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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1989/10/20 朝日新聞朝刊
軽率すぎる海外派遣論議(社説)
 
 自衛隊の海外派遣をめぐる海部首相の国会答弁が、国の内外に波紋を広げている。
 首相は今月5日の衆院本会議で、永末民社党委員長の質問に次のように答えた。
 「(自衛隊の海外派遣については)国際協力の推進、邦人保護の充実、平和への貢献といった観点から、広く国民一般、国会の議論を踏まえ、今後、検討させていただく」
 海部首相らしい慎重な言いまわしだが、にもかかわらず、韓国の主要各新聞が直ちに反発した。首相答弁の中の「(在外)邦人保護」とか「平和」への貢献といった文言に、「軍事大国復帰への信号弾」の兆しを感じとったものらしい。
 アジアだけではない。米紙ニューヨーク・タイムズの記者も海部答弁に注目し「日本で海外派兵を論じることは、もはやタブーでなくなった」と報じた。
 海部答弁の真意がどこにあったか、今なお明白でない。本心は消極的なのだが、野党党首の質問に礼を失せぬよう「検討」を約束した程度のことかもしれない。
 しかし、マスコミの敏感な反応が示すように、自衛隊の海外派遣に対する海外の目は依然として厳しい。「邦人保護」などと言いだされると、かつてそれを名目に乗りこんできた旧日本軍の悪夢がよみがえり、強い反発になってしまうのだろう。海部答弁には歴史への配慮が欠けていたのではないか。
 影響は国内にも及んでいる。この答弁で勢いを得た政府・自民党の一部に、海上自衛隊の護衛艦を海外へ派遣しよう、との声がふたたび高まってきたのだ。
 当面の問題は、92年から始まるプルトニウムの外国からの輸送にあたって、その護衛を海上保安庁がやるか海上自衛隊がやるか、である。政府は海上保安庁の巡視船をあてる方針だが、内部ではいまなお不満がくすぶっている。
 その言い分は、万一のとき護衛艦のほうが巡視船より頼りになるとか、仮に強固な巡視船を造るとなると二重投資になって無駄だ、といったものである。
 一応もっともな主張だが、ここには、自衛隊は他国の軍隊とは違う、という視点が欠けている。
 自衛隊発足の直前の1954年6月2日、参院本会議は次のような決議をした。
 「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈(しれつ)なる平和愛好精神に照らし、海外出動は、これを行わないことを・・・確認する」
 当時の防衛庁長官は、これを受けて、自衛隊に海外派遣という目的はない、との「政府の所信」を述べている。
 しかし、のどもと過ぎればの例えどおり、のちに政府は「いわゆる海外派兵」と「いわゆる海外派遣」に分け、後者はかまわないのだというようになった。
 あるものは使えとばかり、自衛隊の装備を活用すれば、たしかに当面は費用の点で得をしたようにみえるかもしれない。だが、それによって自衛隊の本質がゆがめられたり、他国に不安をあたえるようなことがあれば、マイナスのほうが大きい。
 プルトニウムの安全輸送はもちろん最優先課題だが、その場合、直ちに自衛隊活用と短絡することなく、憲法9条を常に頭において結論にいたるのが本筋であろう。
 政府専用機も防衛庁所管になるとの推測がある。あれもこれもと、自衛隊が手を広げていくことが正しい道かどうか。政府、国会は創設の原点に戻って、自衛隊のあるべき姿を論議すべきである。
 
 
 
 
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