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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1988/01/11 朝日新聞朝刊
FSX日米共同開発の内情 総額1兆円分担争い(経済スコープ)
“軍事費大国”めぐり、防衛産業の思惑交錯
 日米経済摩擦では、必ずといっていいほど顔を出す米上院のダンフォース議員が、航空自衛隊の次期支援戦闘機(FSX)の日米共同開発(米ゼネラル・ダイナミクス社=GD社=のF16を改造)に注文をつけた。「日本側による改造が大幅になれば、共同生産の目的と精神に反する」と、バード民主党院内総務と連名でカルーチ国防長官に手紙を送ったのだ。昨年暮れのことである。
 三菱重工業のFSX開発責任者柴田知治プロジェクト・マネジャーは、このニュースが不快だった。「日本主導の共同開発に決まるまでは政治の次元の話だったが、もう実務レベルに話は移ったはずなのに・・・」
○米国の意図
 「日本の予算で開発する戦闘機なのだから、日本の生産シェアが90%、米国は10%くらいであってほしい」と三菱重工名古屋航空機製作所の河野通陽所長。しかし、12月16日から3日間、同製作所を訪れたGD社のFSX開発責任者リー博士らは、「予想以上に多く、生産を分担したい意向だった」という。
 日米間では早くも食い違いが表面化しているのだ。経済団体連合会防衛生産委員会の森川汎士事務局長は「共同開発といえば聞こえはいいが、一皮めくれば日米防衛産業の思惑がドロドロと渦巻いている」とさえ話す。
 「F16のどこをどう改造、開発し、日米の生産分担割合をどうするかは、政府間の事務レベル協議で話し合いを始めたところ。政府の新年度予算案が成立後に交換公文で取り決める」と防衛庁の山本雅司装備局長は説明する。
 「改造」でも食い違いが予想される。たとえば主翼面積の増大。防衛庁の独自の改造案によると、主翼は面積を大きくして、急旋回できるよう性能を高めるとともに、揚力も大きくする。
 一方、GD社は、F16を採用、生産しているベルギーなど欧州4カ国に対し昨年夏、F16の発達型とされる「アジャイル・ファルコン」機の共同開発を提案している。主翼を大きくするねらいはFSXと同じだが、開発思想が違うと、仕様は大きく変わる。「日本の案が、アジャイル・ファルコン機と相違する恐れは十分にある」(山田隆昭三菱重工常務)のだ。
 F16は今後、各国から約1000機の調達が予想され、GD社はその多くをアジャイル・ファルコン型にしたい意向といわれる。「そんな事情をかかえた米国防総省とGD社が、百数十機程度の量産計画しかない日本だけのFSX仕様に、簡単に同意するだろうか」という観測も出ている。
 FSXの有力な改造候補とされ、敗退したF18戦闘機のメーカー、米マクドネル・ダグラス(MD)社の輸入総代理店、日商岩井の土屋武彦常務は、もっとはっきりいう。「米国はFSXを通してF16の改良を進める腹だろう。開発費は日本の負担だし、FSXに盛り込まれる日本の先端技術も『対米武器技術供与』の枠組みで手に入れることができる。これがF16に決まった1つの要因ではないか」
○国内の商戦
 分担争いは、日米間の問題だけではない。日本の参加メーカーにとっては、どの分野をどれだけ多く担当できるかが、仕事量の増減につながる重大な関心事。総額で約1兆円とされるFSX開発、生産は、日本の航空機産業にとって90年代で最大のビッグビジネスだからだ。
 昨年できたFSX民間合同研究会には、三菱重工業、川崎重工業、富士重工業の機体メーカー3社のほか、エンジンをライセンス生産する石川島播磨重工業、電子機器をまとめる三菱電機が加わった。機体全体を統合する主契約社には、これまでの実績から三菱重工が選ばれる公算が大きいだけに、川崎重工、富士重工にとってはどの程度、生産を分担できるか、気が気でない。
 今年度から量産が始まった国産中等ジェット練習機T4(1機24億円)の場合、生産シェアは主契約社の川崎重工が4割、中部胴体を製作する三菱重工が3割、主翼、後部胴体を担当する富士重工が3割だった。だが、FSXにはまず、「GD社からの輸入シェアがいくらになるかで、うちの生産シェアも大きく変わってくる」(園田寛治川崎重工常務)という問題がある。
