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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1988/11/26 朝日新聞朝刊
日米防衛協力の限界(社説)
 
 わが国の自衛官の最上位にある石井統合幕僚会議議長が、新しい日米共同作戦計画の研究に着手することを明らかにした。
 具体的には、日本が他の地域と同時に侵攻された場合、自衛隊と米軍はこれにどう対処すべきか、という研究である。
 他とは関係なく、日本だけが突然、侵攻される事態を想定した日米共同作戦計画の研究は、一応終わっている。日本の枠を超えた、いわゆる極東有事の際の対処については、今も日米間で研究中だ。
 「日米防衛協力のための指針」にもとづくこの種の研究は、わが国の憲法が禁じている集団自衛権の行使への道につながりかねない。また研究が事実上、自衛隊・米軍の「制服組」にそっくりゆだねられており、シビリアンコントロール(文民統制)の原則から考えて疑問が残るとか、研究の内容が国会ですら明らかにされておらず、議会軽視のそしりを免れないとかの問題点もある。このため、われわれは前から研究の実施に危惧(きぐ)の念を表明してきた。
 新しく追加される「研究」は、これらの指摘にこたえていない。その上、有事の範囲が地球的規模に拡大される結果、従来の共同作戦計画研究とは質的に違う意味あいを持つ可能性が出てきた。日米防衛協力態勢は、また一歩、危険な領域に踏みこむことになった、と言ってよいだろう。
 もともと米国の専門家の多くは、日本が単独で侵攻されるというシナリオを信用していなかった。侵攻されるとすれば、欧州や中東で紛争が激化し、その結果、日本に飛び火するケースがほとんどと見ていた。米国の世界戦略には、その線が色濃く残っている。
 それだけに今回、米国が同時多発侵攻時の「研究」を日本に持ちかけたのは、米国としては当然の論理的帰結といえる。一方、わが国からすれば、研究参加は米国の世界戦略の一環に乗ることを意味する。
 これほど大事なことが、国会はもちろん、政府部内ですら十分に論議されず、制服組のトップの言明だけで着手されていいものか。われわれは、次の諸点に疑問を持つ。
 1、「研究」の結果、自衛隊が米国の世界戦略に組みこまれ、自衛隊本来の任務からますます逸脱する恐れはないか。
 1、中距離核戦力(INF)全廃条約の調印以来、米ソ関係はやや改善され、欧州、中東の緊張も緩和の方向にある。そういう時になぜ「同時多発」の研究なのか。
 1、欧州や中東有事の際には、ソ連の軍事力を分散させるため、極東で「第2戦線」を開くという戦略が米国にあった。こんどの研究と第2戦線論は本当に無関係か。
 1、「長期的安全保障より短期的安全保障に関心を持つ軍部」(ポール・ケネディ)だけに重要な研究をまかせてよいか。
 こういう問題について、国会は責任を持った論議をくりひろげる義務がある。
 新しく始まる「研究」は、同時多発侵攻の結果、わが国に対する米軍支援が減少することを前提にしている。その延長線には「だから日本は防衛力をさらに増強せよ」という結論が見え隠れしている。
 米国のブッシュ新政権の主要閣僚にうわさされている要人の中から、早くも日本の役割分担強化の声が出ている。同時多発侵攻の研究が、そうした米国の一部の強硬論に利用されるようなことがあってはならない。
 米ソの軍事力削減は大いに結構である。しかし、それが両陣営の各同盟・友好国によって肩代わりされたのでは、真の意味の平和にはつながらない。
 
 
 
 
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