力整備計画(次期防)の初年度にあたるが、次期防が政府決定していないことから、政策判断を要する大型の新規正面装備はすべて見送っている。また、隊舎の基準を改善して整備に力をいれるなど、後方部門を重点的に要求しているのが特徴だ。
一方、イラクのクウェート侵攻・併合に対する政府の中東支援策に関連して、米国が日本に求めている在日米軍駐留経費負担増では、米側への提供施設整備について事業費ベースで16.5%伸ばし1170億円にする配慮を示している。防衛庁は次期防で新規の正面装備については、陸上自衛隊が敵侵攻の早期撃破のために持つ多連装ロケットシステム(MLRS)の導入のほか、米国政府との調整次第では空中警戒管制機(AWACS)の導入を検討していた。しかし、事実上の仮想敵としていたソ連が米国との政治協調をはっきり示すなど情勢の変化が大きく、海部首相も基本的には新規装備の導入に慎重姿勢を示していることから、次期防が決定されていない段階での要求は見送り、来年度については「現行の中期防衛力整備計画の延長線」との方針にした。
正面装備の要求額は1兆865億円。これまで導入した装備の後年度負担に対するつけ払いが増えているため、90年度当初予算比で13.5%増えている。正面装備では兵器の減耗に対する補充と、すでに導入している分の継続的調達がほとんどとなっている。
後方部門は、1兆6064億円を要求。隊舎を改修、新設して個室化をはかるために、事業費ベースで380億円を計上している。官舎についても充足率を現在の90%から1.3ポイントあげるために事業費ベースで350億円を求めている。
自衛官の定員について、隊員確保が厳しい状況が長期的に続くことや、参院の与野党勢力の逆転で定員増を求める防衛2法の改正が難しいことから、1954年に自衛隊を設置以来、初めて定員増要求を見送った。
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