 富士重工は、先端技術の複合材による主翼の受注に的を絞っている。釣りざおやテニスラケットにも使われている炭素繊維素材に、エポキシ樹脂を塗って150層も重ね合わせ、厚さ2センチに仕上げる一体成形の技術は、11月に訪れたGD社の技術陣をうならせたほど。
 自ら約10億円も投入して主翼のすべてを試作し、防衛庁に披露した。本多靖正常務は「三菱さんを上回るものが出来たと思う。一体成形の複合材を使った主翼をもつ戦闘機は世界にまだないが、当社は主翼をすべてお引き受けできる」と自信たっぷりだ。複合材主翼は機体単価の約20%、エンジン並みの約10億円もする。同社が意気込むのも無理はない。
 量産メーカーには、FSXの生産機数が何機になるのかも関心事。今は約130機といわれているが、実戦配備が1997年、中期防衛力整備計画(1986―90年度)以降のことだから、まだ明らかにされていない。そこで、メーカー側からは「開発コストからいって200機はやらせてほしい」(本多富士重工常務)という声や、「防衛庁の制服組は、170機は調達したいと考えているのではないか」(商社筋)といった情報がしきりに流されている。
 エンジン生産を担当する石川島播磨重工は、F16改造になって最も打撃を受けた。国産FSXに想定されていた双発エンジンが、単発に変わってしまったからだ。「90年代の工場の操業度維持にFSXのエンジン生産は欠かせない。単発になった以上、機数を増やしてもらわねば・・・」(大慈弥省三航空宇宙事業本部副本部長)
 戦闘機商戦といえば、これまで主役はメーカーよりも、輸入代理店の商社だった。共同開発の今回は、輸入部分が相対的に少なくなるので、商社の意気はもう一つ。だが、もちろん色気はある。GD社の代理店、三菱商事の相原宏徳宇宙航空機部長は「日本へのGD機導入は初めて。将来への布石だ」と話す。
 三菱重工の航空・宇宙部門の本丸、名古屋航空機製作所(名航)は、同社で唯一、人員が増強されている部門だ。10年前に比べ、長崎造船所は6000人も減って8000人に縮小したのに、名航は500人増えて6500人になった。
 FSXの量産が始まる前年の1993年には、名航の現在の主力であるF15戦闘機(1機約82億円)のライセンス生産が終わる見込みだ。引き続きFSXの量産が始まらなければ、生産ラインに大きな穴があく。だが、それ以上に名航技術陣が懸念するのは、FSXで日本主導の設計が難しくなった場合、戦闘機設計の技術が途絶えかねないことだ。名航が高等練習機T2と支援戦闘機F1を自主開発したのは20年近く前。70年代以降に入社した若手技術者は自前の戦闘機を手がけたことがまだ、ない。
○消えない夢
 だから、名航は、FSXが共同開発となった今でも、純国産機開発の夢を捨ててはいない。FSXがだめなら「FSX用の超音速高等練習機を開発したい」というのだ。F1の練習機は、今年度で量産の終わるT2だった。F1の後継機がFSXなら、T2の後継機も必要ではないか、という論理だ。三菱重工本社も、11月まで名航でFSX開発責任者をしていた増田逸郎マネジャーを本社技師長にすえ、中期防後の将来機の開発準備に当たらせる態勢を取っている。
 日本はすでに米ソ、中国に次ぐ防衛費を支出する「軍事費大国」であると、佐々木毅東大教授は指摘する。純国産機はお預けになったとはいえ、高性能のFSXは、実は支援戦闘機にとどまらず、主力戦闘機の役割をも演じる可能性を秘める。調達機数は百数十機どころか、200機をはるかに超えるとの観測もある。FSXがこの先、どんな道をたどるのか。関係企業だけの関心事ではありえない。
 (進藤隆夫記者)
<FSX>
 主力戦闘機が敵機を迎え撃つ防空を任務としているのに対し、支援戦闘機は対地、対艦攻撃が主な任務。FSXは自主開発された現有F1の後継機。
 昨年10月、米GD社のF16を改造し、日米で共同開発することに決まった。来年度から設計に着手し、93年夏に試作機が初飛行。94年度から量産が開始され、97年度から実戦部隊に配備される計画。
 開発費は1650億円、量産単価は51億5000万円。新年度の政府予算案では初の共同開発設計費として107億円(うち85億円は89年度負担分)が計上された。
 
 
 
 
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